ファウル 19








・・・参った、よなー・・・。

いきなり塔矢に、好きだなんて言われた。
参ったというかびびるっつか。
色んな意味を考えてみたけど・・・、やっぱそれしかないよな。

いやー、確かに見た目女の子っぽいしいわゆる「美少年」だと思ってたし。
偶には触ってみたいとか、そんな事は思った事ある。
なんつか、他の男と違ってそういう嫌悪感を抱かせないっていうか
「塔矢となら道踏み外してもいいかも〜v」って冗談混じりに言えるような、
多分男子校なら普通にモテる奴だ。

でもそれはあくまでも塔矢はノーマルだった場合。
絶対に一線を踏み越える事はないと思うから言える事なんだ。

実際に告白なんかされたら・・・そらヒくよなぁ。


オレは頭をカリカリと掻いた。
それからそれが、いかにも困ってますって仕草に見える事に気付いて
慌てて手を下ろす。

困って・・・はいるんだけど、今塔矢が死ぬほど真剣なのは痛いほど伝わって来る。
そんな気持ちをキモがったり笑い飛ばしたりする事なんてオレには出来な・・・。

・・・あ。
でも、だとしたら、オレさっきすげえ酷い事言っちゃった?
緒方先生とそーいう関係だとか・・・変だとか・・・。
わー!


「あの・・・あの・・・ごめん、な。」


取り敢えず謝らなくっちゃ、と思って言うと、塔矢の嗚咽はぴたりと止んだ。
ホッとしてると、しばらくじっとした後すっと布団の上に正座する。

・・・え?

真っ赤な鼻、腫れた瞼、のままピタリとオレを見据えて。
その無表情の目からはまだ、たらーりたらりと涙が零れ続けていた。

こ、こええ〜〜!!!

これってこれって、例えて言うなら今にも手首を切ろうとしているような顔じゃん!
剃刀でスー、なんて可愛いもんじゃないぜ。
ナタですぱっ!と躊躇い無く手首を切り落としてしまいそうな。

なんで?なんでぇ?
オレ、何か悪い事言った?謝っただけだよ?


「・・・それはどういう、意味?」


うわ、声低い〜。
人に物尋ねる時の口調じゃねーだろ、既に怒ってっだろ!

・・・・・・って。

意味って。『ごめん』・・・て。
もしかしてあの「ごめんなさい」の「ごめん」だと思った?
「きみの気持ちには答えられない、ごめん」の?


「ちがっ、違う!」

「何が?」

「そういうごめんじゃなくて、その、おまえの気持ち知らないで無神経な事を
 言っちゃってごめんのごめんなの!」

「・・・じゃあ・・・。」


じゃあって・・・じゃあって?
一難去ってまた一難!、か?
つか今オレほもじゃない・・・なんて言ったら・・・どんな恐ろしい事になるか・・・。

迷った。
迷いに迷った。
でも今言える言葉って一つしかなくね?


「オレも、オレもおまえの事好き!」


・・・「好き」にも色々ある、佐為だって好きだしお父さんだってお母さんだって
和谷だって「好き」だもん!って自分に言い訳しながら、
だって嘘じゃないよ。確かに塔矢の事好きだもん、
変な奴だし碁バカだし、でも打ってて楽しいしいくら碁が上手くても嫌いな奴なんか
追いかけたりするもんか!


「・・・・・・。」


信じられないって顔してる・・・その場しのぎで言ってると思ってる・・・(そうなんだけど)。
信じてくれよぉ!


「・・・では、佐為さんは?」

「佐為は・・・。」


ええと。好きなんだけど、恋愛とかそんなんじゃなくて、なんつの、
情が移ってるっていうか放っておけないっていうか?


「好きは好きなんだけど、おまえが思ってるような、そんなんじゃ絶対ないから!」

「・・・やはりボクは・・・彼の代わりにはなれないのか・・・。」


またブルーになってる塔矢。
ああ、もう!
だから、だから、人の話聞いてくれない奴にこんな場合どう言えばいいの?


「代わりとか、代わりになんてなれないよ!
 だって佐為は佐為だしおまえはおまえだし!」


色々考える前に、勝手に大きな声が出てた。
途中でマズッて思ったけど、止まらなかった。

でも、うん・・・そうなんだ。佐為は佐為なんだ。
もし佐為にそっくりで佐為と同じ位碁が強い奴が現れたとしても、
オレにとってそれは佐為じゃない。


「おまえだって、そうなんだ。塔矢は塔矢。
 佐為がいたっておまえがいなきゃ詰まらない。
 おまえがいなくなったって、やっぱ今と同じ位寂しいと思うぜ?」

「・・・・・・。」


また顔を歪ませた塔矢の、裸の肩を掴んでオレはぎゅっと目をつぶり、
その口に自分の口をくっつけた。
塔矢の唇は柔らかくて、口を離した時上唇が濡れた感じがした。


Charcoalのkai さんに頂戴しました!
こんなにテンパったアキラさんを描かせてすみません…
泣かない、常に髪の毛は乱れない、というのがアキラさんらしいと思うのですがだからこそ見てみたいファン心理。
ああ、ホントに大好きな、素敵なキスシーンです。感謝してもしきれない。ありがとう!
















「あのな!これがオレの正真正銘のファーストキス!分かった?」

「進藤・・・。」


何やってんだオレ?と思いながらも、勢いのまま思い付くまま突っ走る。
誤解している塔矢の誤解を解くために新しい誤解を重ねてるって分からない訳じゃなかったけど
それでも事態を収拾出来そうな方法ってこれしか思い浮かばない。


「おまえの事、嫌いじゃない!全然嫌いじゃない。」


佐為もおまえも同じ位好き。
でも、さ。
おまえにキス一つ分のハンディやったから、これで納得してくんない?


「進藤・・・進藤!」


塔矢は、裸のままぎゅってオレに抱きついてきた。
ひぃ〜!ごめんなさい〜!
だ、だめだ、このままじゃだめだ。

落ち着けオレ、落ち着いて、正直に誠実に説明するんだ!
幸いにも塔矢の機嫌は直ってる。今ならちゃんと話を聞いてくれそうだ。


「あの、な。塔矢。よく聞いてな。」

「うん・・・。」

「佐為の事・・・んな風に思ってないのは本当。・・・だってオレはゲイじゃないから。」

「・・・・・・。」

「おまえの事も・・・今はそんな風には思えないけど・・・、でもちゅー出来る位には好き。」

「・・・・・・。」

「それじゃ、ダメかな・・・?」


・・・嘘じゃないぞ嘘じゃ。
ってかごめん不埒で。
こんなんどうよって自分でも思うけど、でもそれしか言えないんだ。
佐為よりおまえの事好きだなんて言えない。
でも、おまえをフッたり傷つけたりしたくない。

塔矢の腕が緩んで、少し体が離れたんで恐る恐る目を上げると、
ホッとした事に微かに微笑みながら、手の甲で涙を拭っていた。


「・・・これからも、佐為さんとそうなる可能性はない・・・?」

「ない!」

「でも、ボクにはまだチャンスがあるね?」


・・・えーっと・・・それは。


「うん・・・、ない、ではない・・・かな?」

「そう・・・。それだけで、今は嬉しいよ。」


はあああ〜・・・やっと許してくれた・・・良かったぁ。


「ボクは、可能性がゼロでない限りどんな苦難を乗り越えても目的を達成する男だから。」



・・・・・・。







−続く−







※なんかすみません・・・わやくちゃですわ。






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