トライアングル・トライアル 4








四日目の夜、指導碁が終わって塔矢ん家に戻ると(もう普通に泊まる事になってるし)
既に二人とも戻っていた。
晩メシ食べずに待っててくれたらしく、おかずが冷めてる。

でも、碁盤が出てなかった。

普段ならそんな事全然何も思わない。
いくら棋士同士だからって起きてる間中碁打ちっぱってこともないし。

だけど、この二人が一緒にいて碁を打たずに一体何をしていた?
と思うと全く想像つかない。
テレビ見てた?話してた?
うん、どっちもアリだと思う。んだけど。

昨夜、しつこい位に社に絡んだのが、だんだん悔やまれてきた。
今になって思うと、オレきっと、塔矢とするよりオレとする方が気持ちイイしお得だって
アピールしたかったんだ・・・。
恥ずかしい。
まるで、オレが社の事好きみたいじゃん・・・って、んな事ぜってーねえから!

それによく考えたら、それとこれとは違うよな。

気持ちよければ何でもいいんなら、奉仕してくれる人がいいんなら
誰だって風俗で満足する。
でも、そうじゃない。
知れば知る程、別の新しいものを求めたくなるんだ。きっと。

二人の間に流れる、秘密めいた空気。
それはもう、昨日みたいな険悪なものじゃない。
塔矢の険が抜けてるし、社ももう、気を使ってないみたい。

・・・オレが知らない、二人だけの時間。



夜、もっとオレを落ち込ませるような事が起こった。
社が、畳んだ布団を持って移動しようとしてたんだ。


「どうしたんだよ。」

「あー、あのな、今晩は塔矢の部屋で寝るわ。」

「な、なんで?」


う〜ん、と眉を寄せて困ったように笑う社。
何だよ、言いたいならはっきり言えよ。

『塔矢にオッケー貰ったから塔矢としたい』って。


「・・・行くなよ。」


でも、自分の口から出てきたのは拗ねた声。
ガキみたい。だと分かってるのに止まらない。


「え・・・でも。もう塔矢に行く言うたし。」

「オレが断るから。」

「・・・う〜ん・・・。」

「おまえ、最初オレにケツ貸せって言ってたよな?」

「ああ、言うたけどあれは、」

「まだそこまで行ってないじゃん!中途半端に放り出して行くなよ。」


って、何言ってんだ?オレ。
オレゲイです、掘って下さい、みたいじゃん、何考えてんだ、
でも、でも、同じ屋根の下で、社と塔矢がああいう事すんのは絶対やだった。

ぼうっと突っ立った社から布団を奪ってオレの布団の隣に広げ、
オレはどすどすと洗面所に向かった。

塔矢が歯を磨いている。
いつも丁寧に、すごい時間掛けて磨いてるみたいなんだけど今日は特に念入りにってか?


「塔矢!」

「?」


振り向いたびっくり眼を、睨んで。


「社、今日もオレの部屋で寝るから。」


益々目を見開いた塔矢に背を向けると、後ろで慌てて歯磨き粉を吐いた気配がして
何か言っていたけど、オレは振り返らずに部屋に戻った。





「は・・・・・・う・・・。」

「そう、ゆーっくり息吐いて。・・・痛いか?」

「ん・・・。」




その晩オレは、社にヤられた。
風呂でキレイに洗ったつもりだけど、さすがに奥まで指つっこまれるとヤベエって感じ。
でも社は気にしないで袋を口に吸い込んだり、穴の回りを舐めてくれた。

鞄から取り出したローションを塗って、指で開いて行く。
汚くないのかなって思いながらも、そうやって弄られてると、なんだろ、
今まで感じた事ないようなむず痒い気持ち良さで・・・。

一旦離れた社の、作業。
生まれて初めてホンモノのコンドーム間近で見た。
それが突っ込まれると思うと恐かったけど、もう引き返すことなんて出来ない。
くるくると、はめ終わった社はそんなオレの心を読んだように


「嫌やったら、無理せんでええねんで?」


と言った。


「ケツ貸せ言うたんは、おまえがいけそうかどうか見たかっただけやから。
 引き具合によってギャグっちゅう事にする、つもりやってんから・・・。」


オレはぶるぶると首を振った。





「痛い・・・けど・・・、気持ちいいかも。」

「ホンマ?」

「うん・・・でも、ゆっくり、して。」


・・・オレ、女の気持ち分かったかも。
気持ちいいとか悪いとかじゃなくて。
突っ込んでるとか突っ込まれてるとかじゃなくて。
誰かと繋がってるってだけで、妙な充足感があるというか。

オレが息を吐きながらゆっくりと背中を反らせると、社が腰を引き寄せて身体をぴったりつける。

抱きしめられたまま、腰を動かされると。
びくん、びくん、と勝手にのどが震える。

そのまま、どろどろにローションを付けた掌で前を扱かれると、

ヤバ、い、・・・。




オレがイッたあと、社は抜いて自分の手でやってた。


「・・・ごめん・・・口でしようか・・・?」

「だから無理せんでええって。今のおまえ見とるだけで十分クるし。」


笑いながら、言葉通り汁まみれでぐったりしたオレの身体を舐めるように見る。
正直、入れられてイッちゃうってのは、かなり計算違いで。
痛いのは覚悟してたけど、気持ちいいなんてなぁ・・・反則だよな。
オレってもしかして・・・そっち系の人?


「言っとくけど、オレ、ゲイじゃないから!」

「分かっとるって。」

「おまえが・・・おまえが、上手いからだからな。」


社はちょっとびっくりしたみたいにこっちを見た後、例のくしゃっとした笑顔を浮かべて
「どうも、」と小さく言った。


「オレに初めてケツの味教えてくれた人と同じようにしたつもりやけど。」

「・・・そう、なんだ。」

「そん時気持ち良かったからな、おまえも良うなってくれて良かった。」


密やかな笑い。
やたら大人びた横顔を見せる社。

・・・そうだよな・・・。
社はきっと沢山の男としてて。
オレはその中の一人に過ぎない。

恋じゃない。

「男となら何人でもヤりたい」って言ってたじゃん。
沢山の相手の中に、オレが増えて、もう一人塔矢が増えて、でも社の中ではそれは
大した事じゃないんだろう。

分かるよ。そういう生き方。
オレも男だから。

でも、でも・・・。

塔矢とだけはしないで頼むから。







−続く−







※思い切りがいいですね。うちのピカは大概そうか。







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