中毒症 1 ・・・進藤とsai にどんな関係があるのか。 今まで進藤の謎の色々な断片が僕の目の前に提示されてきたが 僕はもう振り回されないことに決めていた。 問い詰めれば問い詰める程進藤は逃げていこうとするし、 何より「いつか話す」と言ってくれたのだから、それを待とうと。 決めていた。 筈だった。 しかし北斗杯で、秀策に対する驚く程の執着を見せられてからは、 自分を押さえきれなく・・・。 北斗杯閉会式の後、夕方の新幹線で社は帰り、進藤と僕も散会した筈だったが 夜になってまたその進藤が自宅に訪ねてきた。 「どうした、こんな時間に。」 「ごめん、今日はお疲れ〜。」 「ああ。お疲れ様。」 ゆらりと入ってきた進藤に、何となくどきりとしながら。 誰も居ない家に引き入れる。 「晩御飯はもう食べたのか。」 「うん。もう、森下先生に御馳走になって家に帰ったらまた豪華なの用意してくれてて。」 「それは勿体なかったね。」 「勿体なくない。食べたし。」 「え。」 何という事のない会話をしながら当然のように碁盤を出して。 軽く今日の対戦を検討していたら、真夜中になっていた。 「・・・えっと。今日、泊まっていく?」 「うん、悪い。」 布団もまだ合宿の時のままなので(明日干したり洗濯しようと思っていた) 別に何も構わない。のだが。 「・・・進藤。」 寝る前に、暗くなった部屋に廊下から呼びかけるとしばらくして明かりがつく。 しゅっ。 寝ぼけ眼で布団の上に半身乗ったままの進藤が、障子を開く。 「・・・ん?」 「寝る前で悪いけど、少し、いいか。」 「ん・・・。なに。」 滑り込んで障子を閉めると、進藤も布団の上に胡座をかいた。 本当は、もう寝ようと思っていた。 けれど眠れなかった。 耐えきれなかった。 聞いても進藤は、きっと答えてはくれないだろう。 それでも、来ずにはいられなかった。 「聞きたいことがあって。」 「ん〜、だからなんだよ〜。」 「キミと・・・sai の事。」 「・・・・・・。」 また眠そうに、目を擦る。 それでも僕には見えた。進藤の、ピクリと震えた指先。 「まぁたその話かよ〜。だから、」 「いつかって、いつだ。」 「それが分かるならいつかって言わねーっての。」 「言えないなら、言えない理由を教えて欲しい。」 「・・・・・・おまえさぁ。大概しつこいってか、」 そこで漸く目から離した手を進藤は、ふと真顔になって膝の上に置いた。 「・・・どうしても、知りたいワケ?」 「ああ。」 「じゃあ、おまえは代わりに何くれるわけ?」 「え・・・。」 「タダじゃ教えねーよ。」 「・・・・・・。」 「じゃ、お休み。電気消してくれよな。」 「待て!」 布団に入ろうとした進藤の手首を、思わず握ってしまった。 「待ってくれ・・・。」 「だからぁ。」 「僕に・・・あげられるものなら何でもあげる。僕が出来ることなら何でもする。」 「・・・・・・。」 「だから、少しでも、」 進藤は何故か急に僕を睨み付けて、ぐいっと手首を捻った。 振り払おうとしたのだろうが僕が意地でも離さなかったので、そのままバランスを崩して 仰向けに倒れた進藤の上に更に倒れ込んでしまう。 「あ・・・。すまない。」 手を突いて起きたが、進藤は寝たまま、まだ天井を睨んでいた。 「・・・何でもするって?」 「あ?・・・ああ。」 「自分が全部を投げ出したら、叶わない事なんて何もないって思ってる?」 「そんな、」 急に怒りだしたらしい進藤に戸惑ったが、自分が妙な事をいった覚えもないので 恐らくその原因は彼自身の中にあるのだろう、僕は関知しない事だ。 「ま、いいや。じゃ、お願いしようかな。」 「ああ何だ。」 「オレね、自分ですんのヤなんだ。」 「・・・?」 「だから。塔矢、してよ。そのキレイな手で。」 いきなり下着を下ろして、性器を目の前に露出させた。 「・・・・・・!」 何を、言っているのかやっと分かった。 が、信じられない。 公衆浴場でもないのに、他人の前でいきなり、 いやそれ以前に。 僕でも自慰というものがあるのは知っている。 それなりに義務教育で性教育というものを受けてきたし、 それは恥ずかしい事でも何でもない、とも言われてきた。 実際学校で、そういういやらしい話やあからさまな話に花を咲かせている連中もいたけれど。 けれどどうしても。 ・・・けがらわしい。 そう思わずには居られない。 何だか情けない。 自分は、そんな酒場で猥談を繰り広げているような下劣な男になりたくない。 大人になりたくない。 という言葉だけでは表現しきれない、汚れたくない、あんな汚い行為を 求める者になりたくない、そんな自分が許せない、 とにかく僕は性的な事柄一切が嫌いだった。 それは、いつかは結婚して子どもを作るためにはそうする事もあるだろうけれど。 それまでは体内から一滴たりとも精液を漏らすものかと思っていたので 先日寝ている時に下着を濡らしてしまった時は、それは落ち込んだものだ。 朧に覚えているその瞬間は、確かに信じられない程気持ちが良かった。 だからこそ、僕は恐れた。 知れば溺れてしまうのではないかと。 自分が変わってしまうのではないかと。 それで学校を卒業して同年代の男と付き合わなくて良くなったのを幸いに、 これまで以上に性的なモノを遠ざけて、きたのに。 「ねぇ。してくれないの?」 寝たまま、性器を露出させて。 無邪気な顔で進藤が問う。 さっきの口振りでは、普段はきっと自分でしているのだろう。 けがらわしい・・・。 感情が顔に出てしまったのだろう。 呼応するように進藤の笑顔も、邪悪なものになった。 「ん。じゃ、お休み。」 ぱっと下着を上げると布団をかぶって向こうを向く。 自分で仕掛けておいて、傷ついたのだろうか。バカらしい。 「待っ・・・。」 「・・・・・・。」 けれどそれは、今まで取り付く島の無かった進藤が始めて見せた隙。 恐らく僕を自分からひかせようという手段だとは分かったけれど。 自分の右手を見る。 今を逃せば、きっともう進藤に聞く機会を失う。 少しだけ、少しだけ我慢をすれば。 だって、自分が汚れる訳じゃないし恥ずかしいのは自分ではないし、 一つの作業だと思えばいいのだ。 そうすれば。 進藤と、sai の関係が・・・。 黙って布団の中に手を差し込む。 腰に手を触れると、進藤は嫌がるかと思ったが、そのまま仰向いた。 僕は自分から彼の下着の中に手を入れた。 初めて触る他人の性器は、柔らかくて湿っていて気持ちがいいとは言えないものだったが 顔を背けたまま不器用にさわり続けた。 「下手くそ。」 やがて天井に視線を上げたままの進藤が呟いたが、その直後からそれは 少しづつ質量を増して来て硬くなり、 嫌な事だが僕は少しづつ要領が分かってきて、さする事が出来、 進藤を高まらせる事が出来た。 「なあ、もうイかせて。」 「・・・・・・。」 「なあって。」 だから、触り続けているじゃないか。この棒を。 しかし進藤は、僕の手の上から自分の手を重ねて、勢い良く動かし始めた。 擦ると言うよりは、痙攣に近い動き。 しばらくして、「うっ・・・」というような呻きを上げた進藤の胸が持ち上がり、 僕の手は生ぬるい粘液で濡らされた。 僕は出来るだけ冷静な顔をして立ち上がったが、そのまま洗面所に行って 石鹸を付けて血が出そうになるほどごしごしと手を洗った。 部屋に戻ると、進藤もティッシュで後始末をしたのだろう もう何事もなかったように布団の上に座っている。 「・・・で。」 「え?」 「とぼけるな。キミとsai の関係だ。」 「ああ・・・。」 あれ程の代償を払ったのだから、教えなければ許さない。 自分でも、あそこまでできるとは思わなかった。 大したことをしたと思う。 「ん〜とな、確かに・・・最初におまえを負かしたのは、オレじゃなくて『さい』だよ。」 「・・・どういう事だ?」 答えずにニヤニヤと、笑う。 「どういう事だ。」 「今日はここまで。ありがとな。キモチ良かったよ。」 進藤は、そういうとパチンと電気を消して布団をかぶってしまった。 −続く− |
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