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敵陣にて 塔矢の心の中には緒方さんがいる。 オレの気持ちを受け止めてくれないのはそのせいだと思う。 オレは塔矢が好きで、塔矢は緒方さんが好きで。 男ばかりで三角関係ってのもなぁ。 ってか、これって三角関係か? 塔矢と緒方さんの矢印が逆向いてたら完璧そうだけど。 って・・・緒方さんは、塔矢のこと、どう思ってるんだろう・・・。 考え出したら居ても立ってもいられない。 日が落ちかけているにもかかわらず、緒方さんのマンションに足を運んだ。 エントランスでインタホンを押す。 「・・・はい。」 居た! 「緒方先生、進藤です。」 「進藤。棋院の進藤か。」 「はい。」 「少し待ってろ。」 かちゃりと音がして、玄関の鍵が開いた。 エレベーターの中で頭を捻る。 あまりにも考えなしに来ちゃったな。 どうしたらいいんだろう。 さりげなく塔矢の事をどう思っているか聞き出すには。 それしか話しなかったら、オレが塔矢のこと好きってバレるよなあ。 まあいいや。当たって砕けろ! がちゃ。 わ、酒臭い。こんな時間から飲んでんの? 「おお。驚いたな。」 「急に、すみません。」 「まあ上がれ。」 「お邪魔しまーす。」 フローリングの廊下を進み、早速ソファに腰掛けて辺りを見回す。 パソコンのマウスの横に、灰皿と氷の溶けかけたグラス。 中身はお茶に見えるけど、そうじゃないだろう。 「今、棋譜の整理をしていた。何か飲むか。」 「あ、はい。」 結構きれいに片付いてる。 意外、でもないか。そのまんまか。 あ、魚。 かっこいい。 でも、そのせいか、全体的に少し寒い印象の部屋。 コトリ。 無言で目の前に置かれるグラス。 機嫌よくないのかな? って、コ、コーヒーミルク! 何だよ、子ども扱い?オレのこと幾つだと思ってんだよ。 「お茶でよかったのに。」 「湯を沸かすのが面倒だ。まあ、飲め。」 ゴクリ。 ・・・これ。 「カルーアミルクですね?」 「ああ。よく分かったな。」 「いつも飲んでんですか?」 「いや。俺はそんな甘いのは飲まん。」 だろうね。 甘くて、酒を飲まない人でも飲みやすい。 女の人でも。 だからつい飲み過ぎて気が付いたら泥酔状態ってこともあるだろう。 そのあとは何でもやりたい放題。なんてね。 自分が飲みもしないのにこんなの常備してるなんて 緒方さんってば・・・。 でもオレは酔っぱらうわけにはいかないんだよね。 美味しいけど、あと一口だけ。 ごくり。 「おお。いい飲みっぷりだな。」 「そうですか。」 「ああ。アキラ君とは大違いだ。」 「塔矢にも飲ませたんですか?」 「ああ。だがアイツは一口飲んで 『これはお酒ですね。僕は未成年なので頂きません』だと。ははは。」 ははは。 じゃないだろう! 塔矢を酔わせてどうするつもりだったんだ?! やっぱりあんた、男もオッケーなのか? ・・・だとしたらこれを飲まされてるオレもやばい? オレ美味しくないですよ。 ジャンクフード好きだしある意味初物でもないし。 ってか無防備にもこんな時間に一人で危険人物を訪ねてきたとは。 早々においとましよう。 あ。 でも、塔矢。 こんな調子では緒方さんはいつか塔矢を・・・。 この人執念深そうだし。 いや、塔矢も緒方さんのことを好きなわけだから、 いつかと言わず、もう秒読み段階かも知れない。 駄目だ! 塔矢には指一本触れさせない!オ・レ・の・塔矢に! 塔矢を守るだめだったら、何でも出来る。 オレの体なんかいつでも投げ出せる。だから、 ・・・オレで我慢してよ。 その代わり塔矢からは手を引いて貰うよ。 「もう一杯貰えますか。」 「ああ。強いなお前は。」 「美味しいですから。」 「大丈夫か。」 緒方さんこそだいじょうぶなんですか。 さっき足元ふらついてましたよ。 オレはだいじょうぶじゃなくなりたくて、のんでるんです。 シラフじゃやってられねぇすよ。 「で、結局何の用なんだ。」 「緒方センセの相手しに来たんですよ〜。」 緒方さんは眉間にしわを寄せて溜息をつく。 かんけーねぇや。 飲み干す。 飲み干す。 途中佐為がどうのとか言ってたみたいだけど、 オレに取り憑いてた碁打ちの幽霊だと言ったら大爆笑していた。 あれ。オレ本当の事言っちゃった? まあいいや。おかわり。 飲み干す。 「あ、次オレ作りますよ。」 ソファから立ち上がる。 あ・・れ・・・?意識ははっきりしてるのに、バランスが・・・。 「やはり飲み過ぎたな。酒の相手をしてくれるのは有り難いが 子どもは限度を知らなくて困る。」 自分もさぁけ臭い息して、なぁに言ってんだよ。 オレを抱きかかえてソファに横たえる。 「少し休んでろ。」 「いーやーだー。ベッドじゃなきゃ、いやだ。」 「何をずうずうしいこと言ってるんだ。」 首に回した腕に力を込める。 「ったく。」 舌打ちしながらもオレを引きずるように抱えて、ベッドルームに運んでくれた。 「2時間経ったら起こすからな。自分で帰れよ。」 やーなこったー。ここまで来たら、絶対抱かせる。 あれ・・・何のためだっけか? 忘れた。 でも、どうしてもしてもらわなきゃ。 気持ち悪いなぁ。でも、してもらわなくちゃ。 「腕、離せよ。」 「いや。」 「いやって・・・。」 「ちょっと側に居てよ。」 「まったく・・・何上戸なんだ。お前。」 でも緒方さんも力を入れ続けるのが辛かったのか、 だるそうに横たわる。 横たわると言ってもオレが首に腕を絡めたままなので、 オレに半身のしかかるような状態で、 体の力が抜けると同時に静かな寝息を立て始めた。 無防備な、緒方さん。 ずれた眼鏡が面白い。 そうっと外してあげると、目頭に皺を寄せて、小さく呻いた。 堪らず頬を寄せ、耳に息を吐きかける。 「塔矢とも。」 こうしたかった・・・? 「・・な、に、言ってるんだ・・・。」 ごくり、と大きく喉仏が動くのが、腕に感じられる。 密着した頬と頬の間にオレの髪がはさまって、ざらりとする。 でも元々緒方さんの顔は、塔矢みたいに滑らかじゃない。 伸びかけた髭がちくちくして、それが意識を少し覚醒させる。 でも逆に緒方さんは、オレの頬が女みたいにすべすべだとか思っているはずだ。 ざまあみろ。いや、何が。 オレって何がしたいんだっけ。どうしたいんだ。 あ、おんなじか。ってか、オレ、もう、寝ていい? その時頬に挟まっていた毛筋が急にざりざりと動いたかと思うと、 口を、塞がれた。 わ、酒臭い!おまけに煙草臭い! それに、舌抜けるってば!なんでそんなに吸うの! というより、わー!わー!何するんだ! やめろ!気色悪い! そんなに、舐め、回すな、 口を塞いだまま緒方さんの大きな掌がオレの上着をまくりあげ、 素肌を撫で回す。 肩に突っ張った腕が、虚しい。 もう少し、力入れよオレの腕。 叩こうにも背中に腕を回すのは誤解を招きそうだし、 この体制から叩けるのは肩くらい。 こんな時に相手の凝りをほぐしてどうする。 いや、そんな場合じゃなくて。 どうしよう。 どうしよう。 どうなっちゃうのオレ。 怖い。 とてつもなく、怖い。 緒方さんはあっけなくオレの上半身を、剥いた。 抵抗しようにも力が入らない・・・・。 ってのもあるけど、 何か、抵抗しちゃいけない、って自分で決めたような気がする。 なんでだったろう? でも、何か理由があったんだろうな。 目を、閉じる。 オレのカラダを撫で回す、手。 オレのカラダを舐め回す、舌。 緒方さんの荒々しい愛撫に、オレは全然関係ない光景を思い浮かべていた。 初めて行った、美容院のシャンプー台。 すごく緊張していて、おまけに洗ってくれた手もちょっと乱暴だったけど それでも自分で洗うのと比べモノになんないくらい気持ちよかった。 今も、緊張してるんだけど・・・・、 とろける。 とろける。 オレ、溶ける。 ・・・あ。 少し体を離して、自分の服を脱ぎ始めた。 へえ、結構締まってんじゃん。やっぱりフィットネスクラブとか行ってるわけ? ははははっ!似合わねー!えっと、お、お、そうそう、緒方さん! さすがに下半身からは、目を逸らす。 見ちゃ、いけない。 見たら、怖くなる。 緒方さんはオレのパンツのボタンをはずし、下着と一緒に引き下ろした。 イテッ!乱暴するなよ。 と、息を呑む、気配。 オレってばもービンビンだし。 でも、コレをアンタに入れるわけじゃないんだから、ビビんなくていいよ。 「・・・お前・・・男だったん、だよな・・・。」 ・・・って。 あっはっはっはっは! 何?忘れてたわけ?面白すぎるよー!お、緒方さん! 身を捩るオレにつられたように緒方さんも笑い出す。 「はっはっは!まあいい。させろ。」 あーいいよー。どーんと来い! 自ら足を抜き、思い切りよく開脚する。 しかし彼はスプリングを揺らしてベッドから降りた。 部屋の端に行き、しばらくしてから帰ってくる。 オレはまだ笑いの発作の余韻に浸っていたが、 太股の裏を撫でられて、意識を戻した。 撫でた手はそのまま足の付け根まで行き、尻の穴を探りあてる。 指で、襞を撫でるように。 そこも気持ち良いけど、前触って欲しい。 一旦指が離れる。 微かにパリパリと言う音。なんだろう? 指は今度は冷たくて濡れた感触を伴って戻ってきた。 ああ、さっきはローション取ってきたのか。 少し大胆になった指には、ツルツルした違和感。 思わず目をやると、ああ、指にコンドーム填めてるんだ。 なるほどね。 コンドーム指は少し乱暴にこねくり回し、何の前触れもなく 入ってきた。 何の抵抗もない。 ってか、指は入れられた、いや入れて貰ったことあるから、 怖くないんだよね。 さすがに男の指は初めてだけど。 緒方さんはオレの中を慎重に探索する。 ああ、オレのもんが顔の前にあるから、いい所に来たらあからさまにビクッて 震えるのが丸見えなんだよね。 別に恥ずかしくない。 オレ、なんか麻痺してる? 指が増えた。 まだ痛くない。 この調子なら、大丈夫かも。 中で動かして、オレがビクビクするの、楽しんでるでしょ。 しばらくすると緒方さんは「ふう、」と息を吐き、 またさっきのパリパリが聞こえた。 ああ、いよいよか。 オレの、処女喪失? なんでこんなことになっちゃったんだろう。 なんでこんな所にいるんだろう。オレ。 緒方さんが塔矢の事をどう思ってるか知りたかっただけなのに。 でも、これで、大丈夫。 オレを抱いた代わりに塔矢には手を出すな、って言える。 でも、あ、それじゃやっぱり、オレが塔矢の事好きだってバレちゃうじゃん。 まあいいや。何とでもなるだろう。 オレの思考を遮るように足を肩にかつがれ、 尻の穴に当てられた。 腰が持ち上がったこの体勢、ちょっと辛いんですけど。 「行くぞ。」 「はい」とかいうのも馬鹿馬鹿しくて、ただ頷く。 少しづつ、分け入ってくる。 あ、意外と平気。 もっと痛いかと思ってた。 すんなり先が入ったらしい。 「大丈夫か。」 「は、はい。」 そのままにりにりと体が進んでくる。 痛。 やっぱり痛い。 でも、我慢できない程じゃない。 ・・・全部入ったらしい。 どんな長さなのか、太さなのか、さっぱり分からない。 でも、ひどい圧迫感だ。 便意に近い感覚もある。 そのまま、止まっている。 足を伝う汗は、緒方さんのものなのか、オレのものなのか。 やがて緒方さんの息が少し深くなった。 「悪い。動くぞ。」 返事も待たずに抜き差しを始めた。 ちょ、ちょ、やっぱり痛いじゃんかよ! 苦しいってば! わ。わ。 でも、先程オレの中を探っていたのは伊達じゃなかったらしく、 ちゃんと、感じる所も突いてくる・・・。 そんな、体揺すらないで。 頭に、血が上るよ。 顎が、首にひっついて息が詰まるよ。 浅く、深く、突かれると、苦しい。 いく前に落ちちゃうんじゃないかと思うほど、苦しい。 苦しいけど、・・・気持ちいい。 そんな、イイとこ、そんな、こすらないで。 臍の上辺りに何か、滴ってきた。 多分、オレの、 だって、いい。 ダメ、イクかも。 目を薄く開けると、緒方さんがいつもの冷徹な目で、顔を観察していた。 オレ今、目、閉じてるのに眉しかめて、かなり馬鹿ヅラだった。 あ、涎垂れてる! 拭おうとした手首を掴まれて、 一層深く、貫かれた。 オレ・・・・狂う。 微かな気配に目が覚めると、 隣で緒方さんが身を起こして煙草に火を付けている所だった。 辺りは少し明るくなっている。 なんて言っていいのやら。 「・・・お互い信じたくないと思うが。」 「はあ。」 「夢じゃなかったようだな。」 「そうですね。」 昨夜は似たような事を2〜3度繰り返し、意識を失った。 緒方さんがいったのかどうかは分からない。 うひゃー。そこらじゅうカペカペだ。 「お前・・・初めてじゃなかったんじゃないか?」 「・・・・・。」 「男に抱かれたことがあるのか。と聞いている。」 「ありません。」 男としたことあるのか、と言われたら困るところだった。 「それは、悪かったな。」 ふっ、と煙を吐き出す。 ちょっと驚いた。 お前が誘惑したんだあれはだからレイプじゃない、 とか言い募って来るかと思ったんだけど。 昨夜も凄く優しかったし・・・案外いい人かも。 それに色々と勉強になった。さすが大人だ。 分けても尻だけであんなに気持ち良くなれるってことが分かったのは収穫だ。 今度は塔矢をいかせる自信がついた。 あとはこの人の手を塞ぐだけだ。 「あの、」 「俺がガキを抱く日が来るとはな。」 「え?普段男に興味ないんですか?」 「馬鹿言うな。気色悪い。昨夜の事は自分でも訳が分からない。 これからは二人だけの時はガキに飲ませないようにする。」 えーと。えーと。それって。えーっと。 「前も塔矢に飲ませてましたよね?」 「は!どんなに間違えてもあいつには絶対手は出さんさ。 からかうと面白いがな。お陰で嫌われている。」 「な、んだ・・・。」 もしかして・・・オレって、ヤられ損? 全身の力が抜ける。 でも・・・少なくとも緒方さんは塔矢を性欲の対象としては見てないんだな? 嫌われてるってのも、もし本当なら、こんなにめでたいことはない。 「お前が出るところに出たければ、別にそうしてもいい。賠償はする。」 「緒方先生・・・・・かっこいい。」 「当然だろう。俺も酔っていたんだから仕方がない。」 「そっか・・・。でも、オレ、別にいいから。」 「変わってるな。」 「緒方先生こそ。慣れてるみたいだったから、てっきり。」 「する分には相手が男でも女でも変わらん。 お前こそ目が覚めたら泣きわめくかと思ったが。」 「そんなこと、しないよ。」 「・・・思ったよりガキじゃなかったか。 えらい目に会ったのに、妙に淡々としてるしな。何故だ?」 「そうだな。体なんてどうせ入れ物だし。」 「何のだ。」 「『魂』。・・・なんちて。」 「・・・フン。」 −了− ※ちょっと電波なピカ。 |
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