シリコン・ラブ2








「え、この家で、か?」

「仕方ないですよ〜、先生がそう仰るんだから。」


雨戸を開けながらこの部屋まで来た緒方さんと芦原さんが、しゃべっている。


「三人とも十代でお金もないだろうから可哀想だって。」

「とは言え、合宿というのは自分たちで言い始めた事なんだろう?」

「そうなんですけどね。日本囲碁界の為に少しでも力になれるならって。
 空いてる家でもありますしね。」

「そう言ってもな・・・。」


ポケットに手を突っ込みながらボクの前まで来た緒方さんは、前髪を掻き上げて
ボクの顔を覗き込んだ。


「ヤりたい盛りのガキが3人も泊まりに来て、アキラに悪戯でもされたら困る。」

「大丈夫でしょう!男だし如何にも、って外見でもないし。」

「ならいいが、最近の子どもは耳年増だぞ。」

「まっさかぁ。」


この家に、男の子が来るのか・・・。
いくつだろう。
そう言えばボクは自分と同じ年くらいの子に出会ったことがない。






一週間後位に、玄関の方で賑やかな気配がしたがこの奥の座敷までは来なかった。
それでも常に家の中に人気がある。
茶の間で笑い声が響く事もあれば、何時間も静かな事もあるが、確かに複数の人間がいた。


彼等の顔が見られたのは翌日。

「そっち行ってええんか?」「いいって。この家貸してくれたんだから。」などと
少し高めの声でワイワイと話しながら誰かが廊下を近づいてくる。

から、と障子が開いて、その向こうにいたのは三人の少年だった。


「!!!」

「うわっ!びびったぁ!」

「誰?」

「いや・・・。」


言いながら、一人が恐る恐る近づいてくる。


「・・・人形やん。」

「え!うそ!」

「ほら。」


不躾にボクの頬をぺしぺしと叩いてきたのは一番背の高い少年。


「何でこんなもんが?」

「ってか良く出来てるなぁ!生々し!生きてるみたいだ。」

「ああ。美人だな。」

「男?女?」


前髪だけ金色の少年が乱暴にボクの胸に触った。


「うわ、進藤やーらしー!」

「ちが、そんなんじゃねえって!」

「今の触り方、あまりにも躊躇いがなかったぞ?まさかオマエ、」

「わーっ!わーっ!何言ってんだよ!」


下らないことを大きな声でわめき立てる。
人間の男の子というものは、うるさくてガサツな物だと思った。


「・・・社?」

「ああ、いや。」

「どうした?」

「ほれ、触ってみぃ。この人形、ゴムで出来とるんや。」


正確にはシリコン・ラバーだけどね。


「ホントだ・・・柔らかくてきしょい〜!」

「そうか?オレは気持ちええけどな。やけど、男なんよな・・・。」


ボクの股の間に手を入れ、ぐっと竿を掴む。


「おい!社!」

「ええやん。人形やし。」


社と呼ばれた少年が、少し背の低い髪がぴんぴんと跳ねた少年の手首を掴んで
巫山戯てボクに触らせようとする。

しかし二人が姦しく争っている間も、一番背の低い、前髪金髪の少年は
後ろに立ち、呆然といった感じでじっとボクを見つめていた。

魅入らせる、のはボクの得意技だ。

相性がいい人なら初めて見た瞬間からボクから目が離せなくなり、
そして引き寄せられるように近づいてきて触れるのだ。

だが、その少年はボクがじっと見つめ返しても動かず、
ただ呆けたように見続けていた。


「進藤?」

「・・・え?」

「どないしたんや、ぼうっとして。」

「あ、いや!ちょっと知り合いに似てる気がしてさ、それだけ。」

「何、女か?」


立てた少年の小指を無理矢理折り、「和谷じゃあるまいし。」と頬を膨らませる。

進藤、か・・・。

ボクが誰かに似ているって、一体誰なんだろう。
この少年にあんな顔をさせるって、どんな人なんだろう・・・。






夜になり、一番おしゃべりだった少年が洗い立ての髪をバスタオルで拭きながら
一人で現れた。確か和谷と言ったか。


黙って前まで来て、ボクを睨んだかと思うと、いきなり「チョップ!」と言いながら
手刀でボクの額の真ん中を打つ。

な、何なんだ?!キミは!


「オレ、おまえみたいな高慢ちきな顔した奴嫌い。」


・・・あっそ!
誰もキミなんかに好いて貰おうとは思わないよ!

と思ったら今度は、凄い勢いで唇を押しつけてきた。
お、おい!後ろに倒れる!

何なんだ?本当に。
嫌いと言ったりキスしてきたり。

だが和谷はそれ以上何も言わず、ふん、と鼻を鳴らして部屋から出て行った。
おい!口拭いて行け!




次に来たのは背の高い社。
これも髪を拭いている所を見ると、和谷と同じく風呂帰りにこの部屋に寄っているらしい。


「ふぅん。見れば見る程よう出来とるけど。」


ボクの顔や耳に触りながらじっと観察した後、


「ちょっと失礼するで。」


と言って、ボクのズボンの前を広げた。
ぶるん、と飛び出すボクの男性の象徴。


「へぇ〜、ここまでホンマによう出来とる。」


股間に顔を埋めるようにしてしみじみ見た後、指で軽く弾いて


「あの、上品そうな奥さんが、ねぇ・・・。」


・・・あ、それは違うんだけど。
そうか、社はボクがこの家に来た経緯を知らない訳だな。
お母さんも誤解されて気の毒だがどうしようもない。


「あれ?」


社が気が付いてボクのズボンをずり下げ、足をぐいっと開いた。


「おまえ・・・両方あるんか!」


ニヤっと笑って無遠慮に指を突っ込んでくる。


「あ、そうか。濡れてへんわな、そら。」


だが、その顔には欲情が滲み、微かに眉を顰めて股間を押さえた。
彼は女性経験があるのだろう、と思った。
そして、この三人の中でボクを抱くとしたら、彼だろうとも。


「それにしても、あの塔矢先生がなぁ・・・。」


いやだから違うって。


社が出て行ってどうせ次はあの進藤が来るのだろう、と思ったが、
結局その夜はもう誰も来なかった。






翌日も日中は静かだったが、夜になってからりと襖が開き
やはり髪を濡らした和谷が立っていた。

ボクの前まで来て、今日はチョップはせずに足元に胡座をかく。


「あああ〜・・・。」


一人でがくりと首を落とす。


「はぁ・・・やだなぁ。いよいよだなぁ・・・。」


ああ、何かちらっと言っていた北斗杯とやらか?


「オレ・・・オチの下らない失着で選手になったんだよな・・・。」


オチってなんだ。
だが、昨日あんなに睨んできた者とも思えない馴れ馴れしさで和谷はボクの足元まで
擦り寄ってきて、膝に頭を乗せた。

・・・とと。まあ膝枕は初めてじゃないけれど。


「どうして・・・あんな所で下手打ったんだ・・・オチ・・・。」


・・・・・・。


「完全におまえの碁だっただろ?本当だったらおまえが勝った筈だろ・・・?」


和谷は、頭にバスタオルを乗せたままボクの膝に縋り付いて肩を震わせ始めた。


「怖いんだよ、怖いんだよ・・・。」

「オレは負ける。絶対負ける。だっておまえより弱いもん。」

「絶対・・・オレよりおまえが出れば良かったって、みんな・・・。」


泣く、少年。
身も世もなく。
人間の男の子って、こんなのなんだろうか。


「どうしたら、いいんだ・・・。」


膝を両腕でぎゅっと締め付けられた。

・・・いいけどね。

でもボクはキミの、ママじゃない。
キミを守ることも、キミの気持ちを引き上げることも出来はしない。

どういう事情があったのかは知らないけど、キミが選手に選ばれた以上は
今キミに出来る事をするしかないんじゃないのか?
泣いている間に少しでも精進すればいいんじゃないかと思うけれど
まぁ、自分からは何も出来ないボクが言う事でもないか。





その時、廊下の向こう側からヒタヒタという足音が近づいてきたので、和谷は慌てて立ち上がり
バスタオルで目元をゴシゴシと擦った。


「おい・・・和谷?おるんか?」

「あ、ああ!今行く。」


がら。


「いや、ええんやけど。何やっとったん?」

「人形さ、ちょっと見てただけ。おまえは?」

「オレもやけどな。・・・和谷、ところでおまえ、これの使い方知っとるか?」

「使い方・・・?」

「ああ。」


和谷は顔を顰めて顎を引いた。


「って。これって使うもんなのか?」

「ああ、まあ見とれや。」


言いながらボクを椅子から下ろして横たわらせ、ボタンを外していく。


「え・・・何、すんだ?」

「ほれ、よう出来とる。」


全て剥ぎ取ると、和谷の目はボクの物に釘付けだった。


「うわ・・・こんなトコまで、こんなリアルに・・・。」

「それだけやないで。」


そう言って無造作に足を広げた。


「え・・・?」


社はポケットから取り出したクリームのようなものを、手早くボクの膣に塗り込めて行った。


「男でも女でも使えるようになっとんか、」


足の間に腰を入れ、ボクの太股を抱える。


「カムフラージュか。」

「おい!何するんだ!」

「そら使うんやん。」


社は事も無げに言って既に勃起していた物をずぶりと挿してきた。


「お。」


ああ・・・脈打っていて、硬くて、
何より角度があるから抜けにくい。
こうやって乱暴に揺すられても、奥、まで・・・。

緒方さんも良かったけれど、若い男もいい。
年は多分ボクと変わらないけれど、オスの匂いが心地いい。


「ああ・・・ごっつええわぁ・・・。」


もっと・・・して。愛して。


「・・・和谷?」


ボクは見なかったが、足音がたたたっと廊下を遠ざかって行った。
怒った・・・かな?


「アイツな、多分自分でヌきに行ったんやで。」


社がまだ腰を動かしながら、ボクの首を抱えて抱きしめ、耳元で囁く。
そうかな?
さっきまでの様子では和谷はボクに欲情なんかしそうになかったけれど。


「おまえ、ホンマにきれえやな。男にしとくんは勿体ない。
 胸がデカかったらカンペキやのに。」


余計なお世話だ。
そんなの最初のご主人様の好みで、彼がいなければボクは存在していない訳だから
その好みを他人にとやかく言われたくない。


「でも、そそる。人間の女より。」


社・・・・・・。


「・・・大阪に連れて帰りたいなぁ。」


・・・ボクは、愛される為の人形。
そんな風に、言われたら、キミをご主人様と呼びたくなる・・・。







−続く−







※社という名の別人?






  • リク部屋に戻る
  • SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送