リヴォルバー 3 またベッドに横たえられたボクの、体の上を進藤の舌が這う。 もう感じている演技をする気にもなれないので出来るだけだらりと力を抜くが 偶に、腕の内側や脇腹を舐められると勝手に体の一部がびくん、と動いた。 不快だ。堪らなく不快だ。 くすぐったい、というような甘やかなニュアンスのある感覚ではない。 熱い・・・そう、熱いのは熱い。 けれど熱を別にすれば毒のある蛇にゆっくりと這い回られているというイメージが 一番近いかも知れない。 動いてはいけない、刺激したら噛まれる、と思いながらも 反射神経が作用するのだ。 目の前に尖ったものが近づけば瞼が閉じる。 それと同レベルで、ボクは喉を反らし、息を吐く。 動かされるのが嫌なのか、何かに縋りたいのか、指が勝手にシーツを掴む。 「あ・・・」 ・・・また。「自分」が「塔矢アキラ」から離れていた。 空中に浮遊し、「塔矢アキラ」が汚されていく様を諦念に近い境地で眺めている。 それに気付いた瞬間、堪らない焦りからボクは進藤の顔を平手打ちしていた。 「つぁっ!」 大人しくしていたボクが前触れもなく突然反撃したので驚いたのだろう。 頬に手をやった進藤は、目を見開いて子どものような無防備な顔を見せた。 こんな男が。 この塔矢アキラを汚すなんて。 女みたいに扱うなんて。 許せない。 そんな傲慢とも言える思いがこめかみを、目の周りを熱くする。 「てめえ!」 上にある進藤の顔が、ばさりと振り上げられた前髪が、妙に鮮明だ。 鼻の付け根と眉の間に寄った皺が彼の怒りと狂気を現している。 などと冷静に分析する自分がいる。 救われない。 ああ、 そうだ。 最初から、銃を拾った最初からそう言えば彼の目は普通ではなかった。 けれど今は、ボクの眼だって負けてはいないんじゃないか? 二人で狂ってどうするんだ、後戻り出来なくなるぞ、 まだ頭の中で叫ぶそんな声もあるが、別の声が 「どの道これ以上最悪という事はない」と答えた。 「ぐっ、」 馬乗りになった進藤が、両手で構えた銃をボクの唇に押しつけてきた。 強く歯を食いしばるが、前歯をへし折らんばかりの勢いで体重を掛けて来る。 「う・・・う・・」 「口開かねーとホントに歯、折れるぜ」 そんなことを言われて開けるものか、と思って耐えていたが やがて歯の根元がぎし、と音を立てたような気がして仕方なく顎を下げる。 勢い余って入り込んできた銃身が口の奥まで入って「がっ、」と激しく えづいてしまった。 上顎の奥が傷ついたらしく、生暖かいものが喉の奥に流れて来て少し咳き込む。 「いい格好だぜ、塔矢」 言いながら進藤は腰を揺らし始めた。 右手を銃から離し、自分の性器と・・・ボクの性器を一緒に握り込む。 「ぐ、ぐ・・・」 彼の性器はとても熱くて硬くて。 気持ち悪い・・・と言いたいのに声が出ない。 舌先が銃身を舐め、閉じることを許されない口の端から唾液が垂れるばかりだ。 「泣いてる?」 吐き気が催した涙が目尻から流れ落ちた。 泣いている訳じゃない、という意志を込め目に力を入れて強く睨む。 何故か進藤のものが、一層硬くなってぴくりと揺れた。 目が、三日月型に細められる。 残忍な笑顔だ。 「・・・なあ。それオレんだと思って舐めてよ。 たっぷり、濡らして」 けれどその声は囁くように、甘痒い程に優しく。 「そしたらそれを、おまえのケツにぶちこんでやるよ」 「・・・・・・」 相変わらず合わされた腰は揺れている。 「気持ちイイと思うぜ。きっとおまえ、もっと泣くと思う」 妙にコリリと、軟骨が摺り合わされるような感覚にいちいち感電したように 腰が震えた。 思わず吸った息を、止めたときに胸がひんやりとして気化熱を知る。 気付かない間に全身汗ばんでいたらしい。 「そんでおまえがイった瞬間、引き金を引いてやる」 ああなんだろう。 さっきから進藤の言葉が、頭に入って来ないのに全身の血がざわざわと騒ぐ。 甘い痺れが広がる。 そのまま射精してしまいそうな感覚に、思わず眉を顰めた。 「最高だよな。最高の快感の中で、本当に昇天しちゃうんだ」 何かに耐えられなくて、前歯で強く銃身を噛む。 当然ながら僅かも撓まない。 その事に酷く焦れて、銃口の中に尖らせた舌を突き入れた。 それは予想したような滑らかな内壁ではなく、人工的に刻まれたのであろう溝で 一面覆われている。 そのざらざらとした感触にボクの舌は狂喜した。 舌先でなぞっては何度も何度も出し入れをする。 口の中が、機械油とスチール臭に侵される。 なんだこの興奮は。 もう、何が何だか分からない。 ただ舌先と唇の感覚だけに縋り、制御も昇華も出来ない何かが、 体中を迸る・・・。 しかし次の瞬間、銃が引き抜かれた。 唾液が糸を引く。 銃口にあった突起が、上唇を切りそうになる。 「冗談だよ」 言う割に笑いもせず、むしろ苦しげな切なげな進藤を、見上げる自分はきっと 不満げな目をしているだろうと想像が付いた。 口を半分開いたままだと気付いて、慌てて唇を引き締める。 「でも、本当にやりたくなる程、おまえ、色っぽすぎ」 「な・・・」 だめだだめだ。頭が回転しない。 彼は何を本当にやりたくなると言うのだろう。 頭が回らないのは、先程から全身を蝕むこの小さな苛々たちのせいだ。 どこかに向かいたいのに迷っている。 迷いながら皮膚のすぐ下を当て所もなく彷徨っている。 けれどそれも、銃身を引き抜かれて進藤が動きを止めてから、目的を 見失ったかのように熱を冷まし、動きが緩慢になってきた。 それに少しホッとする自分もいる。 逆に焦る自分もいる。 進藤と、これ以上深く関わりたくない。 けれどもう少し続けていれば、この苛々の行く先が分かったのに。 「そんなおまえ見られただけでも、オレ、すげー幸せかも」 早く、熱を冷ましたい。 早く、熱を取り戻さなければ。 「オレで我慢しろよ、な?」 膝が太股の間に入ってきて、脚がこじ開けられる。 内股に硬い肉が当たって、ボクは彼が何を考えているのか悟り 僅かに現実に引き戻された。 「離、せ・・・!」 「やだ。だっておまえ、」 「!」 ボクを包み込む、熱い掌。 指がそうっと輪郭をなぞり、軟骨のように硬く熱くなっていたのは 進藤の物だけではなかった事を思い知らされる。 同時に、散らばり冷めかけていた苛々が熱を取り戻して集まってきた。 ああ、ここに集まるべきものだったのか・・・と納得すると同時に 自分の物が進藤の手を圧迫し始めた事に、どうしようもない羞恥を感じた。 「ああ・・・温かい・・・」 「やめろ・・・やめてくれ・・・」 言いながらも我ながら何て説得力がないのだろうと思った。 何故と言って、その瞬間先の部分に羽で撫でられるような感触があり、 ぬるりとした粘液を広げられると共にぞくりとして腰を突き上げてしまったから。 「濡れてる・・・すごく」 固く目を閉じると、指が離れてぴちゃ、と湿った音がした。 「濡れた」指を、口に運んでいるのだろうと思うとまた顔が熱くなる。 しかし湿った指は戻ってきてまたボクを弄び始め、やがて開いた脚の奥の方に 侵入した。 「だめだ・・・そこは・・・」 そこは?何を言っているんだ・・・とまだ思う気持ちもあるが もう今更だ。 ボクはもう、進藤に許している・・・感じている。 いつから、いつから、繰り返される疑問符。 でも考えてなどいない。 出口を求めて身体の中を滾る何かのイメージに、猫だの蛇だのが浮かんで消えた。 「・・・うっ!」 不必要なまでに濡らされたと思った尖端が、それでもまるで凶器のように 強引にねじ込んで来る。 「やめろ・・・!無理だ!」 「力、抜いてよ・・・」 鎖骨に強く押しつけた額の下からくぐもった声がする。 まるで彼自身が犯されているような苦しげな声だった。 ボクは、鎖骨の痛みに集中して下半身の辛さをやわらげるように 全身の力を抜く。 受け入れる為ではない。 自分が楽になるためだ。 するとずるり、と太い部分が入り込んできた感触があった。 「つ・・・」 「・・・どう?痛い?」 痛い。 けれど。 「あ、あ、」 喘ぐのは、彼だ。 身体が深く引き裂かれると共に、入り込んでくる彼の快感。 ・・・共振する、ボクの快感。 「くそっ!きつ・・・」 少しづつ、動かす度に縋るようにボクを抱きしめる。 眉を寄せて頭を振りながら、快感に耐えている様は女性のようで。 そう思っているボクも、急激に追い上げられる今まで感じたことのない感覚に 精神がばらばらになりそうで。 「進藤!やめてくれ!」 「やだ!ヨすぎる・・・!」 痛いんだ。苦しいんだ。 身体の内側の変なところをキミの尖端に攻撃されて、爆発しそうなんだ。 「抜け!」 脚を撓めて彼を蹴る。 筋肉に圧迫されて内部が捻れ、また波に翻弄される。 入り口の痛みとは別にうねる物はあるけれど こんなのは、快感ではない、そんなものはとっくに通り越して、 「ああっ!」 もう、彼の喘ぎ声なのか自分の声なのか分からない。 進藤は汗だくで、機械仕掛けのように小刻みに腰を振るわせながら 銃口を顎の下に押しつけてきた。 その目からは、未だ放出し得ない欲望が涙となって零れ出している。 「もう少し、我慢して、もう、イくから、」 我慢できない。これ以上続けたら壊れる。 こんなのには耐えられない。 苦しい。息が苦しい。 このまま延々と犯されるとしたら、 感じ続けなければならないとしたら それは地獄だ。 ボクは両手で銃身を押さえ、銃口を自分の額に押しつけた。 自分の目からも欲望が溢れている。 「塔、矢・・・」 「ころ、して、くれ」 本当に、今殺して欲しかった。 死ぬ瞬間、射精出来ると思った。 「・・・分かった・・・」 引き金に掛かった進藤の指に力がこもる。 腰のピッチが上がる。 「あっ、あっ、あっ、あぁっ・・・」 内側の、どうしようもない部分が激しく擦られ、快感は遂に痛みに至り、 それを越えてまた別の種類のとてつもない、凄烈な、 「ひっ・・・!あぁーーーっ・・・」 目の前も頭の中も真っ白になって。 身体の奥で一発の銃声が響いたような、気がした。 −続く− ※エロの時は別人。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||