ファウル 16 オレが後ろめたく思う必要はない筈なんだけど、やっぱり怖かった。 アイツに会うのは。 「緒方、先生・・・。」 棋院のロビーを、くわえ煙草で歩いてくる白いスーツ。 目が合う。 睨み付ける。 何の表情もなく、通り過ぎて行こうとする。 オレは動けない。 ただ仁王立ちで睨みつづけるだけ。 呼び止めて罵りたい。 佐為を返せと叫びたい。 ・・・けれど、佐為は帰りたがっていないと言われたら・・・? 本当か嘘か分からない。 佐為がそんな事を言う筈はないと思う。 でも、そう言われてしまったら、オレと佐為を繋ぐ糸は切れちゃうじゃん! 横を通り過ぎる。 煙がふわりとオレの頭を包む。 向こうも振り向いたのか? そう思ってぎりぎりと首を回したけれど、緒方先生は既に玄関を出ていた。 家に帰ると、オレのベッドから黒髪が覗いていて、思わず駆け寄った。 「佐為?!」 けどそこに寝ていたのは塔矢。 「・・・おかえり。」 「ああ・・・ただいま。」 ふう、と大きく息を吐いて、鞄を下ろす。 「遅かったな。」 「うんゴメン。研究会が長引いて。」 本当は佐為のいないこの部屋に帰って来るのがちょっと辛くて。 なんて言えない。 「どうした?」 「いや、おまえがオレのベッドに寝てるからさぁ。つい佐為かと思って。」 「・・・・・・。」 「帰ってきた時アイツ、オレの隣で裸で寝てたんだ。」 塔矢が妙な顔をするんで慌てて説明する。 いやぁ、酔っぱらって知らない間に女の子でも連れ込んじゃったかと思って 怖くてさぁ。 よく考えたらいくら酔っててもそれで全然記憶ないなんて有り得ないのにな。 しかも前の晩別に飲んでないし。 でも、だって、朝起きて隣に人寝ててみろよ。びびるぜ? 雰囲気明るくしようって軽い口調で言ったのに、塔矢はくすりとも笑わないで、 沈み込んだような顔をした。 んで・・・んで・・・。 「何で脱ぐーーーっ!」 いきなり全部脱ぎ始めたかと思うと、ベッドの上からオレを手招きした。 「な?な?」 「いいから。」 「いい、いいって?」 まだ靴下も脱いでいないオレの手を引っ張って、布団の中に引きずり込んだ。 「ととと、」 剥き出しの腕でオレを抱きしめる。 な、なんですかーーー? 「ボクが・・・佐為さんの代わりに、なるから・・・。」 「は?」 ・・・でもそう言ってオレの頭を撫でる手は、いつの間にか大きくなっていて。 少し佐為みたいかも。 そう思ってしまった。 そういや佐為の裸見た時何となく塔矢を思い出したな〜・・・。 『ヒ・・・カル?』 そう言ってオレを抱きしめた佐為。 ・・・あ。 まずい。 鼻の奥がツンとしてきた。 泣いちゃう。泣いちゃいそう!塔矢の前で? そう思っても、そう思ったらもう止まらなくて。 ぎゅっと目を閉じたら涙がぽろりと零れてほっぺを伝い、 塔矢の腕に落ちた。 その途端、塔矢がいっそうぎゅっとオレを抱きしめる。 泣いちゃったのバレたか・・・。 途端、ストッパーが外れたみたいにどんどん涙は溢れ出し。 今更誤魔化しても仕方がない。 オレは塔矢の言葉に甘えることにした。 ベッドの中で塔矢に縋り付いて、またわんわんと泣いた。 どの位経ったか。 だいぶ泣いて気が済んだ。 アイツが幸せならいい。 そんな事言いながらオレ、やっぱ佐為がいなくなって相当堪えてたんだな〜。 「ご・・・めん、な。」 塔矢の胸を押すと腕が緩んだんで、頭を抜き出して枕元のティッシュを取って ちーんと鼻をかむ。 「あ、ありがとな。楽に、なったよ。」 布団の上に座って、下に落ちていた塔矢の服を拾う。 「もう、いいよ。服、着て。」 そう言って渡そうとした手が、押さえられた。 ・・・? 「・・・言ったろう。佐為さんの代わりにしていいって。」 って、もう泣かせて貰いましたけど? 「キミも、服脱げよ。」 ・・・・・・はあぁ? 「ちょっ!ちょっと待っ・・・!」 待て待て待てえい! 何で押し倒す?何で服の下に手ぇつっこんで来る?! 「やめろって!」 「人が一大決心をして言っているんだ!恥をかかせるな!」 「いや、だから何決心したんだよってんだよ!」 「だから!」 Charcoalのkai さんに頂戴しました!
・・・・・・えええーーーっっ! 「・・・そういう訳で、緒方さんは佐為さんを貰う代わりにボクをキミにやるらしいよ。」 「らしいよって!」 「だからボクはキミのものだ。好きに・・・佐為さんにするのと同じ事をしていい。」 「さいっ?さいっ?」 落ち着け・・・落ち着けオレ。 さっきからまともな言葉発してないぞ。 塔矢はまともな文章発してないし。 ・・・どうも塔矢兄弟弟子は何か大きな勘違いをしてくれちゃってらっしゃる。 多分塔矢が言いたいのは、佐為とオレはほもっていうかそういう関係で、 だから恋人を取られたオレに塔矢はあてがわれた・・・。 ち が う で しょ? 色々ツッコミ所は満載で、どこをどう突き崩してもいいんだけど。 取り敢えず。 「塔矢は、それでいいの?」 「だから!それを決心したんだと何度言えば分かるんだ!」 しまったー!アテ間違えた。 「違う、オレが言いたいのは、おまえは取引に使われるような『モノ』じゃねーだろって事。 緒方先生に進藤にヤられろって言われて、はいそうですかって決心するような そんな仲なの?」 「どういう意味だ?」 「つまり〜。おまえは緒方先生の言う事は何でも聞かなきゃならないような そういう立場なのかって。」 「・・・・・・。」 考えてる・・・考えちゃってるよ塔矢。 てことは、そうだって事なのかなぁ。 何か凄い弱み握られてて逆らえないとか・・・。 いや・・・もしかしておまえって緒方先生の・・・その、ナニなの? 自分たちがそうだからって、佐為とオレもそうだって。 そういう珍しい発想になるの・・・? 「キミは・・・嫌なのか?」 「嫌に決まってっだろ!!!」 「・・・・・・。」 ・・・その時の塔矢の顔は。 後々までオレを苦しめるほど、悲痛なものだった。 「いや・・・、嫌っつっても、そのおまえが嫌いな訳じゃなくて、」 「・・・・・・。」 「あのな!そもそも、オレはホモじゃねえの!佐為ともそんな関係じゃないの!」 何言い訳してんだオレ・・・。 しかもまだ塔矢に疑わしそうな顔されてるし・・・。 −続く− ※思い切ったアキラさん。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||