戦国ヒカアキカラー
ムラムラ立つ(笑・おくとさん談だからね!)






美しい!
血に染まったヒカル姫の衣装にヤバ萌え。


・・・以下はキスケがこの絵に触発されて付け足した妄想文。
つつしんでおくとさんに捧げます。勝手に。

んが、ステキ絵のイメージを激しく損なう恐れがありますので、お気をつけ下さい。


・・・・・・・・・








くっ!


また刀が駄目になった。

血糊と刃こぼれで使えなくなった脇差しを振り捨て、
そこいらに転がっている敵の骸の腰から適当な刀を抜く。


抜き様に横から斬り込んで来た士の首を刺し、また走る。




やがて、遠くから勝ち鬨の声が聞こえた。
方角からして、恐らく緒方あたりが城主の首を取ったのだろう。

手柄を取られた、と思ったが、私とて嫡子、次子の首を取ったので、上々だ。

血糊で滑らないように気を配りつつ、無防備な残党を薙ぎ払いながら更に廊下を進む。
行く手には楼閣に登るであろう梯子段があった。


「北の方はまだ見つかっておらぬな。」

「ええ、恐らくこの上でしょう。」


芦原が先に立って段を登る。


「気をつけてくれよ。」

「分かっています。」


しかし上の階には誰一人居なかった。
その上の階もがらんとしていて、人の気配がない。

数階分登ったあたりで、芦原が


「恐らくこの上が、最上階です。」


と顔を引き締めて梯子段を登っていった。
やがて


「アキラ様・・・・・・。」


呼ぶ声に登楼すると


「これは。」


窓から射込まれたのであろう、何本もの矢が壁や床に刺さっており、内一本が
護衛らしい兵の眉間に突き立っていた。

その周囲に三人ほどの兵が倒れ、奥では


「・・・無惨な。」


北の方らしき女性を中心に、数人の腰元らしき女人が自害して果てていた。
主亡き今、抵抗さえせねば女子どもの命まで奪いはせぬものを。


「アキラ様!」


袖を引く芦原の視線の先を見ると、奥で座ったまま蹲って果てていたと見えた少女が、
身じろぎをした。


「そなた、」

「お情けを、賜りとうございます・・・。」


正座をして、三つ指を突いている。その襟元にも全く乱れがない。

まず思ったのは、なんと度胸の据わった女子だ、ということだった。
陥落した城の高楼で味方の死体の山を前にしているというのに。
いきなり現れた敵将に向かって、このような。


「・・・面を上げられよ。」


ゆっくりと、上体を起こす。
よく見れば他のお付きの者とは明らかに衣装が違う。
側室か、いやそれにしては若すぎる。
城主の好みは知らないが側室でないとしたら、


「城主の、子か。」

「はい。」

「名はなんと申す。」

「ヒカル、にございます。」


これは珍しい。


「光の君、か。古の色男の異名を持つのがかような美女とは。」


半分くらいは嘘だった。
美女、という類ではない。どちらかというと可愛らしいと言える姫君だった。


「して情けを、と申されたが、私は塔矢の嫡男、そして兄君達の首を頂いた。
 憎くは、ないのか。」

「・・・憎い。」


そこで初めて姫は私と目を合わせた。
その眼差しに恐ろしいほどの光が宿る。

それが、愛らしい顔にあまりにも似つかわしくなく、ぞくぞくとさせる程のもので。
一介の、しかも年端もゆかぬ女人のものとは思えぬ、歴戦の武将のような眼。

しかし私はその瞳に惹かれた。



彼女がもし、
憎くなどない一目で私に惚れた、
などと言ったら問答無用で切り捨てるつもりだった。

それが嘘なら我が身可愛さの大嘘吐きだし、本当だとしたらうつけだ。
私はどちらも嫌いだ。

だが、彼女は違った。
情けを掛けろと言った側から私を悪鬼のように睨み付け、憎い、と言い切った。


「その憎い敵将に、何故我が身を差し出すような真似をする。」

「ここで私が死んだら血が絶えてしまいます。」


けろりとして言う所も気に入った。


「その方、私の側室になるか。」

「アキラ様!」


実を言うとこれほどの女、正室にしたい所だ。
年の頃もほぼ同じで丁度良いだろう。

だが、それを決めるのは父上だ。
徐々に力を付けてきた塔矢家、まだ決まってはおらぬが、
私に生まれてもいない姫を差し出したい、と言っている隣国もあるほどで
いずれとも決めかねているという現状だ。

私がこの姫をねだれば、血筋も良いし正室を許してくれるかも知れないが、
確約できないことは言えない。


「そは亡国の身には勿体なきお言葉なれど、貴方様はお世継ぎでいらっしゃる・・・?」

「左様。不自由はさせぬ。」

「その、ご兄弟はいらっしゃらないので?」

「姉はみな嫁いだし、一人いた兄も先の戦で戦死した。」

「弟御や妹御は。」

「おらぬ。弟はともかく妹はいたとしても関りなかろう。」

「失礼ながらご側室の・・・。」

「くどい!」

「念のためにございます。折角お側にお呼びいただいても跡目争いなどで亡くなられては堪りませぬ。」


忌憚のないはっきりとした物言いも小気味良い。


「父の子で、男は今や私一人。その懸念はない。」


父の愛した「女性」は母一人だったので。
側室の腹違いの兄などというややこしい者はいない。


「それは、大切な大切なお世継ぎにございますなぁ。」


少女、と言ってもよい姫が、またその愛らしい顔と周囲の血の海に
相応しからぬ凄艶な笑みを浮かべた。






「芦原。下に行っておれ。」

「は。・・・しかし緒方殿でも見えたらどのように申し上げれば。」

「そのまま申せばよい。美しい姫君を見つけたから味見をしておると。」


緒方の口調を真似た物言いに、芦原が顔をしかめる。
と、緒方が屋敷に詰めた夜に、その離れから聞こえたあられもない声を思い出して私も眉をしかめた。
このようにつつしまやかな姫があのような声を立てるとも思えぬが


「一番下の階まで行っておれ。どうせ他に入り口はない。」

「しかし。」

「案ずるに及ばぬ。どの階にも人の気配はなかった。」

「・・・承知致しました。」


下まで行けばどんな声を出しても届かぬだろう。

こんな時に芦原はよい部下だ。私の言った通りにしてくれる。
これが緒方などであったら一番下まで行った振りをして、すぐ床下で聞き耳を立てていそうだ。
それを見つけて咎めれば「万一のことがありますゆえ」などとしゃあしゃあと抜かすだろう。





芦原が鎧を鳴らしながら梯子を降りていく気配を注意深く聞き、
それが消えたところで、改めて姫に向き直った。

取りあえず兜の緒を弛めて、脱ぐ。
乱れた髪を振り払うと、姫が少し意外そうな顔をした。


「お若いの、ですね。」

「不満か。」

「いえ・・・。」

「まだ私が憎いか。」

「はい。」


姫の兄たちの最期を思い出す。
恐らく世継ぎであったろう冴えた目の長兄。
私より少し上だろうが腕白小僧の面影を残した次兄。


「立派な死に様であった。」

「はい。」


姫が少し俯いた。
泣いているのかと思ったが、その膝に水は落ちなかった。





「・・・自分を憎んでいる女を抱くのは怖い。」

「お戯れを。」

「・・・・・・。」

「懐剣など持っておりませぬ。ここで貴方様を亡き者にしたら、私の命もない。」


こわい事をさらりと言う。
思った通りの女だ。

長い袖に隠れたままの手首を引き、腰を引き寄せる。
思ったより手首が骨張っているか・・・?

構わず顎を押さえて唇を重ねた。

実は女人と口を合わせたのは初めてだが、その柔らかさに驚いた。
思わず眼を開けると、驚くほど近いところに淡い色の瞳があり、揺れている。
目を閉じないのだろうか・・・と思ったが、このような事に作法などないのであろう。


顔を離し、熱くなった頬をみられないように背けつつ帯びた刀剣を全て外す。
護衛の死体を片手で一つ拝んでから、その向こう側に丁寧にまとめて置く。


姫の所に戻り、さてどうしたものかと思ったが、また三つ指を突くので
「うむ」などと訳の分からぬ頷き一つ、そのまま押し倒した。

初めて人を殺めた時同様、大人の男になったような、気がした。





怯えさせぬように髪を撫で、その耳に囁きかける。
新枕には無粋な話かも知れぬが


「・・・この城を落としたのは騙し討ち、のような事になってしまったが、怨むか。」

「それは・・・この乱世、仕儀なき事でしょう。」

「そうだ。」


物わかりの良い女も好きだ。

鎧は脱がなくても良いだろうか、このような場合だからお互い袖を抜く必要もあるまい、
と計算しながら、香の匂いの襟元に顔を近づける。
打掛に手を差し入れて腰を抱くと、袖からするりと手が出て、私の首に回された。
ちらりと見えた、色は白いが、少し大振りな手。
何か違和感があったような気はするが、初めて触れる女体に夢中で追求する暇もない。

うっとりと伏せられた睫毛に誘われてもう一度唇を重ね、裾を割り・・・。


「・・・そなた?」


突然迸った殺気。
万力のように首を締め上げた腕。
咄嗟に首を捩って逃げ、刀を手探りに探すが、さっき自分で片付けた、と気付いて
血の気が引いた所に長刀の刃が飛んでくる。
危うく飛び避けて尻を付いた目の前に、仁王立ちになった、

姫・・・?

武器を探して低く走るが、鞘から出ていてすぐに使えるものはない。
また突き出された刃を避け、辛うじて柄を掴んだが、そのまま押されて死体に躓いた。

更に追って来る刃を避けて転がると、さっきまで私の被っていた兜に突き刺さり
冷水を浴びせられたように総身が凍る。


「何の・・・、」

「よっ、と。」


姫は兜から刃を抜くことを諦めて、背後からもう一本の長刀を取りだし、
両手で構えてニヤリと笑った。
その手に、太刀の修練で出来た胼胝。先程の違和感。

そしてはだけた足、

姫・・・。

では。




「貴様・・・男だな?」

「ああそうだよ。口まで吸って気が付かなかった?」


なんという、事だ。
つい先程まで大気までもが桜色に見えていた。
希代の女を手に入れたと思っていた。

それなのにその女は、
一瞬の間に私の命を奪わんとする少年、いや若き刺客に変貌した。

いざって逃げた私の背に、板壁が当たる。


「勝負あった、な。」


少年が片手で振りかざした長刀に思わず強く眼を瞑ると、がんっ、と音がして
首の横一寸の所に刃が突き刺さった。


「さっきも言ったろ?殺さねぇよ。」

「何故そのようななりを・・・。」

「切り札は隠しておくもんだぜ。」

「切り札。」

「そ。親父様はともかく、アンタがうざい兄者達の首を取ってくれたんだろ?感謝するよ。」

「・・・・・・隠されていた三番目の男子、と言う訳か。」


迂闊だった。
戦略に優れた嫡子、武術に長けた次子、その二人だけがこの城の跡取りだと聞いていたから
城主以外はまずその二人の首を取れば安全だと思っていたのだ。
よもや女装させてまでもう一人隠しているとは。
勝って兜の、とは正にこの事か。


「そういう訳。この乱世、騙し討ちは有り、だろ?」

「・・・・・・。」

「でも今回の事がなければオレは一生日陰者だった。」

「何を言っている。この城は落ちたんだ。一人で何が出来る。」

「そっちこそ何言ってんだよ。こっちには『オマエ』がいるだろ?」

「・・・・・・。」

「オマエを人質にして、捕虜を解放させて・・・いやまずは兵糧だな。」

「無理だ。父はそれ程甘くない。」

「そうかな?男兄弟がいれば見捨てるかも知れないけど、オマエたった一人の世継ぎだろう?
 だから弟妹もいないか確認したんだよ。
 オマエの親父がオレの親父と同じ事を考えていないとは限らないからな。」


確かに。父は、いや国は私を大切にしている。
今回だって絶対勝てる戦いの筈だったから私を寄越したのだ。

なのになんと不様な。
砂を噛む思い。

弟がいれば。
いや兄が生きておれば、この場で腹を掻っ切ってこの者の目に物を見せてやろう物を。 



「・・・戦略も知らぬ姫育ちの男が、一国の主になどなれるものか。」


がっ!


「うっ・・・。」


今度は肩を足蹴にされ、そのまま踏みつけられる。
露わになった少年、いや既に敵将の、白い腿。
つい先刻まで私はこの体を征服したつもりになっていたのだ。

なんと、愚かな。


「オレはね、剣も立つし、戦略も囲碁や将棋で覚えた。
 特に碁はもういないけどいい指南役がいたから強いぜ。城内では負け無し。後でやってみる?」

「・・・そんな棋上の遊びが通用するものか。」

「そっか?まあこれから実践でやってみるさ。」


目の前が暗くなる。
最初は姫・・・いや、彼を殺せなくても隙を見て逃げ出せばなんとでもなると踏んでいた。
そうでなくとも一人で国を立て直すなど、絶対無理だと思った。

だが、話を聞いている内に、この者ならやってのけそうだ、と思えてきてしまった。


「通信役はさっきの芦原って奴だな。オマエをここに置き去りにしたんだから、
 さぞや肩身が狭かろう。今度は慎重に動くだろうから丁度いい。」

「・・・・・・。」

「オマエの配下、いつ気付くかな?オマエが女にどの位時間を掛けるか知らないけど、
 まあ一刻半は待つだろう。・・・それまでどうする?」


ヒカルは私の首の横の長刀を引き抜くと、その刃でさわり、と頬を撫でた。
ぞっとして思わず顔を背ける。


「・・・オマエ、キレイな顔してるよな。」

「何の、話だ。」

「立場逆転。」

「・・・・・・。」

「オレの側室にしてやろうか?・・・って事。」




そう言い様に私の鎧の肩紐に刃を差し込んでぶち、と切り、

ヒカルは高らかに嗤った。










−了−









※おくとさんのステキ絵に駄文を・・・。
  いやあ、考えている間にちょっと違うかな、と思い始めたのですが妄想は止まりませんでした。
  既にヒカアキでも何でもないかも知れませんが、
  二次創作の二次創作(三次創作)なのだから寛容な心で許しましょう。

  言うまでもありませんが、パラレルワールドの戦国時代。
  言葉遣いとか刀の種類とか色々気にしないように。




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