ジャンクフード7
ジャンクフード7









しばらくお互いに忙しく、進藤の部屋に行く機会がなかった。
仕方なくボクは自分で処理していた訳だが、その際思い浮かべていたのは
中学校時代の同級生でもなく、ハリウッド女優でもなく、

進藤の、顔だった。





ある大手合いの昼休み、盤を前にして心を静めていると進藤がやって来て


「塔矢、ちょっと。」


と手を引いた。


「何だ。」

「ちょっと来て。」

「用があるならここで言え。」

「いーから来いって!」


何の話かと訝しく思いながら着いていくと、腕を掴んだまま人気のない階段の方に
引っ張って行かれる。
薄暗い一角に着くやいなや、


「おい、な・・・!」


進藤は壁にボクを押しつけて、むしゃぶりつくようなキスをしてきた。


「〜〜〜〜!」

「塔矢、塔矢、とう、」


押し殺した声で幾度も名を呼びながら首に唇を押しつけ、固くなった股間を擦りつけてくる。


「おい、一体、」


咎めようとした唇がまた塞がれ、尖った舌が苛立たしげに歯茎を舐めて来る。






勿論進藤との関係はあの部屋だけの事で、これまで外では一切そのような事はなかった。
自然、部屋から一歩出ればボク達の関係もないもの、というのが暗黙の了解だと思っていたので
この棋院での進藤のアクションに、ボクは酷く狼狽えた。


「ちょ、待て!一体何を考えているんだ!キミは!」

「ごめん、でも、オレ、」

「ごめんでもオレ、じゃないだろう!誰かに見られでもしたらどうするんだ!」

「オマエこそ大きな声出すなよ〜。」

「あ、ああ。すまない。・・・で、何なんだ。」


進藤の肩を掴んで引き剥がすと、ようやく落ち着いた様子を見せた。


「何って、最近できなかったじゃん?もうさ、オレ限界で。」

「我慢の足りない男だな。」

「オマエは?大丈夫なワケ?」


大丈夫というか、自分でそれなりに。
キミだってそうだろう?
進藤の肌が恋しくなかった訳ではないが仕方のない事だ。


「じゃあさ、この後、しよ。」

「この後?久しぶりに碁会所に顔を出すと約束したんだ。」

「オレも行く!んで早く切り上げようよ。」

「それは構わないが・・・分かってるのか?次はボクの番だぞ?」


入れる方が。


「ん〜、そうなんだけどさ、お願い!今日だけ代わって。」

「嫌だ。」

「頼むよ〜。もう我慢できないんだよ〜。友達だろ?」


・・・この友達だろ、にボクは弱い。
確かに彼を取り除くと、周囲に友人らしい友人というのがいなくなるので。


「次は二回連続オマエがする方でいいからさ。」


この言葉が決定打となり、ボクは「仕方ないな」と渋々頷いた。






進藤は部屋の前で鍵を鍵穴に入れるのももどかしく、ドアを開けるなり服を脱ぎ始めた。
ボクのシャツを捲り上げ、肋の辺りを撫でようとする。


「ま、待て!取りあえずシャワーを浴びさせてくれ!」

「ああそっか、じゃあ一緒に浴びよう!」


鞄を玄関に置いたまま、器用に自分の服を脱ぎながら、ボクをズルズルと
バスルームの方に引っ張って行く。
今日の進藤は異常に強引だ。

ボクの服を脱がせようとするので断ると、せかせかと自分の服を脱いで
先に飛び込み、ざざあっとシャワーを出す。


「丁度いい熱さになったぜ。早く来いよ!」


そんなに慌てなくても逃げないよ、と苦笑しながら服を畳み、
進藤に続いた。


狭い風呂場で抱き合うようにしてシャワーを浴び、お互いのモノを擦りつけ合う。
進藤は本当に溜まっていたらしく、手で触るまでもなくすぐにあっ、と首を仰け反らせて
ボクの腹に白濁した液を吹きだした。

しばらくボクの肩に縋り付いて息を整えていたいたが、やがて石鹸を持ち
その手でボクを抱きながら背中を洗ってくれた。
やがて泡だらけの手が、尻の谷間に下りてきて・・・。
撫で回しながらつるりと指を滑り込ませる。


「痛・・・。」

「あ、痛い?ごめん。」


というよりも。
まあ一緒に浴びようと言った進藤の様子から予想しないではなかったけれど。


「ここでか?」

「・・・だって。」


と、またしても固く立ち上がったモノを切なげに押し当ててくる。

こんなに狭い所で。
だが、ビデオの中ではよくあったパターンだ。
一度やってみたい、という気持ちも分かるし、後始末が楽だというのもあるし。
やれやれ仕方がないなとつぶやきながら浴槽の縁に手を掛け膝を突いた。

すかさず進藤が後ろから覆い被さって来て、犬みたいだ、と苦笑したが・・・。
何故か彼はそこで止まった。


「?・・・来ないのか?」

「ん・・・・・・と、やっぱ部屋でしよう。」

「・・・。」

「ほら、落ち着かねーし、ゴムないし。ナマで出したらきっと腹こわすぞ。」

「・・・そうなのか?」

「うん。そう。」


進藤はまたしても慌ただしく石鹸を洗い流すと風呂場を飛び出し、バスタオルで
ゴシゴシと適当に体を拭くと、まだ中で呆然としているボクに放って寄越した。






部屋に戻るやいなや一息つく間もなく押し倒される。
パイプのベッドがギシギシと音を立てた。
ボクの頭越しに早速コンドームを取る時に思わず、


「このベッド、安物そうだけど大丈夫なんだろうか。」

「失礼な奴だなぁ。まあ確かに安いけどね。この音がまたエロくていいんじゃん。」

「そうか?」

「そうだって。気付いてねーの?AVでも絶対この音拾ってるぜ。」

「今度気を付けて聞いてみよう。」


進藤はボクよりも格段に性知識があるし、どうでもいいことに限ってよく知っている。
以前はそういう部分を少し見下していた部分があるが・・・
この年になると同年代でこういうタイプの男が身近にいて本当に良かったな、と思う。

その進藤がゴムを装着してからはたと気付いたように身を起こし、「ちょっと待ってて」
と言って台所の方に帰っていった。

何か変な道具なんか持ってこなければいいんだが、と思いつつも
裸で足を開いて待っている自分が酷く間抜けだ。


「お待たせ。ちょっと起きて。」


というと、進藤は赤白青の太いストライプのレジャーシートをシーツの上に広げる。


「何だ?」

「この間ローション使いすぎてシーツに垂れてたから。」

「垂れない程度に使えばいいだろう。」

「いや沢山使った方が・・・。」


と言って何故か顔を赤らめると、ごにょごにょ口ごもってまあまあ、と再びボクを
がしゃがしゃ音のするシートの上に押し倒した。




進藤は下半身に盛大にローションを振りかけ、まずは自分のモノとボクのモノを一緒に握りこんで
腰を揺らした。
これはお互いにとても気持ちよく、進藤に入れる前まではボクは究極の方法だと思っていたが
入れる際にこれを採用する事は考えつかなかった。
入れられる時にはひたすら我慢、次に自分が入れる時にはその分好きにしていいのだから
と思っていた僕には驚きだ。


「やっぱり、気持ちいいな。」

「だろ?特にこのぬるぬるが。」


大量のローションが摩擦を緩和し、このまま持って行かれそうになる。
やっぱり今回は入れないでいてくれるんだろうか。
でも・・・キミ的には入れた方が気持ちいいんじゃないか?


「いや、入れるよ。入れるけど、ちょっとでもオマエにも気持ちよくなって欲しいし。」


結局入れるのか。
しかし自分が入れる時にはどうせ痛くするのだから、と相手の快感まで考えていなかったボクには
進藤の心遣いがとても新鮮で、そして自分の至らなさを非常に恥ずかしく感じた。


「ごめん。進藤。」

「え、何が?」


進藤は動きを止めて身を離し、それでも作業を中断することなくボクのモノを擦り上げながら
反対側の手の指をさり気なく尻の穴に当てる。


「う・・・。いや、ボクがする時は自分の事しか考えてなくて、」

「いいって!そんなのいいって。気にするなよ。」

「あ、あのね、進藤。」

「ん?」


色々聞いてみたいことはある。
何故指をそんなに奥まで入れるのか。
何故その間も間断なくボクのモノを刺激し続けているのか。
お陰で気持ちいいのか悪いのか混ざり合って自分でもよく分からなくなって来て。
でも取りあえず一番疑問なのは


「広げるだけなのに、どうして、そんなに中で動か、ああっ!」


何かのスイッチを押されたように、腰が跳ね上がる。
今のは、今のは、最初に進藤にくわえられた時に似ているけれど、もっと体の奥底から、


「キモチイイ?塔矢。」


進藤の妙に熱っぽい声が耳障りだ。


「キモチ、というか、ちょっと待て!」


進藤はこの距離で聞こえていない振りをして、指を増やす。
一瞬痛かったが、ぬるぬるですぐに慣れて、というか既にはっきりと意思を持って動く指。
これはどちらかというと女性向きな・・・。


「進藤!」

「え?」

「キミ、この位でボクが『もう我慢出来ないから入れて』を言うなんて思ってないだろうな!」


ぎくりと息を呑む進藤。
思いっきり思ってたな、これは。
前回感じた疑惑の雲がまた湧き始める。


「ええっと、あの、オレ、オレがもう我慢出来ないから、入れていい?」


言いたい事はまだあったが、進藤が限界だというのも本当らしいので
ボクは大きく鼻息を吐いて枕に頭をどすん、と落とした。
衝撃で少し眩暈がした。






「で。四つ這いにならなくていいのか。」

「オレ正常位が好きって言ったじゃん。」

「・・・だからローションが垂れるんじゃないのか?」

「その為のレジャーシート。」

「ふうん。」


取りあえず納得した振りをすると、進藤はボクの足を折り曲げ、あてがって来た。


「行くな。」

「ああ。」


ぬるりと入り込んでくる。
相変わらずの痛みに眉をしかめたが、それをじっと見ていた進藤が


「あの〜・・・。」


と恐る恐る声を掛けて来た。


「痛いの?それともキモチいいの?」

「痛いんだ。」

「そっか。じゃあしばらくこのままでいるね。」


・・・進藤は、今一つの失敗を犯した。

ボクが入れられて気持ちいいと感じる可能性がある事を、
そしてそれを自分が知っている事を、自ら暴露してしまった。
きっとそれは先程の指の動きと関係があるに違いない。


「もう、いいよ。」

「そう?」


進藤は腰を動かしながら器用にボクのモノを握って自分の腹に押しつけ、
一つの動きで自分も出し入れしながらボクにも刺激を与える、という事をやってのけた。

だんだんに動きが早くなる。
体の中の気持ち悪さや、出口(進藤にとっては入り口だろうが)の痛み。
進藤にいじられている先端や、訳の分からない場所から湧く快感。
それらが混じり合って、何とも言えない、今まで味わった事のない様な。


「ねえ、塔矢、オレ、もうイきそう。」

「ボクは・・・。」


ボクは、何を言おうとしたのだろう。
確かにボクもイきそう、なんだけれども、ちょっと今までと違うというか。
こんな入れられたままで「イきそう」ってのはどうなのか、というか。


進藤は手を離すと両手でボクの足を抱え、激しく動き始める。
ボクは堪らなくなって手を伸ばし、自分で自分のモノを扱いた。

動物のような進藤の喘ぎ声が高まって止まった直後、ボクも、出した。







「ああ・・・気持ち良かった。オマエは?」


ニヤニヤしながらボクの腹の上の粘液を指でくるくると広げる。
いかにも「気持ちよくなかった筈ないよな?」と言いたげだ。
だが


「生憎キミは夢中で気付かなかったかも知れないが、それはボクが自力で出したものだ。」

「そうなの?」

「ああ。」

「でもさー。気持ち良かったのは良かったんだろ?」


それは、確かに。
自分で扱いたとは言え、家で一人でするのとは、いや進藤と抱き合ってするのとも、
随分違った。
しかし。


「でさあ、思うんだけどさ、」


・・・来た。


「オレ達ってこれが合ってるって思わねえ?どっちも気持ちいいんだしさ。」

「・・・・・・。」

「ほら、オレが入れられてる時って痛いだけだし、自分でも素質ないと思うんだ。」

「・・・・・・。」

「でも今回みたいなんだったら一応両方イけるし、なんだったらオレが手でしながら、」

「進藤。」


自分でも冷ややかな声だと思った。
進藤がぴくっと震える。


「聞きたい事があるんだ。」

「・・・はい。何でしょう。」


進藤はかしこまって正座をした。
キミも空気を読むのが上手くなったものだな。


「一つ。まず、ボクに奥まで指を入れるなと言ったくせに、
 自分は入れたり動かしたりするのは何故だ?」

「・・・・・・。」

「二つ。ボクがした時は自分から四つ這いになったくせに、自分がする時は必ず正常位だ。
 風呂場でしなかったのも、本当は狭くて前から出来ないからじゃないのか?」 


進藤は口をぱくぱくとさせながらボクを見ていたが、
やがて無言で項垂れた。


「黙ってちゃ、分からないよ。」


敢えて最大限に優しい声を出すと、進藤はもう一度肩を震わせ、何段階かに分けて頭を上げ
最後の一段階はどうしても上がらなかったらしく、目だけを上げて上目遣いにボクを見た。


「・・・この三回、」

「・・・・・・。」

「この三回色んな事があったのに、どうしてオマエそんなピンポイント突いて来るわけ?」

「話を逸らすな。」


微笑んだままぴしりと低い声で言うと、また進藤が首を竦めた。
が、開き直ったようにはああ、と溜息を吐いて、膝を解いた。


「ネットでさー。調べたんだよ。色々。」

「そうらしいね。」

「で、男でも尻の中に感じるトコがあるって。」

「へえ!」


そんな事だろうと思ってはいたが、やはり驚いた。


「どういった機能なんだろうな?」

「この、前立腺って言うらしいんだけど、それって棹の根元からもまだ中の方まで
 繋がってて、尻の穴のすぐ裏側通ってるらしいんだ。」


と、萎えた自分のモノを持ち上げ、その裏側あたりを指さす。
なるほど、言われてみればいかにもだ。
今までどこまで気持ちよくてどこからが普通か、などと考えてみたことがなかった。


「それで。」

「だから思ったワケよ。これは塔矢くんにも感じさせてあげよう!」

「ほう。」

「んで、そこを直接触ったりするとスゴくイイって書いてあったから、」

「・・・それで中で指を動かしてみたわけか。」

「うん。イイ所あっただろ?」

「う〜ん、イイ、というか。」

「よさそうだったけどな〜。んでオレのん入れた時もその辺に当たるように意識して。」

「・・・・・・。」

「ああ、前からの方が入れられる方がイきやすいんだって。んで潤滑油は多い方がいいみたいだし、
 同時にオマエのん触ったら最強じゃん?」


『最強』の意味を間違えてるぞキミ。
それに。


「そこまでしてボクに入れられて感じさせたかったのか。」

「・・・いや、その、相手が感じてくれた方が自分も気持ちイイってのもあるし。」


てのもあるしというよりそれがメインだろう!


「二回ぐらいでイけたら、オマエ素質あるよ。」

「だから今後はずっと自分が入れる方をやりたいって言うんじゃないだろうな。」

「え・・・と、あの、それは、」

「大体どうしてその情報を隠して、こっそり自分だけ試すんだ?」

「その、オレは、別に入れられて感じたくないっていうか・・・。」

「ほほう。」

「男のこけんというか。」

「沽券を漢字で書けるか。」

「書けない。」

「書けない人間が沽券を語るな。それにボクには『男の沽券』は必要ないと?」

「プライドみたいな意味だろ?それ分かってたらいいじゃん。それにオマエはもう男らしいからいいじゃん!」

「プライドというよりは体面だ。キミが女々しいのは知っているがボクがそれを補う義理はない。」

「対面?オマエそれこけん違いだぞ。女々しいとはなんだよ!人が折角褒めてやったのに。」

「キミとはもう国語の話はしたくない。悔しかったら尻で感じてみろ。」

「何をぉ?!」


お互い膝立ちになり今にも掴み合いになりそうだったが、ボクの出したモノがとろ、
と足の方に伝うと同時に進藤もレジャーシートに垂れたローションでつるっと滑りそうになって
止まった。


「・・・取りあえずシャワーを浴びよう。」

「・・・そだな。」







狭い浴室で進藤の背中をタオルでゴシゴシと擦ってやりながら、話しかける。


「・・・ボクたちは今まで情報を共有してきたよな。」

「・・・うん。」

「それで、自分がされて気持ちよかった事を相手にするのも、ルールだよな。」

「・・・うん。・・・ごめん。」

「今日、進藤は気持ち良かった?」

「うん。凄く。」

「ボクも・・・今までと違ってよく分からなかったけど・・・気持ち良かったような、気がする。」

「・・・・・・。」

「だから。」

「分かった・・・。次はオマエがしろよ。また細かい事は教えるし。」

「二回連続、な。」

「ちぇっ。・・・あ、交代するよ。背中。」

「ああ、すまない。ところで今日のメニューはなんだ?」

「今日はな、驚くぞー。なんとカップ麺に梅干し!旨いって聞いたんだ。」

「想像つかないな。本当なのか?」

「だからそれを二人で試すんじゃん!」





そうだな。今まで色んな事を二人で試して来た。

そして、多分これからも。









−了−








※カップ麺に梅干し情報、おくとさんありがとうございました。
  なんというか「すっぱいカップ麺」でしたね。いや、美味しくなかったワケじゃないんですよ。

  今回そういうつもりはなかったんですがいつの間にかキレイに落ちたような気がします。
  最終回くさいというか。
  もうやめろというヒカアキ神の御神託でしょうか。






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