The World WarU PacificOcean 8
The World WarU PacificOcean 8








8・キスケ






何・・・やってんだよ。


暗い病室の布団の上で、正座した塔矢アキラが夜着の合わせ目に手を掛けている。
その前には白い半紙があり、古くさい脇差しのような物が置いてある。


「進藤・・・この世で打てないなら、あの世で。」


ぐっと襟を広げ、あの夜の、白い胸が、さらけ出される。


塔矢。塔矢!何やってんだよ!オレ、生きてるよ!


届かない。なぜか全然届かない。


「・・・さらば。」


わーーーー!!!



・・・・・・・・・・ ・ ・ ・。







「シンドー?」


目を上げると、永夏が隣でじっと睨んでいた。

何度も見た、恐ろしい夢だ。
自分が、内地では戦死したことになっているはずだ、と気付いたときからそれは始まった。
塔矢は体は弱いけれど、そんな精神の弱い人間ではない。
と思ってはいても、どこか常に不安を打ち消せない。


「うるさいぞ。静かに寝ないなら収監に帰れ。」

「永夏・・・。」


ヒカルは昨夜、昼間の労役で疲れ切った体を永夏に抱かれ、
そのまま彼のベッドで寝てしまっていた。


「悪い。寝るよ。」


固くて南京虫だらけの床で雑魚寝をさせられるよりは、敵将のベッドの方がマシだ。
ヒカルはすぐに背を向けて、毛布をかぶった。


「シンドー・・・。」

「・・・んだよ。」

「トーヤとは誰だ?」

「・・・・・・。」

「オマエ偶に日本語で寝言言ってる。その時によく出てくる言葉だ。
 国に残してきたガールフレンドか?」


思わず振り返ると、永夏が枕に肘を突いて、ニヤニヤとしていた。


「・・・違う。」

「なんだ。その子の為に、生き抜いて帰りたいのかと思った。」

「・・・・・・。」

「やっぱりそうじゃないか。」


進藤は、永夏が嫌いだった。彼は鋭すぎるので。
ただ、自分を道具にしてくれたらいい。
ただ、生かしておいてくれたらいい。
なのに何の好奇心か、偶にこんなプライベートな事を聞いてくる。


「その人を、愛してるんだろう?」


こんな、『愛している』だなんて日本人では一生に一度使うかどうかの言葉を
いとも簡単に口に出来るのは、彼が見た目は東洋人でも米国人の証拠だった。


オレは塔矢を・・・愛しているのか?男なのに?
塔矢と、碁を打ちたい。
佐為との打掛の勝負は、塔矢と決着をつけなければならない。必ず。

もう、失うのはゴメンだ。

そしてただ碁を打つだけでなく、あの、塔矢の、白い肌。
もし生きて再び塔矢と相見える事が出来たら、きっとオレは・・・。

右手が熱くなった気がした。



「・・・愛している。」

「him?」

「Yes. I love him.」

「・・・そうか・・・。どんな奴だ?」

「白い・・・雛菊のような。」

「ひ・・・な・・・」


永夏は爆笑した。


「雛菊は参ったな。同じ白なら、オレは百合の方がいい。」


ひとしきり笑って目が覚めたらしい永夏が、低い声で歌い始める。


 目を閉じれば見えてくる
 街灯りに君の姿



ドイツ軍兵士の間で爆発的に流行した「リリィ・マルレーン」は、この頃には
ドイツ軍のラジオ放送を通じて連合軍にも熱狂的に受け入れられていた。


 生きて帰れたら
 再び会えるね

 いとしいリリィ・マルレーン
    いとしいリリィ・マルレーン・・・・ 



ささやくようなリフレーンを子守歌のように聞きながら、ヒカルは眠った。
今度は夢を見なかった。









翌日ヒカルが目覚めると既に夕刻で、永夏はいなかった。
上手く労役を免れた・・・。
小さな幸せを噛み締めながら、水差しの水を一口含む。

ベッドにどたりと倒れ込むと、ドアが開いて永夏が入ってきた。
手に夕食のトレイを持っている。


「やっと起きたか。捕虜の分際でいい身分だな。」

「・・・明日は倍働くよ。」

「それより、オマエの出身地はどこだった?オマエのリリィ・マルレーンもそこにいるのか?」

「はぁ?何だよ急に。」


昨夜の話を覚えていたのかと思うと、顔が熱くなりそうになる。
夜だから言えたんだ。明るい内からオマエのリリィ・マルレーンとか言うな。





小さなテーブルで差し向かいに夕食を摂った。
相変わらず粉を溶いた牛乳は口に合わないが、現地のフルーツは旨い。


「忙しそうだ。」

「軍人が忙しくても何もめでたくないがな。」

「・・・こんな戦争、終わればいい。」

「・・・・・・。」

「分かってるよ。日本は負ける。」

「だろうな。」

「だから、負けてもいいから、早く終わらせて欲しい。そしたら早く国に帰れる。」


トレイを重ねてから、投げやりに再びベッドに倒れ込む。
どうせこの後また犯されるのだ。少しでも体力を温存したかった。


「・・・帰さないと言ったら?」

「え?」

「戦争が終わってもオマエを帰さないと言ったらどうする?」

「決まってる。アンタを殺して、脱走する。」

「はははっ!相変わらず性格は凶暴だな。」

「・・・・・・。」

「だが、本当にオマエをシスコに連れて帰ろうか。オレ個人の戦利品だ。」

「嫌だよ。」

「捕虜に拒否権なんかない。」

「嫌だ・・・生きて帰ると、必ず帰ると、誓ったんだ。塔矢にオレは。」


ヒカルの目に、線の細いアキラの姿が浮かぶ。
そして、ヒカルが帰ってこない事を嘆いて腹を切る、あの、夢。
非国民でもいい。なりふり構わず何でもいいから、早く帰りたいという思いが新たになる。


「まあ、ゆっくり考えるさ。」

「帰して。何でもするから。本当に何でもするから。手でも目でもやるから。」

「オマエの目をスープに入れても旨くなさそうだが。」


永夏の目が細まる。


「最近井戸の水が冷たいのが悩みの種でね。」









その夜、ヒカルは横たわったままの永夏の全身を、自らの舌で清めた。
泥の詰まった足の指から、尻の穴まで。

娼婦でもこんな事はしないのではないか。
性奴隷。
構わない。生きて、帰れるのなら。

勃ち上がった永夏の陽物に、懸命に舌を這わせる。


「自分で入れて、動けよ。」

「・・・・・・。」


瞼に揺れる、一輪の雛菊。


「・・・っう・・・。」


永夏の腹に突いていた手を払われて支えを失い、自分の体重で一気に内臓を押し上げられた。


「うあっ!」

「シンドー、オマエも、勃ってる・・・。カラダの相性いいんじゃないか?」

「・・・っぎ、い、い、」


腰を掴まれて下から突き上げられ、痛みと、快感と、恥辱と、
そんな白いモノ達が思考を霞ませる。


「来いよ、シスコに。」

「い、や・・・。」

「強情な奴。」


永夏が動きを止めて転がり、二人の体位を入れ替える。
ヒカルは少し息をついた。


「・・・この戦争が、終わったら、オレは、絶対、日本に帰るんだからな・・・。」


体を繋げたまま、永夏は無言でヒカルの目を覗き込んだ。
やがて目を逸らし、


「・・・もうすぐ終わるかも知れない。」


と言って、ヒカルの太股を抱え直し、いつも通り自ら動き始めた。


・・・・・生きて帰れたら


鼻歌混じりにヒカルを攻め立てる。


 再び会えるね

 いとしいリリィ・マルレーン



追い上げられ、ヒカルの先端から透明な雫がしたたり落ちる。
頭の隅で、白い、花が、
こんな時に、アイツを思い出したくないのに。
くそっ!


    いとしいリリィ・マルレーン・・・・ 









コンコン、

カチャ。



「高所長?」


疲れ果てたヒカルが寝ている部屋に入ってきたのは秀英だった。
この収容所の看守だ。
同じコリア系として、高永夏とは戦争が始まる前からの付き合いらしい。


「なんだ。オマエしかいないのか。」

「・・・ああ。」

「オマエは・・・。すっかり永夏の気に入りだな。体で誑し込んだんだろ?」


初めは数少ない日本語が話せる米国人だったので比較的親しみを持っていたが
永夏がヒカルを抱くようになってヒカルが英語を話せるようになるにつれ、
会うことも少なくなった。

そして、なぜかヒカルに対して敵意のようなものを見せ始めていた。


「・・・そうだよ。」

「恥知らず。ボクは日本人を見損なっていた。」

「何とでも言ってくれ。オレは・・・オレは、生きる為なら何でもする。」

「ははっ!永夏から聞いたよ。国で待ってる雛菊の為だって?」

「・・・・・・・・・・・・そうだよ。」

「フン。雛菊が今のキミの姿を見たら、何て言うかな。」

「見られる事なんてないんだから、いいんだよ。・・・で、何?今晩はアンタなワケ?」

「バカにするな!誰がオマエなんか・・・。」




逆上しかけた秀英が、何故か急に表情を和らげ、ゆっくりと椅子を引いてヒカルの前に座った。


「そうだ。もう雛菊がオマエの姿を見る事なんてないよな?」

「ああ?」

「なんだ。永夏から聞いてないの?」

「何をだ。」

「永夏も優しいな。もうすぐ戦争が終わるって話だよ。」

「ああ、そんなことを、」


昨夜言っていたかも知れない。




「・・・昨日の朝、我が連合軍が、日本に『迅速かつ完全なる壊滅』を浴びせた。」

「?」

「nuclear って知ってるか?」


聞いたことのない単語だった。
ヒカルが『原子爆弾』という言葉を知るのは、もっと先になる。


「放射能で効率よく敵国民を殺せる最新兵器だ。」

「それで・・・日本を空襲したのか?」

「空襲、と言っても一発だが。直接被弾しなくても、放射能で爆心地から相当離れた人間でも
 じわじわと殺すことが出来る。何十万人も。普通の空襲の比じゃないぜ。」


ヒカル真っ先に思ったのは、天皇陛下の御身であった。
そんな酷い兵器を落とすとしたら東京だと思ったので。


「酷い・・・。」

「でも、こうでもしなきゃ戦争は終わらないよ。」

「・・・・・・。」

「その爆心地は、ヒロシマ。」





さらりと滑らされた言葉に、

呼吸が、止まった。

心臓が、止まった。





「オマエの出身地、ヒロシマだったよな?雛菊もそこにいるらしいじゃないか。
 いや、もう『いた』と言った方がいいだろうけど。」




秀英の言葉が、耳を素通りする。





「オマエは出征したせいで上手く免れて良かったな。望み通り生き抜いたじゃないか。」





ヒロシマ?ヒロシマ?

オレの育った、そして塔矢の疎開している村は、広島の中でも辺鄙な所だけど。

何十万人も?

そんな。そんな。




ヒカルは原子爆弾の威力を想像することが出来ない。
だが、秀英の話から全県壊滅してしまう程の被害を想像した。




何故、広島。
何故、よりによって、塔矢のいる、広島。





原爆投下地として広島が選ばれた理由の一つは、連合軍に芦原が広島に潜伏しているという情報が
漏れていたからだが、その事も、僻地にいた芦原が無傷であることも、
ヒカルは勿論何一つ知らない。





ただ、塔矢が地上から姿を消したという思いに、支配されていた。












その頃伊角は和谷と共にコレヒドールに上陸し、巡洋艦を待っていた。

雑用係の数人の兵に紛れながら、木陰に陣取った士官の一群に目をやる。
一際目を引くのはやはり、『伊角慎一郎』すなわち塔矢アキラの白い軍服だった。





「常勝倉田隊」を率いる倉田中隊長に、密命が下ったのは、一ヶ月前。

さるやんごとなき方の息の掛かった人物を、陰ながら守れというものだった。
その人物は、生粋の軍人ではない。
彼の仕事は、その軍人の中の「腐ったミカン」を取り除くこと。



この戦況に至って、大本営は出来ることなら何でもやった。
その中で、精神力が足りぬと、兵卒を指揮する者の中に志気を高めるどころかくじく者がいるはずだと
いう意見が出たのだ。

だが、それをどうやって見分けるのか。

軍人同士では、顔見知りである可能性が高い。
そもそも、そんな役目を持った人物が存在すること自体絶対知られてはならない。
かといって、ただの一般人にそんな大役を任せられない。

と思っていたところへ上の方から、ある人間を紹介されたのだ。



驚くべき事にそれは徴兵検査にも受からぬ、体の弱い少年だった。

冗談ではない、と怒る者もなくはなかったが上の命令は絶対で、
しかも直接軍事・作戦に関わる事でもなかったので反発もしなかった。

どうせ前線に出てもすぐに死んでしまうだろう。

無論戦線には出し申さず最大限の便宜を以てを取りはかり奉るが、
過酷な戦場で何事ありても当局は関し奉らず。

それが大本営の答えだった。




そこで、倉田に、彼にも軍にも正体を知られず彼を守って欲しいと・・・
直接頼んだ者があると言うのだ。


「どなたなんです?」

「ん?。偶々サイパンで上官だった人なんだけどね。本当なら口もきけないような偉い人だよ。」

「何故その方が?」

「その人も碁が好きでさ。身分を感じさせないような気さくな方だもんで、よく個人的に打ってたんだ。」

「では、倉田隊も解散ですか。」

「する訳にいかんだろ?それにオレが行ったら絶対顔見知りの一人や二人いるって。
 そこんとこが分かってないんだよなぁあの人は。」


恐れ多い方だとの話なのに、倉田の言い様は無礼極まりない。
そんな所が気に入られたのかも知れない。

とにかく、その方がその人物を手中の珠のように大切に思っていて傷をつけたくないらしいのだ。

 そんなに大切な人なら、そんな危険な役目を負わせなければいいのに。
 マッタクだ。

珍しく倉田が溜息を吐いた。


「でさ、オレの代わりにペイペイな奴を行かせようと思うんだけど。」

「はあ。」

「どうもその『さる人物』ってのが、キサマの言ってた『塔矢アキラ』らしいんだこれが。」

「は?」

「よし!十の四!どうだ!」

「あ・・・。」


出来れば「塔矢アキラ」の顔を知っている方がいい。
しかし、ちらっとでも見られたらバレるほど親しい仲だった人物では困る。


「・・・参りました。」

「てことでキサマ、頼むな。手中の『ギョク』の護衛。」

「しかし・・・本当に塔矢アキラですか?彼はとても戦線に出られるようには。」

「だから本来乙種にも受からないような奴だって。」

「だとしても・・・どうして塔矢アキラの顔を知っている必要があるんです?」

「バッカだなぁ。合流した時既に替え玉だったらどうするよ?
 全然関係ない人間守り続けるハメになるぜ?」


まあキサマみたいなぺイぺイがどうなってもいいけど、「ムダ」ってもんが嫌いなんだなオレは。
倉田は言って、まあ気軽に頑張ってこい、と伊角を送り出したのだ。




そういう経緯で伊角はアキラにつかず離れず見守っている訳であるが、
塔矢アキラ自身が何故その大役を仰せつかることになったのか伊角は知らない。

内地で会った時より丈夫にはなったようだが、まだまだ弱そうなのに。
どうも塔矢アキラにも、その大役以外に目的がありそうだ。
その辺が関係するのかも知れないが・・・。


命の危険がない限り伊角が出張る事は禁じられているし、正体を明かしてもいけない。
だが・・・彼は御器曽大尉の「教練」には本当に肝を冷やした。

あれはオレが知っている「塔矢アキラ」とは、別人なのではないか。

今にも露と消えそうだった、儚げな少年。
幻を見ている、本人が幻のようだった。
はにかんだ笑顔を浮かべ・・・喀血・・・。

確かに同じ顔なのだけれど、あのアキラ君にあんな真似が出来るものだろうか。

人目につくような出で立ちをし、嫌われるように振る舞い
妖婦のように大尉を誑かす。

何が彼を、ここまで強くしたのだ?
何が彼を・・・狂わせたのだ?









その夜、永夏が自室に帰ると、ヒカルが全裸でベッドに横たわって驚いた。


「・・・どうしたんだ?」

「抱けよ。」

「・・・・・・。」

「オレは捕虜だからさ、何でもアンタの好きにしていいんだけど。」

「ああ。」

「オレは自分が生きる為に、自分の体を差し出した。」

「・・・・・・。」

「だけど、オレが生きたかったのは、自分の為じゃない。塔矢の、為なんだ。」

「・・・知ってる。」

「塔矢の為に、アンタのケツの穴まで舐めた。」

「・・・・・・シンドー?」

「オレの命なんてな、本当はいらねーんだよ。」

「どうしたシンドー。」

「だからオレの命も体も全部やるから、シスコでもどこでも行くし売春でも何でもするから、」

「シンドー。」




「だから、塔矢を、返せ。」


「塔矢を、返せ。」


「塔矢を、返して。」



いつの間にかヒカルは立ち上がって、永夏に迫っていた。

乱暴でもない。
大声でもない。
激しくもない。

だが・・・その目は、虚ろに見開かれたまま、瞬き一つしなかった。
永夏は、ヒカルが原子爆弾の事を知ってしまったのだと悟った。







「シンドー!聞け!」


永夏がヒカルの肩を強く掴む。


「聞けって!」

「塔矢。」

「明日、オガタという日本軍の少佐がこの収容所を訪れる。」

「塔・・・緒方、少佐・・・?」


佐為の手紙で、見たことある・・・?


「そうだ。勿論内密にだ。」

「・・・・・・。」

「原子爆弾の効果は、まだ正確には分かっていないんだ。
 思ったより沢山殺傷したかもしれないが、思ったより少なかったかも知れない。
 明日、そのオガタに聞けば、もっと詳しい所が分かるかも知れない。」

「死んで・・・ないかも、知れないのか?」

「ああ。その可能性は十分にある。それに・・・」


永夏は捕虜に、というよりは弟にするようにヒカルの前髪を掻き上げた。


「どうも、碁の強い少年兵が捕虜になっていないか、探しているらしいんだ。」

「・・・それは・・・。」

「オマエかも知れない。」

「でも・・・オレは死んだことに。」


なっているけれど、こうして生きている。
塔矢だって、本当に生きているかも知れない。
だって誓ったんだ。
待っていると。必ず続きを打とうと。


「オマエは『sai』という言葉を知っているか?そんな人物か何かと関係あるか?」

「佐為!」

「知っているということは、ほぼ間違いないな。」

「少佐が、オレを探してるなんて・・・。」

「だが、彼にオマエがここにいる事を告げるかどうかはオレの胸一つ。
 オマエは正規の捕虜ではない拾いモノだからな。」

「そんな、頼む!緒方少佐に、会わせてくれ!」

「どうしようか。」

「頼む!頼む!お願いだから・・・。」


ヒカルの手が永夏の軍服のボタンに掛かり、必死で首筋に舌を這わせる。


「そうだな・・・。そのオガタは碁は強いのか?」

「強いと思う。」

「そうか。では、明日勝負をしてみよう。」

「?」

「オガタが勝てば、オマエをオガタに返してやるよ。
 もしオレが勝ったら・・・戦争が終わったら、シスコに来るな?」


ヒカルに選択肢など、なかった。


「明日オガタが不戦敗しないように、祈ってろよ。」


永夏はヒカルの顎を持って乱暴に口づけると、ベッドに押し倒した。




あまりに何もかもが急展開で、ヒカルの思考は事態に着いて行けなかった。
ただ頭の中に流れるフレーズ。



 いとしいリリィ・マルレーン
    いとしいリリィ・マルレーン・・・・ 





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