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日々是盲日9 |
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夏休みに入ったんで、東京遊びに来た。 北斗杯で、まあツレなった進藤ん家に泊めて貰うつもりやったけど 塔矢先生と塔矢のかーちゃんが留守っちゅうことで、また塔矢の家に 進藤と二人、世話なることになった。 合宿を思い出す。 でも、あん時みたいに強い目的あるわけちゃうし、のんびりしたもんや。 進藤は 「そっかー夏休みかー懐かしいな。」 って、こないだまで自分も学生やったくせに爺むさいこと言うとったけど 暇やからて観光に付きおうてくれるらしい。 塔矢は手合いがあって、それどころちゃうって話やけど。 学業とプロの両立はやっぱり難しい。 あんまり手合い入れすぎると留年してまうから、 なかなか昇段も出来へんと思う。 塔矢を見とると焦る気持ちは募る。 それでも、今は碁の事は忘れてガキ3人、修学旅行みたいなワイワイした 楽しい夕食時間やった。 夜中に事件は起こった。 塔矢の家は庭が広いせいか、クーラーつけんでも網戸越しに ひんやりとした風が通って、夜は割と涼しい。 そんでトイレ行きとなって目ぇ覚ますと隣の布団に寝とった進藤がおらん。 ああ、進藤もか?と思うて待ったけど帰ってこおへん。 なんや? 取りあえず起きてトイレ行ったけど、進藤は入ってへんかった。 首を傾げながら廊下を歩いとるとどこからか 啜り泣き・・・? 夏の宵。 時刻は丑三つ時。 古い日本家屋。 ぞくっ・・・とせん方がどうかしとると思わへんか? こういう時の対応は人それぞれやと思うけど、オレは怖いからこそ 正体を突き止めんとおれんタイプや。 幽霊の正体見たり、っていうし、世の中訳ワカランことほど怖いもんはない。 後で思うとこの判断は間違いやったんやけどな。 そろりそろりと声の方に進むと。 納戸の扉の隙間からから一条の光・・・。 古い木の黒い扉が恐怖心を煽る。 そやけどよう聞いたら。 「・・・・・・っく・・・」 「声・・・出すなよ。」 「・・・っう、う」 「社が、来るぜ。」 オレの名前?ちゅうか、な、進藤?女でも連れ込んどるんか? いや、そんなわけないな。話相手は塔矢か。 他の奴も起きとるっちゅうのと、超常現象やなかったんが分かったんで 恐怖が消えて一気に緊張が解けた。 ガラッ! 「おい、何やっと・・・!」 「ホラ来た。」 ・・・・・! まるで、待っとったような。 最初に目に飛び込んできたんは、こっちを振り向いとる進藤の笑顔やった。 板間の上で。 狭い空間、棚には段ボールとか木箱が並んどって、奥には沢山の布団が 畳んで積んであるんが見える。 正面の壁には上の方に小さめの窓。 荷物無かったら独房みたいな殺風景な部屋の裸電球の下、 小さな悪戯が見つかったガキみたいに屈託のない笑顔。 剥き出しの背中、薄いタオルケットに隠された下半身。 そんでその下で同じく剥き出しの上半身を組み敷かれとるんは、 進藤の腕に顔は隠れとるけど、床に広がった黒髪の持ち主は。 確かにアノ時の声に似とるとは思たけど、進藤と塔矢やて分かった時点で その可能性は自分の中で消えとった。 いや、消えとったはずやったんや・・・・・。 「じ、自分ら・・・・。」 「よお。お前も、来いよ。」 「はぁ?!」 回転を止めた頭。 こめかみを伝う汗。 狭なった視界の中、進藤がスローモーションで身を起こす。 ぱさりと落ちかけたタオルケットを素早く掴んで無造作に塔矢に掛ける。 立ち上がったその姿はやっぱり全裸で、 隠しもせんそこはギンギンに張りつめとって。 見とうもないのに目が離せへん。 これで 二人してオレをからかっとるんちゃうかという最後の望みの綱も断たれた。 「社・・・・。」 ゆっくり近づいて来る。・・・笑いながら。 オレもゆっくりと後ずさって納戸の外に出る。 進藤の後ろで塔矢がタオルケット被って丸まるんが見えた。 と、オレの視線が外れたその瞬間 カメレオンの素早さで進藤がオレの腕を掴み、納戸の中へ引きずり込む。 オレが中にまろび入って二、三歩よろけた隙にガタン!扉を閉める。 「逃がさへんで。」 微妙にアクセントのずれた似非関西弁。 「何考えとんや!きもい。そこどけや!」 後ろ手に扉の前に立った進藤に迫る。 頭半分低い進藤の、裸の肩に手ぇ掛ける。 「やったこともないくせに。」 「な、」 「女と、同じだよ。それとも、」 進藤の手がするりとオレのTシャツの下に滑り込み、汗ばんだ手が オレの脇腹を撫で上げる。 「・・・オレの方がいい?」 「やめえ!」 乱暴に手を払いのけた。 コイツ・・・、狂とる。 と同時に女と同じや言われた塔矢が気になって振り返った。 少なくともオレの知る限り、塔矢は女みたいと違う。 どちらかいうたら進藤より男らしい。ほんで強い。 かなわん。 棋力が、っちゅうのも勿論やけど、目的に向かって真っ直ぐ進む 他の全てを犠牲にしても、ってな男らしさにかなわん、と思う訳や。 今のところ、やけどな。 その塔矢が。 怯えた小動物みたいに頭からすっぽりとタオルケット被って丸まっとる・・・。 その下は素っ裸なんや、と思たら、なんでかゴクリ、と喉が鳴った。 つい今しがたまでコイツは進藤に。 いやいや、そんなんやのうて。 でも。 外界を拒否する繭みたいなカタマリは、心なしか震えとるようで、 可哀想みたいや。 ・・・あ。 まともや。 コイツ、まともや。 狂った進藤に当てられて、自分が異世界に来てしもたような心細い 気持になっとったことに気づく。 でも、オレは一人やない。オレが狂っとるわけやない。 ここはまだ、オレの世界や。 「おい、塔矢、大丈夫か。」 タオルケットの肩に手え置いて、ちょっと迷たけど話するために 抱き起こすことにした。 意外と抵抗もなく、座った姿勢になる。 タオルケットの端がするりと剥けて乱れた黒髪が出てきたけど、 俯いたままで目元はよう見えんかった。 オレもどんな顔して見たらええか分からんから、ちょっとホッとする。 そんで怒りがこみ上げる。 「進藤!」 振り向いた頬に突き刺さる指。 は? いつの間にか進藤はオレのすぐそばまで来てしゃがんどって、ピストル型に 突き出した人差し指を跳ね上げ。 「バン。」 ガキ! いや、ガキはこんな事せえへん。こんな、友だちを震えさせるような事。 オレは、誤魔化されへん。 「おま・・・!」 「社クン。塔矢に悩殺された?」 「!」 進藤の手が肩口から、またソロソロとオレのTシャツの前に伸びる。 塔矢の肩を支えとるせいで(ホンマにそのせいか?)さっきみたいに 払いのける事がでけへん。 女の子よりちょっと骨張ってきた指がオレの半パンの上を 這い、 まわ、 「なあ。お前だって思っただろ?」 「・・・・。」 「『いつか塔矢をねじ伏せてやる。』」 「・・・それは、こんな、ことやない。」 「そう?でもさ、」 カラダは正直、ってねえ・・・。 耳の中に吹き込まれる熱い息に、思わず体が捩れる。 と同時に進藤の手が素早く半パンを離れてオレの首に巻き付いた。 二の腕が頭をロックする。 しもた・・・! 慌てて腕掴もとしたけど、完全に極まっとる。進藤が外す気にならんかったら 絶対はずれへんやろ。 ・・・落ちる・・・。 「塔矢。」 進藤の喉の震えが直接頭に響いて少し遠ざかりかけた意識が戻った。 背中に当たった硬いもんが、脈打つのんも妙にはっきり分かる。 うう、気色悪い。 足元で身じろぎする気配。 衣擦れの音。 腰に、ひんやりとした手が掛かる。 まさか。 足ばたばたさして抵抗したけど、半パンとトランクスいっぺんにずらされた。 確かにさっきまで前におったんは塔矢みたいやったけど。 こんなん、塔矢やない。 塔矢アキラともあろうものが。 オレのもん、触っとるはずがない。 オレの首を締めとる腕は、物理的に頭を固めとるだけやのうて、中まで 固めとるみたいや。 「塔矢、口・・・。」 な。 や、め、っ! オレのモノはぬるりとした暖かいもんに包まれた。 同時に首が弛められる。 大量の血が脈打ちながら頸動脈を膨らませ、 湯ぅかけたカップ麺みたいにオレはヒトに戻る。 いや、そんな場合やのうて。 恐る恐る目を開けると、 塔矢が、あの塔矢の頭が、 オレの股間に・・・。 腰の脇に突いた手が宙に浮いたときに、床に手の跡が見えた。 ということは其処にあったホコリは塔矢の指先に付いとるんやろ。 そんな手で、綺麗な髪をすくって耳に掛ける。 そんなお前、 見となかった。 くくく・・・また頭に振動が伝わって、進藤の腕がするりと外れる。 それでも、オレは身じろぎ一つ出来んかった。 認めたないのに。 血が体中から中心に集まって、ゾクゾクするような感覚が押し寄せる。 塔矢の頭が動く度に、情けない声が出そうやった。 進藤はオレの後ろで立ち上がって塔矢の体を回り、 今度は塔矢の後ろに立って足の間に膝を突く。 なんの躊躇いもなく塔矢の尻に勃起したもんを押し当て、腰を掴む。 まさか。 進藤の顔を見ると正面からオレの顔を見とって。 ニヤリと一つ笑うと、ゆるりと腰を進めた。 塔矢が喉の奥でくぐもった悲鳴を上げる。 オレのが口から外れそうになる。 後から思ても、何であんなむごい事が出来たんか・・・。 オレは反射的に塔矢の髪を掴んで自分の股間に押しつけ、固く目をつぶった。 「・・・見て。」 進藤の声。 に目を開けると。 ・・・人間のあんな所にあんなもんが入るもんか。 でも、現実、目の前で出入りしとる。 進藤が出す度に、赤く充血した薄い皮膚が。 腰が打ち付けられる度にそれに呼応して、塔矢の唇が、舌が、 オレに絡みついて震える。 これは、アダルトビデオか、それともオレの妄想か。 見たい。 見たない。 気持ええ、 気持、悪い、 なんちゅう、けったくそ悪い、 なんちゅう、興奮する、 「見て・・・・。」 譫言のように繰り返される進藤の言葉。 「・・・見て。」 快感に眉を顰め、とろけそうな微笑み。 「見て・・・。ねえ、○○・・・・。」 サイレント映画のように声をなくした進藤の口が、 母音「a 」と「i 」を形作る。 朦朧とした意識の中、「ya 」「si 」かと思たけど・・・・・ 続くべき「o 」の形に口を動かす事なく進藤は激しく動き始めた。 −了− |
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