ファウル 18 進藤は、ボクを抱かない、と言う。 佐為さんとはそういう関係じゃないから、と。 ボクは信じる事が出来ない。 進藤のベッドに、裸で寝ていた佐為さんの残像が 見えるような気がする・・・。 「んな顔すんなよ。おまえだって緒方さんに言われて仕方なく来たんだろ?」 「ちが・・・。」 違う。 違う違う! ・・・いや、違わない。 緒方さんの命令だからと、言わなければボクはどうすればいいんだ? 「オレ、そういうの別に何とも思わないけどさ、」 「・・・。」 「相手の何でも言うこと聞いたりするのってどうかと思うぜ。」 何でも・・・ではないのだけれど。 「それにしてもひでーよなぁ。自分の恋人を他の男に差し出すなんてさ。」 うん・・・ひど・・・・・・はあ? 「今さりげなく何か凄いこと言った?」 「あ、違ったか。」 ぺろりと舌を出す。 「いやぁ、そこまで言いなりって事はさぁ。そういう事かと思って。」 何だって?緒方さんとボクが? 何だそれは!酷い! というかキミがそういう事言うか! 「ふ・・・ふざけるなっ!」 「だって。」 「だってもクソもない!キミは・・・キミは黙ってボクを抱けばいいんだ!」 「な、何だよそれ!」 勢いのままにもう一度、進藤を押し倒した。 「やめろって!」 手を下ろし、ベルトを探し当ててかちゃかちゃと外す。 「バカッ!」 パンッ! 耳が、鼓膜が破れたと思った・・・。 頬が痛い、と思う前に熱を感じ、じわじわと無数の虫が這っているような むず痒さが広がる。 その時になって漸く叩かれた、と認識した。 「あ・・・ごめ・・・。」 理屈抜きの怒りだけが湧いて、ただただ目の前の相手を睨み付ける。 誰かに手を上げられたのは生まれて初めてだった。 「だって・・・おまえが無茶するから・・・。」 進藤が子どものように責任転嫁をするようにボソボソと卑屈な声で呟く。 本当に・・・ボクはどうしてこんな男が好きなんだろう。 「あの、さ。どうしてそんなに緒方先生が怖いのか知んないけどさ、 無理な事なんてのはしなくていいんだ。」 「・・・・・・。」 「オレだって嫌がるおまえをヤりたくなんかない。」 「いや・・・がってなんか・・・。」 「だーかーら。無理すんなっての。なんなら口裏合わせたっていいぜ。 別にさ〜、佐為の代わりにってんでおまえを寄越されて納得する訳じゃないけど。 緒方先生の気がそれで済むなら、おまえを抱いたって言ってもいいよ。」 「・・・・・・。」 「しっかしおまえらってホント変だよなぁ。どこをどうやったらオレと佐為が そういう関係だとか、代わりにおまえを寄越すとかそういう話になるの?」 ・・・途中から。 じわじわと、目の下が熱くなっていた。 視界が滲み、眼圧が上がったかのように目の玉の表面が疼く。 「全く緒方先生も・・・。あれ、塔・・・?」 おろおろした声が、少しいい気味だと思った。 「あの!ホントにごめん!・・・そんなに痛かった?」 「!」 パンッ! 鳴ったのは、今度は進藤の頬。 考える前に手が動いた。 どうしようもなく腹が立った。 キミは・・・キミは、ボクがどんな思いでここにいると! どんな思いでさっきの言葉を口にしたと思っているんだ! 限界まで目を見開いた進藤。 の顔が歪んで見えなくなり、またクリアな画像を結んだと思った途端 頬の上を熱い筋が走る。 痛い。 痛い。 顔中が痛い。 さっき張られた頬が今頃になって熱を持ち、焼け落ちそうだ。 「塔・・・矢・・・。」 雑巾を絞るように熱い水分を絞り出す。 鼻の中にもつつ、と水の落ちる感覚がして慌ててハナを啜る。 「う・・・う・・・うわああああ!」 布団の上に突っ伏して、遂にボクは爆発した。 進藤に抱きついて泣こうという考えは全く浮かばなかった。 Charcoalのkai さんに頂戴しました!
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