なつやすみ3
なつやすみ3








「藤崎さん・・・。」


藤崎さんは「しーっ」と言うように、唇に人差し指を当てた。


「よく寝てるわ・・・。」


愛おしそうに、進藤の寝顔に目を落とす。





その寝顔は以前と全く変わらず、ボクは胸が締め付けられるようだった。
こうして見ていると、普通の高校生カップルがいちゃついているようにしか見えない。
ボクには、出来ない。
こんな風に、進藤と触れ合ったり。
手を、繋いだり。


やがてさあっと木々を揺らした爽やかな風に、進藤は目を覚ました。


「あ、あれ?オレいつの間に寝てたの?あかり。」


・・・一瞬、記憶が戻ったのかと思った。

だが、ボクが自分の事を「とーやくん」でなく「塔矢」と呼ばせたように、
あかりさんも以前の呼び方で呼ばせているのだろう。
気持ちは分かる。

砂が水を吸うように短期間に色々な事を学び、
表面上だけは、以前に近くなっている進藤。

でも、それはボク達がそうしているだけで、進藤がそうなった訳じゃない。
それが証拠に





進藤は眠そうにゴシゴシと目を擦ると、しばらくぼーっと藤崎さんを見て無造作に、
本当に無造作に手を伸ばして、いきなり胸をぎゅっと掴んだ。


「きゃあああああ!」


響きわたる藤崎さんの悲鳴。
ポカンと口を開ける進藤。


「何すんのよ!ヒカル!」

「え・・・あ・・・。」


口をぱくぱくさせて、いきなり怒鳴られた驚きのあまり声の出ない進藤に、
藤崎さんはやっと冷静になった。


「・・・あ、ゴメンね。ヒカル。悪気はなかったんだよね。」

「わるぎ?」

「ううん、いいの。」


訳も分からず急に怒られて、急に許された進藤は混乱してか立腹してか、
涙をぽろぽろと流し始めた。

藤崎さんも涙ぐんだ。






・・・・・・いつだったか終わった後、進藤が「あかりに告白された」とポツリと言った事がある。


「何て答えたんだ?」

「『好きな奴がいるからゴメン』って。」

「へえ、そんな人いるんだ。」

「・・・バーカ。」


そんな何気なくて、バカらしくて、幸せだった時間が、今は、なんて遠い。


「・・・でも、もしオマエを好きになってなかったら、あかりと付き合ったかもな・・・。」


そして、その時ほとんど聞き流したようなこんなセリフが、
今になって魚の小骨のように、ボクを苦しめる・・・・・・。






「ゴメンね、塔矢くんも。」

「いや・・・。」

「分かってるのよ、以前のヒカルじゃないって。」


分かって、なかったんだろう。
だから名前を呼び捨てにさせ、膝枕をして進藤を手に入れたような気になってしまった。
でも、そんなこと、残酷すぎてとても言えない。
そしてボクには、言う資格がない。


「あの、ゴメン。もう行かなきゃ。塔矢くん、お願いできる?」

「ああ、分かった。」

「ヒカル、ホントにゴメンね?また今度遊ぼうね。」


前髪を撫でると、進藤はまだ拳で目を押さえながらも、小さく頷いた。






部屋に帰ってから、進藤は膝を抱えてぐらぐらと揺れながら、無言だった。
そして自分の掌を見つめて少し赤面し、一層激しく体を揺らして
ついには丸まったままぐりんと転がった。


「・・・どうしたの?」

「んとね。あのね・・・。塔矢、おかーさんに言わない?」

「うん。」

「ホントに?」

「約束する。」

「じゃあ指切りげんまん。」


小指を絡めて「ゆーびきーりげーんまんー・・・」進藤がブンブンと振るに任せる。


「ハリセンボンってフグなんだよ。知ってた?」

「知ってたけど多分この針千本は・・・、じゃなくて、何だったの?」

「ああ、あのね。」


二人きりだというのに、進藤はボクに被さるように寄ってきて耳を両手で覆う。
不覚にも、顔が火照った。
熱い息が、耳の中に吹き込まれる。


“アノネ、アノネ”

「うん。」

“アノネ・・・オチンチンガ、ヘンナノ。”

「え。」


・・・進藤は困ったような顔をして両手で股間を押さえている。
そう言えば、帰ってくる時も少し前屈みだったような。


「いつから?」

「う〜ん・・・わかんない。」


と、また掌を見つめる。
藤崎さんの胸を触って勃起したのか・・・。
悪気があった、ワケだ。

マセガキ。

いや、違う。
中身は6歳でも、体は16歳だ。
その機能は十分にあるし、ボクはそれをよく知っている。

記憶を失ってから一ヶ月。
その前の日に実は嫌という程出したのだけれど、よく今まで保ったものだ。
ご両親は気付かないのだろうか。
色々な事がありすぎてそこまで気が回らないのか・・・。
いや、気付いていてもどうしようもないか。


「・・・見せて。」

「やだよー。」

「いいから。」


無理矢理手をどけてファスナーを下ろすと、本気では抵抗しなかった。
しばらくぶりに見る進藤のモノは、半立ちだった。


「なんか、コレも前とちがうの〜。」


と、根元を持ってぷるんと振る。


「どう違うの?」

「わかんない〜。なんか・・・」

「何か?」

「かたくなって、くるしくなって、おしっこしにくくなる。」

「そう。」


・・・そう。
それはどんな時?藤崎さんの胸を見た時?
足のキレイな女の人を見た時?

なんて聞かない。


「・・・治して、あげようか。」

「え、なおせるの?」

「うん。一時だけどね。」


ボクがそっと手を触れると、進藤が震えた。


「や、やっぱいいよ。」

「怖がらなくていいから。すぐに良くなるから。」


久しぶりに触れる進藤に、ボクの体も熱くなりそうになる。
これって性的悪戯になるのかな。
でも進藤も嫌がってないし・・・。


「あっ、あっ、」


進藤はボクがさする度に、切なげな喘ぎ声を上げた。
以前の、低い溜息のような声ではなくて、それは本当に幼い声だったけれど
ボクは・・・。





やがて「んっ!」というような声と共に進藤はボクの手の中で達する。


「・・・ご、め・・・おしっこ、しちゃった。」

「そうだと思う?」

「ん〜・・・・・・。」

「気持ちよかったんじゃない?」

「・・・・・・あのね、おかーさんに、言わないで・・・。」


お母さんに言われて困るのはボクの方かも知れないが・・・。
知られたら知られたで最終的には、同じ年の男として見るに見かねたと言えばいいか。




その事があった日から後、進藤はボクが訪問すると早々に部屋に連れ込み、
自らパンツを脱いで


「塔矢、あれ、して。」


と言うようになった。


「してあげるから、その前に一局打とう。」






−了−


※犯罪臭い塔矢。

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