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サイエンス・フィクション3 塔矢の家に泊まった翌朝、オレは目覚めて・・・また倒れそうになった。 「とう・・・とう・・・や・・・・来て・・・。」 呼んでいると、弱々しい声だったにも関わらず、パジャマのままの塔矢が 来てくれた。 「どうしたんだ。しん・・・。」 塔矢もさすがに固まる。 オレのジャージの尻は真っ赤に染まり、シーツにも血がついていた。 腰から力が抜けて、立てないままに塔矢の足に縋る。 塔矢がしゃがんでくれたので、溺れかけてる人間みたいにその腕を強く掴んだ。 「オレ・・・何もしてな・・・。」 「落ち着け。どこか痛いか?」 「分から・・・いや、ちょっと腹が・・・。それより・・・。」 オレは、血が苦手だった。 カッターナイフでちょっと切っただけでも眩暈がする。 他人の血でも、自分の顔からさぁっと血の気が引いてく音が聞こえる位ぞっとするんだ。 そんな、オレの、足から、ああ・・・ 「大丈夫だ。多分これは・・・生理だ。」 「生理・・・?」 「ああ。今までなかったのか?」 「そう、か。セーリ、か。」 そう言えば、オレが女になってから丁度一ヶ月位か。 でも、でも、ホントにこんななのか? 生理って何となく血に似た別の何かなんじゃないかと思ってたのに、 これって完全に血じゃん! それに、保健の授業では聞いてたけど、ホントにこういう事があるなんて。 っていうか、全然他人事と思って聞いてたし、実際他人事だったはずだし・・・ 「何でもないはずだ。多分普通だよ。」 「でも・・・こんなに?」 「それはボクにも分からないが、多分そうなんだろう。とにかく下着を脱げよ。」 塔矢に縋ってふらふらと立ち上がり、ジャージのズボンとトランクスを下ろすと・・・。 また内股をつー・・・と赤い塊が落ちて行った。 「・・・・・!」 「ちょっと・・・我慢出来ないのか?」 「我慢の仕方、分からない・・・。ションベンと違って、勝手に出ちゃうんだよ。」 それだけ言うと、また塔矢に縋ってずるりと座り込んでしまう。 その背を支えてくれた塔矢の胸に、額を押しつける。 「怖い・・・怖い、塔矢。」 「大丈夫だから。きっと大丈夫。」 知りもしないくせにいい加減な事言いやがって・・・。 それでもオレは、初めて同年代の男にしがみついた。 それから塔矢はちょっと待っててくれと言って外出し・・・、 生理用ナプキンを買ってきてくれた。 「うわー・・・サンキュウ。ってか、恥ずかしかっただろ。」 「ああ。あの店には二度と行かない覚悟で買ってきたよ。」 それからブリーフを取りだして来て 「トランクスじゃなくて悪いが、これを取り付けるならぴったりしてる方が 都合がいいだろう。」 「悪いよ・・・こんなのまで・・・。」 「構わないさ。ああ、新品だから心配するな。」 それから塔矢は真剣な顔でナプキンの包装に書いた説明を読んでいた。 「どう?」 「う〜ん・・・使用方法がないな。何とかロングとか薄さがどうとかよりも 使い方が大事なのに。」 「取り敢えず開けてみたら?」 「そうしよう。」 おおっ! 小さい袋からがさごそ取り出すのかと思っていたら、開けただけで、ぺろん、と すぐに装着出来そうな状態になった。 「よく出来てるな。」 「ああ。」 「これが噂の・・・羽根、か。」 CMなんかでよく見る、羽根。 ナプキンがこれで鳥みたく羽ばたいてたりする、羽根。 「・・・羽根というよりは『のりしろ』の方が近いな。」 「うん。」 「大体使い方分かるよ。とにかくつけてみよう。」 ブリーフを広げるが、どうも広げにくい。 やっと広げたら今度は、 「あ。」 ナプキンののりしろ同士がひっついた。 「無器用だな。貸してみろ。」 塔矢の白い手が、ナプキンを取り上げる。 くっついちゃった羽根を、剥がそうとして悪戦苦闘して・・・引きちぎった。 「誰が無器用だって?」 「うるさい。粘着力がありすぎるんだ。」 結局その一枚は捨てちゃって、もう一個開けた。 今度は慎重に、二人がかりだ。 「塔矢、持ってて。」 「分かった。」 両手で広げてくれているブリーフの適当なあたりにぺたりと置き、 持ち上げて、羽根を裏側にひっつけた。 「・・・完了。」 「よし。」 「穿いて見るぞ。」 がさがさと、塔矢のブリーフに足を通す。 「あ・・・。」 「どうした?」 「おむつみたいで、何か変。」 「まあ・・・おむつみたいなものだからな。仕方ないよ。」 「いやー・・・すっかり忘れてた何か思いだしたような気がするよ。」 「赤ん坊時代の記憶?」 「うん。そう。何か懐かしい、このガサガサ感。おまえも穿いてみたら?」 「断る。それにボクは布おむつだったと聞いている。」 「・・・・・・。」 それからようやくオレ達は朝食にありついた。 オレは、仕事を休むことにした。 異変に気付いたのはトイレに行った時で、 オレはそれを塔矢に言ったものかどうか凄く迷ったけど、毒を食らわばというか、 もうここまで世話になってんだから、今更遠慮しても仕方ない。 「・・・塔矢。」 「何?」 塔矢は午後からの仕事の為に、スーツにブラシをかけている。 「ごめん・・・。ズレてた・・・ナプキン。」 目標を見誤ったらしく、ナプキンの端を濡らしてほとんどブリーフに付いてたんだ。 まだ全然場所が分かってない。 塔矢は溜息を吐いてまた新しいブリーフを出し、前のブリーフの一番濡れてる所に 真ん中が当たるようにして、慎重にナプキンを装着してくれた。 「ほんと・・・悪りぃな。」 「いや、ボクもあの場所でいいと思ったし。」 「悪手だった。予想したより後ろだった。」 「ああ。ついつい本当におしめの感覚だったからな、ヨミが甘かった。」 それからオレ達はまた、二人で溜息を吐いた。 オレは塔矢が仕事帰りにブリーフを買ってきてくれるのを待ちながら、一日寝ていた。 幸いにも三日ぐらいでほとんど出血しなくなって、でも日をおいて油断した頃にまた 出たりで、オレは結局何枚かのブリーフを捨てた。 勿体なくてこっそり洗おうかとも思ったけど、結構面倒くさかったし、落ちねえし。 女の人って一生で何枚のパンツを捨てるんだろう。 こんなの大変過ぎる。絶対嫌だ。早く戻りたい。 それにTシャツの上に厚手のシャツを羽織らなきゃいけないし、男子トイレ行っても 常に個室だし。 とは言え、女でいる間に「女のヨロコビ」を知るっていう希望は持ち続けている。 でも塔矢には断られたし、他の知り合いに頼む訳にも行かないし。 ナンパな男を引っかけるか・・・でもなぁ・・・なんて思いながらも、オレは一人になれる 自宅だけでしかくつろげない日々を過ごしていた。 でもくつろげる場所があるだけマシだ。 そう、オレは、家を出ていた。 六畳一間のアパートに最低限の荷物だけを持って。 実家からさして遠い所でもないけど。 「家が嫌になった訳じゃない、ただ一人の時間を取って碁の勉強に打ち込みたいんだ。」 そう言ったら母さんはちょっと涙ぐんでたけど、泣きたいのはこっちの方だよ。 ごめん、母さん。一緒に暮らしてたらこれ以上誤魔化せない気がするんだ。 本当は好き好んで掃除洗濯炊事なんてしたくない。 塔矢は「嫁入り修行か」なんて言ってくるし。 アイツの場合冗談じゃなさそうな所が怖い。 ホントに「結納いつにする」とか言って来たらどうしよう・・・。 −続く− ※やっぱり仲良し(ラブラブではない)のピカとアキラさんって書きやすいみたいです。 それより何より何かと顰蹙ですね・・・すみません。 信じて頂かなくて結構ですが、伏線。になる予定。 |
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