ジャンクフード2
ジャンクフード2









「んじゃ、また打とうか。」


お互いの欲望を出し合った後、何事もなかったように進藤が言う。

ボクらの情事はまあ男同士なので当たり前と言えば当たり前かも知れないが
到底色っぽい代物でもなく、ただ裸で抱き合ったりお互いのモノに触ったり
満足してしまえば一局打って、検討が終わったらまた抱き合ったり、という
非常に淡泊というかシンプルというか悪く言えば獣じみた物だった。

その感想を進藤に伝えると


「え?じゃあ終わった後甘い囁きとかピロートークっていうか、そういうのが欲しいわけ?」


うーん、それはそれで気持ち悪いけれど。


「オマエがそうしたいならそうするよ。」


やっぱりそんなことをしてしまうと恋愛のようで気味が悪いからやめておこう。
お互いに性欲を処理し合っていると考えた方が気が楽だ。




一度酔って進藤にされてしまってから(この時はいわゆる「本番」もしてしまった
らしいがボクは覚えていない。)時折進藤は自分のアパートにボクを呼び出す。
都合良く使われてるな、という気もしなくもないが、ボクも彼を性欲処理に
使っているのでお互い様だと思う。

ボクにだってそれなりに性欲はある。

夢精してしまう前に自分で処理したりするわけだが、進藤とこうなってからは
ほとんどない。
例え男でも進藤はすべすべしてるし肌をふれあうのは非常に気持ちが良くて、
出す行為も他人の手にされるのと自分の手でするのには
格段に気持ちよさに差があるのだ。
それはその、最初の時にうっかりと覚えてしまった快感で。


「オマエが女の子だったらなぁ・・・。」


時折進藤が言う。それもお互い様だ。


「だけど女の子は女の子で面倒くさいんだよな。セックス以外に
 割かなきゃいけない時間が多すぎる。」


ご同様。
でもボク達なら碁を打つのはいつものことだし、しなくてもどうせ家で自分で
するんだから、かえって移動時間が助かるくらいだ。


「・・・って、オマエも自分でしてたりしたんだ?」

「まあ、ね。」

「え、どうやって?」

「そんなこと聞くなよ。」

「やっぱりエロ本とか見たりしながら?」


そういう話はよく聞く。
でもボクは万一母に見つかったりしたら、と思うと自室にそんな本を置けない。
というかプロになってからは自分が知らない人にも顔を知られているかも
知れない、ということは常に頭の隅で意識しているので、本屋に行っても
いわゆる成人向けの本のコーナーには足を向けられない。

そういう訳でほとんど見たことがない。


「えーー?それで出来る?」

「まあ、何も考えずに適当に手を動かして・・・。」


というのは半分くらい嘘だ。
本当は中学の体育の授業で見た女の子の足や、テレビで見た女優の
胸元を思い出しながら、それで何となく興奮できる。

・・・いや、そう言えば一度進藤の裸を思い浮かべながらしてしまったことが
あったな・・・。
だって何度も見ていて思い出しやすいし、実に具体的なんだ。だから。




「じゃあさ、こんなの見たことないんだ。」


裸のままの進藤が部屋の隅に積んである雑誌の下の方からグラビア紙を取り出した。
やたら胸の大きな水着の女性が表紙だが、書いてある煽り文句を見ると
中身はもっと過激そうだ。
恐る恐る、に見えないようにさり気なく手に取ってみる。


「・・・・・。」

「見ろよ。」

「そんな、じっと見られていたら見づらい。」

「あははっ!そうだな、腹も減ったしオレカップ麺作ってくるよ。」


進藤が台所に立った隙に、パラパラとめくってみた。





・・・こんな。

こんなのが現代の日本で発禁処分になってないんだ・・・。
頭を殴られたほどの衝撃が走る。

うわー・・・。女の人のここってこんな風になってる・・・。
てゆうかこの外人さん髪の毛の色とここの色が違う・・・。

こんなにほっそりしていてこんなに胸が大きいってあるんだろうか。
ゴム毬みたいで気味が悪い。
恐らく人工的な物だろう。

ああ、こちらは重力に忠実で本物って感じがする。
下の辺りのたぷたぷしてそうな所にわざわざそんな・・・。



ポタリ。


突然自分の剥き出しの膝に小さな日の丸が出現する。

一瞬何の事か分からなかった。


ポタリ。


あ。


二つ目の日の丸が出来た時には最初の丸ははみ出てツ、と線を引き、
いつの間にか固く立ち上がったボクの性器の根元の方に流れて行く。

ボクの先にはこれまた透明な珠が出来ていて、つ・・・これは少し
粘度を持ってゆったりと流れ始める。

う、うわっ!どうしよう!

えっと、取りあえずティッシュティッシュ、いや動いたらまた血が落ちるか、
いやでも、

一人で錯乱している所へ進藤がカップを二つ持って戻ってきた。


「あ!わ、しんのう!」

「・・・・・へ?」


進藤は一瞬止まった後、ゆっくりとカップを隅の机の上に置き、
慎重に手を離した途端に、爆笑した。


「あーっはっはっは!何、オマエ鼻血出たの?!」

「笑いことにゃないらろう!」

「ゴメン!ゴメン、ホラ、でも、」


進藤はティッシュを取ってくれて、手ずからボクの鼻の辺りを拭くと、


「かわいー!かわいー!オマエ、かわいーー!」


と言ってボクを押し倒して抱きしめた。


「にゃ、にゃ、」

「『にゃ、にゃ』だって!もーっ!」


何をするんだ!・・・と言いたかったのだ。
だが鼻のティッシュを強く押さえていたので上手く言えなかった。
酷くバカにされているようで、本当は怒り狂って突き放したい所だが
何がツボに入ったのかボクを犬か何かのようにくしゃくしゃに抱きしめる
進藤に呆気にとられて、何も出来ずに進藤の体重を受け止め続けた。


ボクをそんな風に扱われたことが、ない。




ひとしきり笑って進藤の発作が収まり、ボクの血も止まった頃、
ボク達はどちらからともなく起きあがる。

やがて進藤はぴたりと青眼にボクを見据えて


「では、性欲処理いたしましょうか。」


と言った。


「その前に、カップ麺をいただきましょう。」


ボクも真面目くさって返事をした。






−了−






※本当にジャンクだ。
 

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