開かずの間








日本棋院は勿論ボク達の仕事場で、慣れ親しんだ場所だ。
だが、案外と知らない場所、行ったことのない部屋も多い。

という事に気付いたのは進藤のせいだった。





「進藤二段を知りませんか?」


ホールの売店の売り子さんに聞く。
これで何度目ほどだろうか。
最初は「さぁ?」と言っていたが、さすがに気を付けて進藤の動向を見てくれるようになった。


「お昼に外に行って、帰ってきてから出てらっしゃいませんよ。」

「ありがとうございます。」


どこだろう。どこだろう。
自分は、碁を打っている時と両親といる時以外はボクの物だと言ってくれたのに。
腹立たしさなどは感じないが、そこはかとない不安が漂う。

ボクはエレベーターで最上階に行き、隅から隅まで見て回った。
それこそトイレから普段は入らない部屋まで。
終わったら次の階、次の階、鍵が掛かっていたり使っていたりしてボクが入れない部屋は
進藤も入れないはずだからほぼ網羅したと言える。

そして再び一階に戻った訳だが、進藤はいなかった。


「あの、すみません、進藤二段は通りましたか?」

「いいえ?」


困った。
進藤がいない。

しかしそれからしばらくして、進藤がどこからともなく現れて手を振った。
凄くホッとした。


「どこにいたんだ?」

「え?」

「キミは最近、棋院の中でよく消える。」


特に詰るような口振りで言ったつもりはないが、進藤は眉を上げた。


「キミはボクのものなのに。」

「いや、そうは言ったけど。」

「どこにいるのか分からないのはまだしも、どこにもいないのは不安だよ。」


進藤は「探してくれたんだ?」と少し笑った後、困った顔をして


「『開かずの間』にいたんだよ。」


と言った。
それ以上は何を聞いても答えてくれなかった。






棋院の建物に『開かずの間』があるという話は聞いたことがない。
確かに長期間開けられない部屋はあるが、用事があれば普通に入れる。

ということは、『開かずの間』というのは何かの譬えだろうか?


「緒方さん、『開かずの間』って知ってますか?」


こんな時にちょっと頼りになったりするのはやはり兄弟子だ。


「知ってるって、普通に開かずの間か?開かない部屋、という意味の。」

「そうです。棋院にそんな場所ありますか?」

「さぁ、ないと思うが。そんな無駄なスペースは非合理的だろう。」

「そうなんですけど・・・。他に、『開かずの間』で思い浮かべるような事ってありますか?」

「まあ怪談ぐらいかな。古い家に、いつ誰が閉めたのか分からないが鍵のかかった部屋があって
 誰も中を見たことが無いが、開けるとよくない事が起こるとか中に幽霊がいるとか。」

「ちょっと怖いですね。」

「まあ実際はなかなかそんな部屋はないさ。」


確かに。うちも古い日本家屋だが、そんないかがわしい部屋はない。






進藤が棋院以外で消える事はない。
碁会所でも「ちょっとトイレ。」と言って席を立つことはあるが、それほど間を置かずに帰ってくる。
ボクの自宅に来た時もそんなものだ。

棋院よりも家の方が怪しいのもどうかと思うのだが、ふ、と何かの気配が漂うような
そんな部分があるので(今までは気にも留めていなかったが)ボクはついつい
進藤の手を握ってしまう。
風呂に入る時もついつい着いていってしまうので、そんなつもりもないが進藤は


「塔矢、積極的。」


と笑ってボクを引き寄せ、そのままされてしまったりする。
ボクの事をさぞや好色だと思っているだろう。
元はと言えばキミのせいなのに。
キミが、ボクに黙って消えるからなのに。






「進藤二段を知りませんか?」


その日も売店で聞いた所だった。
気付かなかったが、後ろに和谷くんがいた。


「おまえ、最近いっつも進藤探してね?」

「・・・・・・。」

「いー年なんだからさ、気持ち悪いよ。」


キミなんかにそう思われても全然構わない。
第一、何も知らないくせに。進藤の事も、ボクの事も。


「待ってりゃすぐ来るだろ。それとも一人じゃ時間も潰せねえの?」


そんなことはないけれど。一人には慣れていたはずだけど。
進藤は、ボクは彼の物だと言ったんだ。
持ち主がいないと、どうしていいのか分からなくなるんだ。


「んな顔すんなよ。・・・いいよ、暫く一緒に待ってやるよ。オレもツレ待ってるし。」


頼んでもいないが。
それから、会話が弾む事もなくぽつりぽつりと碁の話をした。
でも何のきっかけか和谷くんが不意に、


「進藤を探しに行って、見つけられた事ないの?」


と聞いてきた。
親しげな割りに行き場所の心当たりもないのか、と言われたようで少しむっとしたが、
だが。
見つけるという言葉に、ふと、心が緩んでしまったようだ。


「・・・ボクが探しに行っても、進藤はどこにもいないんだ。」

「んな訳ねえだろ?建物から出てないんだったらどこかにいるんだよ。」

「だって。隈無く探しているもの。」


和谷くんは少し面食らった顔をした後、また「男のくせにベタベタして」などと
からかって来たが、どこか戸惑った風情だった。


「どうせどこか忘れてんだよ。」

「そんなことないよ。」


何となく売り言葉に買い言葉で・・・そのまま二人で、ボクがいつも進藤を探している
コースを回ることになった。




トイレの個室を一つ一つ見ているボクを、和谷くんは目を丸くして見ていた。
どうだ。ちゃんと見ているだろう。蟻の這い出る隙もない。


「この部屋は?」

「いつも鍵が掛かっていて開いていた事がない。」


ガチャガチャ


「あ、ホントだ。倉庫かな?」


言っているのを放っておいて、掃除用具入れを開ける。
いたらかなり驚くが、念のため、だ。


「・・・おまえ、いつもそんなとこも見てんの?」

「ああ。」


和谷くんは肩を竦めて頭を振った。




「・・・いなかったな。」

「だろう?」


二人で一階にまで戻ってきたが、進藤はいなかったし売り子さんも
まだ通ってないと言っていた。
和谷くんも不思議だ不思議だと首を捻っている。


「で。進藤にどこにいたのか聞いたことあんの?」

「それはあるよ。でもいつもただ『開かずの間』にいた、と。」


『開かずの間』ねぇ・・・。口の中で呟きながら天井を仰いだ後、「あ。」と
小さく口を開けた。


「もしかして、隠し部屋って事ない?」

「隠し部屋?」

「そう。どこかに隠し扉とか隠し階段があって、部屋と部屋の間とかに
 外から見えない部屋があんの。」

「なるほど。」

「そういう所には誰かがずーっと閉じこめられてたりしてさ、進藤がこっそり
 食事運んでたりすんのな。」


怖がらせるようにおどろおどろしく言う。
しかし、そんな部屋があったら怖いというよりは、そんな人がいたら少し不快だ。
全部ボクのものだと言ったのに。
ボクに隠し事をしているなんて。ボク以外の人と、二人きりの時間を持っているなんて。


「今度はその辺に気を付けて探してみるよ。」


笑って言ったが、和谷くんは何故か気味悪そうにこちらを見ていた。
だが、丁度進藤が来たのでそんなことはすぐに忘れた。





数日後、芦原さんに付き合って貰って事務局で棋院の設計図を見せて貰った。
かなり古い物で探して貰うのも大変だったが、何とか古い巻紙を手にする。


「一体何の用なんです?」

「いやぁ、友人がこの当時の建築に興味があってねぇ。」

「そうですか、すみませんがセキュリティの問題がありますんでコピーは・・・。」

「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっと見せて貰えれば。」


別室で二人で広げてみる。
各フロアから新館、地下まで20数枚に及ぶ青写真を丁寧にチェックしてみたけれど
壁の厚みや出入口に不審な部分のある部屋はなかった。


「幽玄の間の掛け軸の裏とか怪しいと思ったんだけどな〜。」


面白がって付き合ってくれた芦原さんもがっかりしているかと思ったが
さほどでもないようだ。


「よく考えたら不自然だったらもっと早くに誰か気が付くよね。
 棚のせいで狭く見える部屋はあっても、実物より広いはずの部屋もなさそうだし。」

「ごめんなさい、変なことに付き合わせて。」

「いいっていいって。面白かったし。」


そして「それにしても。」と言葉を続ける。


「進藤くんはどこにいたんだろうね?」

「本当に。開かずの間でないとすると、見当も付かない。」

「いや、別のタイプの『開かずの間』を言ったのかも知れないよ?」


聞きかじり民俗学だけど、と断って芦原さんが話し始めたのは、
和谷くんの開かずの間の話よりも更に奇妙なものだった。


それは、『開かずの間』というよりは『あるはずのない部屋』というニュアンスらしい。

実際には在っても、皆が「無い」と思っているので「存在しない部屋」。


「そんな部屋、なかったじゃない。」

「本当に?そう言える?」

「だって一つ一つ端から扉を見たし、図面だって。」

「分からないよ。見えているのに当然のようにその扉の前は通り過ぎているのかも知れない。」

「・・・・・・。」

「座敷童子って聞いたことあるだろ?あれって、みんな知ってる顔だから特に不思議には
 思わないのに、お菓子を分けたりする時に改めて人数を数えて見ると多かったりするんだよね。」

「それは妙だね。」

「それと同じでさ。全部の部屋を調べた筈なのに、振り返って数えてみると扉の数が
 見た部屋の数より多かった、とかさ。そんな事はない?」

「気持ちの悪いこと言わないでよ。」


ボクが眉を顰めても、芦原さんは更に続けた。

その話では、「その部屋では、誰が何をしても無かったことになってしまう」と言うのだ。
「存在しない部屋」であったことは「行われていない」ことにされてしまうらしい。


「殺人だろうが、やばい儀式だろうが。」

「それっておかしくない?『行われていない事になる』という事は、実際には
 『行われた』事を『みんな知っている』という事だよね?」

「だから、昔の日本人の『ムラ意識』というか『開かずの間という機構』なんじゃないの?」

「よく分からないよ。」


芦原さんの解釈によると、『治外法権』が一番近いらしい。

 後ろめたいことをするのなら、その部屋で。
 それならば目を瞑ってやる。
 人を殺すなら殺してもいい、女を犯すなら犯してもいい、
 ただ部屋の中で全てを完結しろ。
 そのケガレを日常に持ち込むな。


「本当は気付いているのに、気付かない振りでずっといられるものかなぁ?」

「口に出さなければそれは知らない事、それで通ったんだろ。
 そんな器用な事が昔の日本人には出来たんだよ。」


 座敷童子だって、どの子が余分なのか本当はみんな知ってたんじゃない?
 あからさまに仲間外れにはしない、でも折に触れて「一人多い、一人多い、」と。
 名指しで苛められるより堪えるかも知れないね。


嫌な感じの話だ。
ボクは実際にそんな部屋の存在は知らないからこの場合には当てはまらないと思うが、


「あの・・・進藤って、いるよね?みんな知ってるよね?」


言いしれぬ不安に駆られて思わず問いかける。
芦原さんは少し驚いた顔をした後、大笑いした。


「あっはっはっは!何、怖くなったの?アキラも可愛いなぁ。
 大丈夫、進藤二段はいるよ。記録にも載ってるしみんな知ってる。」

「ああ・・・そう。」


「・・・キミが知っているのと同一人物かどうかは分からないけどね。」






最後の芦原さんの言葉が意外と堪えていたのか、その夜ボクは怖い夢を見た。


いつもの通り進藤を探しに行くと、棋院の廊下の端の窓があるべき所に
何故か古めかしい扉があって「ああそうか、今まで見逃していたのはこの扉だ、」と
確信するのだ。

と言うことは、この向こうに進藤がいる。

だが開けることは躊躇われた。
芦原さんの言う『開かずの間』ならば、この中では後ろめたいことが行われていて
ボクはそれを知ってはならない事になる。

進藤は、この中で殺人でもしているのだろうか。
  ・・・それでも、ボクは変わらないよ。

それともまさか、ボク以外の人と・・・。
  ・・・きっとボクは、キミを殺してしまうよ。

いや、キミに殺して欲しい。
誰も知らない『開かずの間』の中で。


・・・知りたい、知りたい、でも開けてはならない扉。
開ければきっと恐ろしいことが起きる。
開ければきっと、全てが終わる。

立ちすくんでいると、後ろからポン、と肩を叩かれて飛び上がりそうになった。


『塔矢?ああ、開かずの間、見つけちゃったんだ。』


進藤が微笑んでいた。
その笑顔に、今まで感じていた恐怖が嘘のように霧散していく。


『うん。見つけたよ。ボクも入れてくれるだろ?』

『いいよ。』


進藤は、今まで隠していた割りにえらく気軽に扉に手を掛ける。
そうは言っても廊下の端なのだから、この向こうには何もないのではないかと思ったら
案の定開けた扉の向こうには空間と外の景色が広がっていた。
6階か7階ぐらいであろうか。


『どうしたの?入らないの?』

『だって。』

『じゃあお先に。』


あれ?やっぱり部屋があるのかな?進藤には見えているのかな?
と思ったが、やはり普通に外だったらしく、進藤は一歩踏み出すと共に
ストン!と重力以上の早さで落下していった。

ボクは、最後の瞬間、戸枠の下の方に消えた進藤の後頭部の残像から、
いつまでも目が離せずにいた。






「進藤!進藤!起きろ!」

「・・・ん?」

「・・・っ!」

「ん、どしたの?・・・あれ?おまえ泣いてんの?」

「・・んどっ・・・、キミ、クの、ものだよね?・・・急に、いなくなったりしないよね?」


進藤はしばらく、面食らったような寝ぼけたような複雑な顔をしていたが
やがてボクを抱き込んで「よしよし」と頭を撫でてくれた。


「・・・大丈夫だよ。オレはどこにも行かない。言っただろ?おまえだけのものだよ。」


だって、だって、
キミはボクを置いて開かずの間に行ってしまうじゃないか。

とは言えなかった。
もしそれが「存在しない部屋」としての『開かずの間』なら、その部屋の話をする事自体
タブーという事になる。その存在を認めてしまう事になるから。
きっと進藤だって認めないだろう。
そして今度こそその『開かずの間』に入ったまま二度と出てきてくれないような気がする・・・。

そこで夢の中の「本当に存在しなかった部屋」を思い出してまたゾッとしたが、
今は取り敢えず、進藤はこの腕の中にいるんだ。


「え?今から?」

「・・・うん。」

「もう夜中だけど。」

「だって・・・不安で、寝られそうにないんだ。」


暗がりの中手探りをしていると、進藤は少し苦笑したように思う。
それからボクに覆い被さってきた。
その重みに、熱に、ボクは酷く安心する。


「セックス依存症?」

「どうだろう。」


ただ進藤にされていないと、繋がれていないと、どうしようもなく心細いんだ。
キミはボク。
ボクはキミ。
お互いの体に溺れて、一つに溶け合ってしまえたらいい。

それこそ後ろめたい事なのかも知れないけれど。

さっきの夢の記憶を、扉を開けた所から修整する。
この部屋に。現在に。
誰も知らない開かずの間で、ボク達は背徳の儀式を繰り返し続けるんだ。







「塔矢!」


玄関ロビーを入った所で、珍しく和谷くんが声を掛けてきた。
その一角には和谷くん、伊角さん、越智、進藤がいつも一緒にいるようなメンバーが寄っている。
だが進藤の姿はない。


「こんにちは。」

「おう。進藤の『開かずの間』、分かった?」

「ううん。」

「オレこないだ隠し部屋なんて冗談言っちゃったけどさ、もしかして、芦原先生と一緒に
 棋院の図面見たのってそのせい?いや、事務の人に聞いたんだけど。」

「ああ。怪しい部屋はないようだった。」

「・・・・・・。」

「それだけ?」

「あ、いや、そんなに気にしてるのかな〜と思って。」

「・・・・・・。」

「でさ、伊角さんが別の『開かずの間』を知ってるって言うから。」

「え。」


思わず伊角さんの顔をじっと見てしまった。


「いやぁ、この建物の開かずの間じゃないんだけどね。」


ほんわかと笑いながら、伊角さんが言う。


「地方の言い伝えで『寝やど』というのがあるんだ。」


・・・それは子どもが成人になるための通過儀礼の風習らしい。
子どもはある時期を迎えると、産まれ育った環境から隔離された『開かずの間』に
一人で閉じこめられるというのだ。

その部屋に特に何かがある訳ではない。
今まで子どもの集団で過ごして来た者が、一人で自分自身と向き合う。
一人きりで考え、自分と対話し、そうして『開かずの間』から戻ってきて初めて
一人前の大人として認められる、そんな場所らしい。


「日本だけでなく、色々な時代や民族に共通して認められる習慣らしいよ。
 人は、思春期に一人で考える時間を持って初めて大人になれるんだ。」

「・・・・・・。」

「オレにも経験がある。中国では基本的に言葉は通じなかったし、なんだかんだ言って
 孤独だったからね。」

「そう、なんですか。」

「越智だってそうだろ?時々トイレに籠もるのは小刻みに『寝やど』を繰り返してるんじゃないか?」

「・・・ボクは!ボクのは、そんな原始的な風習とは関係ない!」

「まあいいよ。つまりね、進藤もそうなんじゃないかって事。」

「・・・・・・。」

「見たところ、キミ達は仲良さそうだけど、」

「ええ。」

「・・・いつも一緒ってのは息が詰まるんじゃないか?」

「・・・・・・。」


 進藤の『開かずの間』というのは、進藤の頭の中にあるんじゃないか?
 その中で、彼は大人になろうとしているんじゃないだろうか。


「・・・どういう事ですか?」

「だからぁ。待っててやれって事。」


横から和谷くんが口を出す。


「多分奴は今まで一人きりになった事ないんだよ。」

「いつかきっと、彼は『開かずの間』から出てくる。」

「・・・・・・。」


・・・それが、もし本当に進藤の頭の中にあるというのなら。

そこは、限りなく孤独な場所なんだろう。
彼の秘密が、詰まっているんだろう。

それでも。





「あっれ〜?珍しいメンバーじゃん。」


振り向くと、金色の前髪。原色のキミ。


「ああ、噂をすれば影、だ。」

「え、オレの話?ナニナニ?」

「なーいしょ。」

「うわ、感じ悪いなあ。」

「いやぁ、進藤くんも大人の階段昇ってるのかな〜って事。」

「はぁ?何それ。オレはもう大人だよ。なっ、塔矢。」


後ろから抱きつかれて焦ったが、みんな冗談だと解釈してくれたようだ。


「何だそりゃ?アヤシイな〜。」

「なーいしょ。」

「まあまあ、本人達が幸せなら。」

「伊角さん!普通に締めんなよ〜!」

「ハッ。付き合ってられないね。ボクはもう行くよ。」






・・・ざわめきの中で、ボクは自分の世界に沈み込む。


開けてはいけない・・・、扉。

それは伊角さんの言うようなものなのだろうか。

本当に進藤はそこで大人になるのだろうか。


でも。
そうだとしても、ボクはそれを無理矢理こじ開けたいと思わずにはいられないよ。

だって、そこから出てきた時にはきっと「秘密」は消えている。
鍵を掛けてどこかにしまった後で、もうボクにはそれを知る術はない。


キミの全てを知りたい。飲み込みたい。



「あ、そうだ、対局終わったらロビーで待っててくれる?」

「『開かずの間』か?」

「はははっ。」



けれどそれは決して開けてはいけない扉。
でも、開けたくて仕方のない扉。


ならば

進藤こそがボクの、『開かずの間』なのかも知れない。
と、思った。







−了−








※14万打踏んで下さいましたしおさんに捧げます。
  リクエスト内容は


  「開かずの間」

  …でお願いしたいのです。

  開かずの間というのはもちろん、開かない部屋という意味なのですが、
  他にも「あるはずのない部屋」という含みがあると、以前、民俗学(文化人類学だったかも)
  の本で読んだのですね。

  つまり、実際には在っても、皆が「無い」と思っているので「存在しない部屋」なんです。
  そこで、誰が何をしても「存在しない部屋」であったことは「行われていない」こと
  にされてしまうんです。(殺人だろうが、やばい儀式だろうが…)


  もちろん、普通に「開かない部屋」という解釈でも、
  他の解釈でも、結構です。お任せいたします。

  登場人物はやはり、ヒカルとアキラさんは出して欲しいなあ。
  モテモテ王国とまではいかんでも、アキラさん、愛されてて欲しいなあ(笑)
  出来れば、百題のニューロンに出てきた、あの、可愛い「足りないアキラさん」タイプだと嬉しいです。
  あ、そんで、やっぱり、受け、で(笑)。エロ大歓迎♪(人に書かせると思って…)


  すんません、エロりませんでした!(笑)しかしニューロンの続きではあります。
  可愛いかどうかはさておき、足りない感じにはなったんじゃないかと。
  ご覧の通り、「開かずの間」講釈はまんましおさんのから頂きました。
  解釈は「開かずの間」も「座敷童子」も多分自分解釈なんで、違ってたり
  もしくは既にそういう文章があったら申し訳なし。

  こう、非常〜に面白いお題でいくらでも怖い話が出来そうなのに、なんかさわやかな事に。
  しおさん、キリ申告&ナイスリクありがとうございました!


  あ、最後に最大のネタ、進藤がいた「開かずの間」はどこか。
  「存在しない部屋」「塔矢が無意識に開けなかった扉」、
  実際に行けるのかどうか知りませんが二次創作ではお馴染みの場所。

  ・・・お分かりですね?








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    開かずの間/関西棋院Vr.
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