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戦国ヒカアキ3 緒方が置いていった物は、握り飯、干し飯、香の物、塩、水、そして日常品などの他に 紙や筆、地図など消極的ではあるが明らかにに戦の準備と思われる物資だった。 「あと、武器と捕虜はこれからだな。」 「油も多いな・・・?」 「ああ、オマエに沢山使っちまったから。」 こちらを見もせずに地図を広げながら言うヒカルに、また毛が逆立つほどの怒りを覚える。 確かに使われなければ私の身は只では済まなかっただろう。 だが足を無理に広げられて小唄混じりに指で塗り込められた、あの光景は。 必ずや私の生涯から消してやる。 その為にも、絶対貴様には。 私の神経を蝕むのはヒカルだけではなかった。 緒方が。 それから何度か来てヒカルと交渉、ではなく相談をしていた。 そう。 もう彼はヒカルに寝返ったのだから、私が戻れば塔矢に帰ることは叶うまい。 ・・・恩知らず。 だが、そんなことは構わぬ。 もう私の中では切った男なので。 だから、それは構わないから、だから、そんなに行きがけの駄賃のように、 ・・・私の中に押入って来ないでくれ。 「・・・え?」 「だから、緒方に・・・私を抱かせないで欲しいのだ。」 「へえ。嫌だったんだ。」 「当たり前であろう!」 「だってオマエ、凄くヨがってたじゃん。」 「!・・・・・・それは。」 「オレが何回抱いても人形みたいなのに、緒方がしたら一発でイってたもんなぁ。」 「・・・・・・。」 「これは緒方先生に指南して貰わなきゃと思って、見物させて貰ってたんだよ。」 「貴様は!どこまで愚弄すれば気が済む!」 「おっと・・・。自分の立場を忘れるなよ。ここはオレの城で、オマエは捕虜だ。」 思わず掴みかかりかけた私に、刃が向いた。 小刀一つ、隙をみて取り上げればいつでも逆転できると思っていたのだが、 ヒカルは・・・驚くほど隙がない。 夜行為が終わって休む時には私を柱に縛り付けて自分は横たわる。 だが、私が身じろぎをすると闇の中でもぱちりと目を開けるのだ。 窓から差し込む月明かりに。 寝ていたと思った者の目が光っているのを見るのは、あまり気味の良いものではない。 朝も私が目を開けた時には横たわっていても既に目を開いてこちらを見ていたりするし、 瞼を閉じたまま話しかけてくることもある。 こやつは寝ていないのではないか・・・? と思わずにはいられないが、顔色も悪くないので、どこかで休息を取っているのだろう。 分かっていてもつい女姿に騙されそうになるが、実に侮れぬ。 「何のお話でござりますか?」 緒方が床の入り口から頭を出した。 常に気配を殺し、如何にしてか音も出さずにやって来るこやつも誠に蛇蠍のようだ。 「おお。緒方か。如何であった。」 「お喜び下され。明午にはご家来衆総勢八十一名、この緒方が引率してお返しに上がる。」 「八十一、か。何人か脱走でもしたか。」 「・・・自害にございます。」 「そうか。家老の森下や伊角はおろうな。」 「は。ご健在にあらせられます。」 「今の内に顔を売っておけ。その方の朋輩になる面々であるからな。」 「左様でございますな。」 と、ここまで一気に話をした緒方がふと、油の浮いたような目で、私を見た。 「ああ、さっきアキラが、その方が上手すぎるから嫌だなどと駄々を捏ねてな。」 「ほう。・・・よろしいですか。」 「存分に致すが良い。」 「アキラ様が戻られたら、少なくとも当分はお目もじ叶いませんからな。」 「ふふふ。火薬が、まだであろう。」 「それは相当難しい取引になりますぞ。」 「そこがお主の腕の見せ所だ。」 「兎も角無事城を取り戻された暁には。」 ひたと私の上に据えたままであった視線を、今度はゆっくりとヒカルの上に移動させた。 「アキラの具合はいいのだろう?」 「ええ、それは。しかしながら私の見立てでは貴方様も。」 「・・・好きにするがいい。好色な男だ。」 ヒカルは自らのことを棚に上げて、苦笑する。 緒方がゆっくりとにじり寄ってきた。 自分の体が反応するのが嫌だ。 家臣であった者に犯されるのは死ぬほど嫌なのに、 緒方に舐められ、さすられ、女子のような喘ぎ声が漏れてしまう。 最初はこの汗は、声は、嫌悪と痛みから来る物だと自分でも思っていた。 だが・・・今となっては。 自分の体の中心に集まる血が。 私の意思とは関係なく「早く」と声なき声で叫ぶ体が。 嫌になるほど教えてくれる。 嫌に、なるほど。 意識が朦朧として来てあと少し、という思いだけが頭を支配し始めたとき、 緒方がふ、と動きを止めた。 醒めた目のまま私の顔を覗き込んで、少し首を傾げる。 ならぬならぬ、斯様な事を・・・! ほとんど泣き叫ぶ理性を無視して、私の手は緒方にしがみつき腰は勝手に揺れた。 緒方はすぐに動き始め、私は、達した。 「アキラ様。」 「・・・・・・。」 「本日の荷の中に新しいお召し物がございますが、お替えになりませんか。」 確かに、かかる乱れた姿は我が意に背く。着物も垢じみて来た事であるし ・・・所々自分のみならずヒカルや緒方の精の固まったものがこびりついてあるし。 しかしその汚れの主の一人に世話になるなど、許せぬ。 許せぬが。 「どの道帰城される前には着替えねばなりますまい。」 ・・・そう、であった。 このまま帰る訳には行かぬ。 余人にこの男の精にまみれた着物を見られる位なら。 「・・・着替えさせてくれ。」 「承知致しました。」 緒方は一旦階下に降りて着替え一式を持って上がってきた。 私がよろりと立ち上がると、少し顔を見て、 「・・・ヒカル様。」 「何だ。」 「その小刀をお貸し下さいませぬか。」 「何故だ。」 「アキラ様の髪をお切りになられたでありましょう。・・・しかしこのままではあまりに。」 自分では見えないが、相当酷い髪になっているのだろう。 だが今の所ヒカルが唯一私より優位に立つよすがとなっている小刀を貸せと言っても 貸すはずがない。 と思ったがしかし。 「あい分かった。」 ヒカルはあっさり言うと、楼の入り口に刃物を置いて、梯子段を降り始めた。 「下で待っているから終わったら落とせ。」 ・・・なるほど。それでは不意の打ちようがない。 兵糧も武器も下の階であるから立て籠もることも不可能だ。 緒方が一人で小刀を持って降りたら・・・。 いや、降りる途中に長刀で刺される。 飛び降りても、幾ら太刀の達人であれ長刀を持ったヒカルには敵うまい。 打つ手無し、か。 ヒカルの方が私よりも先読みが早い。 ここ数日の無体に、私の回転も鈍っているようだ。 そういえば最近頭の中にうっすらと霞がかかっているようで・・・快感に耐える気概さえ、足りない。 そのような事で自分の衰えを知るとは。 自嘲した私を不思議そうに見た後、ヒカルは階下に降りて行った。 緒方がしゅる、と高い音をさせて私の帯を解く。 私は何の感慨もなく、その骨の太い白い手をただ茫洋と見つめる。 肩からするりと布が落とされた時、緒方がいやらしい目で見ておるやも知れぬと思ったが もうどうでも良かった。 「お座り下さい。」 ぺたりと座ると、緒方が背後に回る。 膝を突いた音がし、後から伸びた冷たい指が頬を撫でた。 これが刃であったとしても、きっと私は動かなかったであろう。 指はそのまま髪を掬い、静寂の中耳元でざり、という音だけがやけに大きく響く。 「・・・緒方。」 「はい。」 「先程ヒカルから小刀を取り上げたのは、隙を見て取り押さえるつもりであったか。」 ざり。 「無理でしょうな。あの方には。」 「・・・そう、か。」 ざり。 ばらばらと髪が床に散って行く。 「その方、」 ざり。 「何故塔矢を裏切った。いや、何故、」 私を抱いた。 緒方は答えず、くっくっと笑った。 以前の私ならきっと平手打ちを喰らわせているであろう、とぼんやりと思った。 髪を整え終わって私を立たせた緒方は、一糸纏わぬ私の周りをゆっくりと一周巡って 「少しお痩せになられたが、相変わらずお美しいですな。」 と言って近づき、口を吸った。 ヒカルの前ではしない事だ。 ぬめる舌が唇を割って入ってきたので思わず歯を食いしばる。 しかし、そうだ食いちぎってやろうと思いついて力を緩めた時にはその顔は離れていた。 「お着物を。」 何事もなかったかのように淡々と荷を解いて着物を私の肩に着せ掛ける。 私は人形のように成すがままだった。 同じ事でも今までは自分の意志を持って着替えさせていたが、 今日は本当に、人形だ。 「アキラ様。」 「・・・・・・。」 「先程思いましたが。」 先程、とは何時の事だろう。 「いつもヒカル様にはよくして頂いておられぬので?」 ・・・一瞬何の事を言っているのか分からなかった。 だが、私を抱いている時に止まった緒方がそのような事を考えていたのか、と 思い至った途端にカッと血が上り、今度は思いきりその顔を打っていた。 「ご無礼をば。」 緒方はニッと笑って赤くなった自分の頬を軽く撫でる。 「・・・・・・!」 「何故、そのような事が分かったかというお顔ですな。」 「その方、」 「何度も致された跡があったが、それで達していたら貴方様はあのようには」 乱れまい、と続く前に再び打ち下ろした手が、今度は頬の手前でピシッ、と鋭い音を立てる。 緒方の手の甲に止められていた。 「困りますな・・・。顔を打つのは日に一度にして下され。」 私は、千切れるほど唇を噛んだ。 「貴方様も楽しまれては如何です。お辛いでしょう。」 「・・・うるさい。」 「まあ嫌がるのを無理に手込めにするのもそれはそれで興が乗りますが。」 「口を慎め。」 「その内私がヒカル様に教え込んで差し上げますから、貴方様も」 「黙れ!!貴様は、貴様は、」 「次はヒカル様のお召し替えでも手伝うと致しましょう。 いつまでもあのナリでは目の毒だ。」 怒りに眩んだ視界の中、緒方が笑いながら小刀をぽおんと放る。 それは一度床に跳ねた後、からからと転がって穴に落ちた。 「・・・ヒカル様。」 「オレは着替えくらい自分で出来るぜ。」 上がってきたヒカルは、既に着替え終わっていた。 真新しい着物と、水色の、打掛に。 「ふふふ。お似合いですよ。」 「オマエにそう言わせたくてこれを着た。」 ヒカルは笑いながら童女のようにくるりと回る。 一体、何のつもりだ。 だが、緒方の顔を見て合点がいった。 平静を装ってはいるが、目が僅かに情欲に濡れている。 女物を選ったのは緒方の欲望を煽る為。 自分で着替えたのは肌を見せぬ為。欲望を煽り過ぎぬ為。 緒方の情を私に移らせぬ為、自分の体に繋ぎ止める為。 ・・・明日、裏切らせぬため。 どこまでも己の身さえを策略の道具として。 男の風上にも置けぬ輩だ・・・・・・。 その翌日つつがなく捕虜が戻され、ヒカルは城内に降りて家督を継いだらしい。 塔矢の兵が去ったのか、高い窓や入り口からもざわめきと活気が漏れ伝わって来る。 私はまだ楼に押し込められたままだった。 だがヒカルは上がってこない。 久々にゆるりと一人で休める事に喜びを禁じ得なかった。 今頃彼は、緒方に体を開いているのだろうか。 どちらでも良い。 ・・・今はヒカルを、忘れたい。 −了− ※ええっと、またしてもおくとさんの絵に触発されて大急ぎで書いたので、 色々不具合があるかも知れません。 緒方さんがアキラさんの身を整えている萌えイラストはタコツボへようこそ!!へ! ちょっとこの文章はおくとさん設定とずれてるけど。すみません。 あとピカの幼少の頃のエピソード&イラがまたイイんだv 佐為ちゃんが・・・! |
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