空虚の宴 3 「何、」 ぬるつきを使って、ゆっくりと茎を上下する。 カリ首をあの親指で丹念に撫でられていると、少しづつ血が集まってしまった。 「……」 恥ずかしくは、ない。 このままイかされてしまうとしたら怖いが、前回の自分勝手な行為を思えば きっと大丈夫だろう。 案の定、Lは僕を高めては休み、また擦っては遊び、で 射精には持って行けない。 僕はただ、心を鎮めて気持ち悪さに耐えていた。 だが。 五分経ち、十分経ち…… いつまでも、いつまで経っても終わらない退屈な遊び。 出す事も、萎える事も出来ず、思春期のような苛々とした焦燥だけが 溜まっていく。 一体……何が目的なんだ……。 それにしても下手くそにも程が有る。 その割りに勃起状態だけは維持させられているのが中途半端だ。 と、思っていたが。 だんだん、わざと焦らされているような気がしてきた。 「竜崎。もう止めよう」 「あなたの言う事ではありませんね」 射精直前。 退屈。 苛々。 何となく、デスノートを拾う前のあの頃の気分が蘇るようだった。 僕は十分勃起していて、何かがどんどん溜まっていくけれど、 きっとこのまま一生射精する事なく終わって行くのだろうという予感と 憂鬱。 それを覆し、欲望を心地よくぶちまけさせてくれたのは、 デスノートと……おまえだった。 「竜崎……イかせて、くれないか」 Lは驚いた顔も見せず、ニッと笑った。 「いいですよ?」 そう言って膝で僕の腰を持ち上げ、尻に自分の怒張したペニスを当てる。 いつの間に……と思ったが、今は入れられる事を拒否する気には なれなかった。 「抵抗、しないんですね」 「おまえのlove makingは退屈だからな。痛いほうがマシだ」 Lは、loveという言葉に反応してか、また少し口の端を上げる。 ただの慣用句なのに。 そんな事より、早く、痛みを与えてくれ。 僕は、萎えて。 おまえは自分勝手に果てて。 それから一人になって、ゆっくり眠りたかった。 「そうですか」 Lは気分を害したようでもなく、一旦ペニスを外して 指をぐりぐりと中に捻じ込んで来た。 少し覚悟したが、ワセリンでたっぷり濡らしてあるせいか、二回目だからか、 全く痛くはない。 痛くない……どころか。 少し狼狽えていると、Lがまた僕の性器に触れてきた。 今度は、本気で射精させようとするように、早く。 「や、やめ、」 突然の刺激の思わず声を上げると、尻に丸い物が押し当てられた。 最初はただ触れているだけ。 すぐに、強く、押し込むように。 「……!」 無理だ、そう思うのに、何故か……体が跳ねた。 逃げる為じゃない。 恐ろしい事だが、期待に……腰が、疼く。 感覚を逃がす為に、はぁ、はぁ、と思わず大きな息をしてしまう。 どういう事だ、この僕が、 油断をしたら、持って行かれてしまいそうに…… 「痛……!」 つぷり、と先の部分が通ってしまった。 Lは、前回よりもゆっくりと、めりめりと肉を裂くように入って来る。 だが、右手はスピードを上げて僕の茎を擦り続けている。 痛い……けれど…… 「……ああっ、」 それは、突然だった。 僕は前触れもなく、放っていた。 自分でも驚いて、思わず息を止めてしまう。 ……Lに擦られて、Lのペニスが如何ほどか入った時。 痛みに耐えていたつもりが、突然感電したかのように、 抵抗出来ない性感の波に攫われたのだ。 一体、何だったんだ……。 まるで精通の時のようだ。 長い退屈な愛撫、の間に、自覚がないままに溜まっていたのか……。 ぱたぱたと、肌蹴た胸と腹に散った暖かい液体は、すぐに冷えて 体温を奪っていく。 はあはあと、熱い息を吐き、冷たい空気を吸うと、喉が少し痛んだ。 視界が歪み、鼻の奥が少しツンとする。 泣く。 なんてどの位ぶりだろう。 父が死んだ時以来か。 物心ついた頃の、忙しくて家族と過ごしてくれなかった父への不満、 高校に入り、警察官になりたいと言った僕を見た、 初めて見る眩しそうな眼差し。 父が斃れた時、そんな思い出が渦巻いて涙と感情を溢れさせながら 並行して 『ふざけるな、デスノートにメロの名前を書け!』 『おまえの甘さで僕の計画を狂わせるな!』 心の中で罵ってもいた。 どちらも同時に存在した、僕の本音だ。 「夜神くん。泣いているんですか?」 僕は涙が零れないように目を開いて、鼻から大きく息を吸った。 泣くもんか! 「……生理的な涙というのは、本当だな」 「泣いていないと?」 「ああ」 「そうですか。では本当に、泣いて貰いましょうか」 Lは腰を抱えなおし、更に深く入り込んで来る。 「あっ、や……」 射精直後の体、萎えようとしていたのに敏感な場所を刺激されて 苦しい程に感じた。 というか、僕は、中で……。 痛み、に近い、体の内側から性感をわし掴みにして、 無理矢理痙攣させられる、拷問よりも恐ろしい拷問。 それから、僕は。 Lの硬い棒に貫かれて、何度も何度も苦しみに追い上げられた。 「竜崎……助けてくれ。もう、勘弁してくれ」 僕の物とは思えない、細くはかない声。 自分はきっと肉体的な責め苦には強いだろうと思っていたが。 情けなくても良い、この快楽地獄から解放されたい、 その願いを押し込める事は出来なかった。 「夜神くん、泣いてますね?」 「ああ、泣いてる。泣いてるよ、だから、」 悲しみも悔しさもない。 ただ、体中から汗を、汁を、垂れ流していた。 「どうして、おまえは、イかないんだ、」 前はあんなにあっさりと、自分勝手に自分だけ達って 僕の中に吐き出していたのに。 「どうして……でしょうね。 ただ、今の私は、あなたでは、イけません」 なら、勃たなければ良いのに、いつまでも硬いのだから性質が悪い。 「まあ、今日は、あなたをこうする事が出来たので満足です」 ぐい、と大きく突かれて。 目の前が白くなる。 ホワイトアウト。 とっくに精液を搾り尽くされていた僕は、今日何度目かの 射精を伴わない絶頂を迎え、気を失った。 --了-- ※だんだんLの本領発揮です。
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