トライアングル・トライアル 5 次の日の朝メシは辛かった。 会話が、ない。 塔矢は無表情だけど怒りが滲み出てて、社もちょっと弱った感じで。 オレは、塔矢は昨夜、オレと社がその・・・したの、知ってると思うと 色んな意味で居たたまれない。 恥ずかしいだけじゃなくて、他人の(しかも行洋先生の)家で、ってのもあるし。 男同士で、ってのもあるし。 本来なら社としたのは塔矢だったかもしれない・・・ってのもあるし。 塔矢は、どう思ってんのかな・・・。 どうして何も言わないでいられんだろ。 って同じ事、オレも思われてんのかな。 ・・・いや待てよ。 塔矢って、ホントに社とそこまでするつもりだったのか? つか、そもそもコイツ男同士で何やるか知らねーって事も考えられるんじゃないか? そもそも性教育すら、ボクその授業受けてませんって言いかねない雰囲気だし。 とか考えてると、 「あの・・・。」 「・・・・・・。」 いつもお代わりする社が、空の茶碗を上げて何か言いかけた。 でも塔矢に無視されてそのまま手を下げた。 いっそう空気がとげとげして、オレは思わず首をすくめる。 塔矢・・・んな、ドラマん中の『浮気された妻』みたいな態度やめてくれよ。 でも。 コイツが碁以外にこんなに怒ってるのって見たことない。 もし社とヤりたかった、ってんじゃなかったら、・・・まさか、惚れたのか? それとも単純に、仲間外れにされた感じがして気に食わないのか。 仲間に・・・。 オレとコイツと、裸でケツ並べて順番に社に突っ込まれてる所想像すると ぞっとするような笑えるような。 でも実際は絶対やだ。 とか思いながら、茶をすする塔矢をぼうっと見ていたら、湯飲みの縁越しに睨まれた。 ずずー・・・・・・ごくり。 「塔矢。」 遂に耐えられなくなったのか、社が声を出す。 次に何を言うのか、オレは息を呑んで待ったけど、次に出てきた言葉は あまりにもストレートというか、それだけはないだろ、というか、 なんせ破壊力満載なセリフだった。 「昨夜・・・、進藤と、ヤッたで。」 !う・・・わ・・・。ぎゃあ。何言うんだよ。 いくらバレバレだとしても、そんな、直接塔矢に!色んな意味でそれ有り得ないでしょ! でも社はオレの方を見て、「大丈夫や」という風に頷いてくれた。 確かに事実上、これはオレの勝利宣言だとも言える。 オレとしたって言っちゃったって事は、オレを選んだって事だし。 だからおまえは諦めろって言ってるようなもんだし。 でも。でも。それって今言っちゃうのはマズいんじゃないかな〜。 恥ずかしいってのもあるし、塔矢プライド高いから傷つくんじゃないかとも思う。 世話になっといてさ。それって・・・。 とも思うけれど、心の奥底で、微かに優越感に浸る自分もいてちょっと痛い。 「・・・そう。」 塔矢は、意外にも静かに頷いた。 コイツとこういうシモ系の話って全くしたこと無いけどさ、何となく嫌がりそうとういか むしろ烈火の如く怒りそうな気がしてたからちょっと拍子抜け。 でも。続けけられた言葉に、オレも社も顎が落ちた。 「じゃあ、今晩は、ボクだね。」 「・・・・・・。」 な・・・・・・。 まさか平然とした顔で、そう返してくるとは。 オレを抱いたと、はっきり言った直後にそう言われたら、社も断れないだろう。 それに社だって、最初は塔矢狙ってた訳だから嫌な筈がない。 オレは・・・女じゃないから、身体で社を縛りたくない。 もうオレと関係出来たんだから塔矢と寝るななんて、言えやしない。 でも、どうしても血の気は引いていく。 今晩、社と、塔矢が。 塔矢の方は小学生時代から知ってるから、何か凄くヘンな感じ・・・。 具体的に想像出来ない。というかしたくない。 やめてくれ、と思う。 でもオレにそれを言う資格はない。 家に戻る為に広げていた荷物を鞄に詰めてると、塔矢がやってきた。 「どうした?寝間着は仕舞わなくてもいいだろう。」 「や、今日は帰るし・・・。」 「どうして。」 「どうしてって。」 今日は、オレ邪魔だろ?二人にとって。 「キミは、今日も、泊まるんだ。」 「え・・・?」 「当たり前だろう。帰るなんて許さない。」 その日の仕事も対局じゃなくて、講座のアシスタントみたいなんだったから良かったけど オレはずうっとぼーっと、考え事しちゃってた。 何でオレがあんなこと言われなきゃいけないんだ、ヤりたきゃ勝手にヤれよ。 オレは昔の男(って前の日なんだけど)として身を引くよ。 ホントはおまえらがヤるなんて、すっげ嫌だけど、仕方ないから忘れるよ。 と思ってるのに、同じ屋根の下に泊まれって? わけわかんねー! ・・・なんて独りキレつつ実は塔矢の気持ちもちょっと分かる。 自分の生まれ育った家の中で、赤の他人が四日もヤリまくってたらそりゃ 腹も立つだろう。(実際知ってたのは一日かも知れないけど) しかも、その内一人は自分が思いを寄せてる?相手。 部屋で寝ながら、苛々してたんだろうな。 だから自分がする時には同じ思いを味わいやがれ、ってね。 でも、それって塔矢らしくないよなあ。 アイツも嫉妬なんかするんだろうか。 いや、嫉妬したとしても、そんな悪趣味な仕返しを考えるようなヤツかな・・・? 結局頭が纏まらない間に、重い足取りで塔矢ん家に戻った。 ぼんやりとしたままメシ食って、風呂に入る。 その後、社の布団を塔矢の部屋に運ぶのかと思ったらオレの布団が隣の茶の間に運ばれた。 げ・・・。 こんな、襖一枚隔てた所で聞いてろって? 冗談、マジ趣味悪すぎ。 と思いつつも、ちょっと期待しちゃってたりもする、オレってどういう神経してるんだ。 塔矢が服を脱ぐ音。 塔矢の睦言。 塔矢の呻き声。 塔矢の喘ぎ声。 あー、やだ。 この上なく気持ち悪いのに、絶対聞きたくないのに・・・何か。 布団をかぶって耳を塞ぐ。 丸まったまま眠りに落ちて、気が付いたら朝になってたら良い。 そうしたらオレは、布団を畳んで部屋の真ん中にテーブルを置く。 台所に行くともう起きた塔矢が多分味噌汁作ってるから、おはよ、って出来るだけ 普段通りの声で言って、赤くなったら軽く小突いて、もし平然とした顔してたら 『昨夜どうだった?』って冷やかしてやる。 で、『オレすぐ寝ちゃったからいつおまえが来たか知らなかった』って。 言ってやるんだ。 ・・・と、思ってたのに、なかなか眠くならない。 いつもだったら布団に入ったら秒殺なのに。 困った・・・早く寝かせてくれ。実力を発揮してくれオレの睡魔。 全力で祈りながら、どの位経っただろう。 遠くで、微かにドアの音がした。 塔矢が、トイレから出てきたんだ・・・。 そのまま、何かごとごと気配があった後、ひた、ひた、と廊下を足音が近づいてくる。 うっわー、やだー、来たー! どうすっよ、塔矢、もうすぐ隣に着くぞ。 寝ろ寝ろねろネロ寝るんだオレ・・・! と思ってたら、足音が止んだ。 落ちる静寂。 さすがの塔矢でも、この期に及んで躊躇ってるのかな、いやでも気持ち分かるよ、 と。 スー・・・・・・。 障子が、開いた・・・? 音、近い感じしたけど隣の部屋だよな?と思いながら布団から頭を出すと、 目の前に後ろ手に障子を閉める塔矢がいた。 「・・・っ!」 思わず叫びそうになって、息を呑む。 え?な、なんで? そんなオレの様子に構わず塔矢の足首は、す、す、と布団の横まで来て正座をした。 着物だよ・・・竹みたいな模様がついた、白っぽい浴衣。 まずい。格好イイじゃんよ・・・つか、色気があるっての? 脱がせやすそう。 あー、やだやだ。いかにもヤりますよって。 多分塔矢自身はそんなつもりはないんだろうけど、何かやらしい。 「・・・何。」 「・・・・・・。」 「社、隣だぜ。」 「うん。」 なんだなんだ、と思ってたら、オレをじっと見て、・・・笑った。 笑った。 「・・・・・・?」 ・・・意味が分からない。 どうしてここに来て、しかも笑うんだろう。 どう考えたって、今、ここで、塔矢が笑う、意味がない。 早く隣行けよ、もうすぐ抱かれるおまえを見てたくないよ、 てゆうか、ああだんだん想像しちゃうじゃんかよ、 キモいってんだよ、 と心の中でだけ喚いてたら、塔矢は笑いを消してオレの布団を捲り上げた。 「・・・誤解してる、と思ってたよ・・・。」 「・・・・・・え?」 有り得ないほど近づいてくる、男の体。 既視感。 嘘だ、と思いながら体重を受け止める。 巫山戯てるのか?と動けないままに身体をまさぐられる。 「今晩ボクが寝るのは社じゃなくてキミの布団。」 「・・・・・・。」 「で、抱くのはボク。」 ・・・っえーーー! ナンですかナンですかナンですか・・・! 「だって、一昨日の朝、おまえ社と・・・、」 「何?」 「台所で、その・・・。」 「ああ・・・見られてたんだ。」 けろっと言う塔矢に・・・ オレは「それ」が全くの自分の勘違いだと悟ってしまった。 「あれは社がボクに宣戦布告して来たんだよ。『近々進藤を貰う』ってね。」 「〜〜〜!」 「だから『この家の中でそんな事は許さない』と言っていた所だ。 それで、帰ってから話し合って監視のためにボクの部屋で寝させるつもりだったのに、」 「そ、そだったの?」 「キミがそんなに簡単にさせるような男だったとはね・・・。 社に先を越されたのは口惜しいけれど、まあ道を作ってくれた思えば許せるよ。」 道・・・!道・・・! 「でもこれからは、ボク以外の人にはさせないようにね。」 ・・・ってーーっ! オレって、オレって、何なんですか?!塔矢はオレの何なんですか? オレ何したんですか?どこで間違ったんですか? つか、何でこうなっちゃったのか、全く理解できないんだけど。 ・・・ここは黙ってさせておくべきなんですか? −了− ※すみません。 このピカは「ボケ」ではなく「バカ」です。 一応落としてるつもりなんですが・・・怒らないで下さい・・・。 続きを書くつもりではいます。 |
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