W or L 5
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私は、何に腹を立てていたのだろう。
夜神を滅茶苦茶に犯してやりたいと思って、浴室に誘った。
お互いにそんな事は全く望んでいないのに。


「あっ、」


無言で石鹸を泡立て、それぞれ自分の体を洗っていたが
ふと思いついて夜神の腰を後ろから抱き、尻に指を入れると
思いがけずするっと入ってしまって驚いた。
夜神も予想外だったのだろう、何か情けない声を上げる。


「待てって、いきなりすぎ、」

「すみません。石鹸が滑りました。痛かったですか?」

「いや、意外と……大丈夫だけど」


そう言いながらも眉根を寄せ、タイルの壁に手を突く。
指を出し入れしてみると逃れるように息を荒げるのに
私も妙に興奮した。


「随分すんなりと入りましたけど、初めてじゃないんですか?」

「まさか!」


大きな声を出すと中が締まり、本人も「つっ」とまた俯く。
指をもう一本増やして前の方を探ると、押すと丸みを感じる場所があった。


「ひっ、あ、」


夜神が、あらぬ声を出して膝を曲げた。
ここが前立腺か。
普段の彼らしからぬ耐性のない反応だと思うが、
男ならまず抗えないと聞く。


「ここを私のペニスで突けば、月くんも気持ちよくなるのですね……」

「何だ、これ、」

「知らないんですか?前立腺です」

「ああ……そうか、だっ、触らないでくれ」

「そういう訳にも」

「なら!もう少し、優しく、というかその前にちょっと膝を、」


夜神の体が崩れてずるずると床に膝を突く。
指が引っ張られて、一旦抜くかどうか迷ったが、結局抜かないままに
私も膝を突いた。

夜神の指が引っ掻いたタイルの壁に、指の幅の泡の筋が残っている。
目の前で白い背中を見せて、大きく肩で息をしている。
額を壁に付け、恐らく冷たさで冷静さを取り戻そうとしている。
乱れた前髪が壁に貼り付いて、上を尖らせた不思議な形を幾筋も見せている。

当たり前だが、どれも初めて見た姿だ。

手錠で繋がれていた頃、一緒にシャワーを浴びた事もあるが
髪や体を洗う仕草までが洗練されていた。
ナルシスト染みないよう年相応の若者の無骨さを残しつつ
些細な隙も見せない、映画かCMのように計算された動きだった。

その完璧な夜神の崩れた姿。
見てはいけない物を見たような、後ろめたさと悦楽がある。

知らず、私が、反応する。


「月くん。早速で申し訳ないんですが、今なら私、勃起してます。
 入れていいですか?」

「……がっつく、なよ……」

「がっついている訳ではなく、チャンスを生かしたいんです」


夜神は辛そうだったが、最初から犯すつもりだったのだから関係ない。
石鹸のぬめりを借りて、指二本入ったのだから大丈夫だろう。

指を抜いて腰を掴むと、手が這い逃げようとするように幾度か
バタバタと動いた。
が、私が何か言う前に驚くべき自制心で大人しくなる。


「うっ……!」


それでも先を入れると全身が硬直して、私自身も痛んだ。
これでは動かすことも出来ない……。

抜けば恐らく、二度と入れさせてくれないだろう。
かと言って無理に進めば、夜神を傷つけるか、あるいは
締め付けの痛みに萎えてしまいそうだ。
何としても夜神に力を抜いて貰わねば。

背中に手を置くと、またびくりと震える。
私も苦痛に思わず顔を歪めながら、ゆっくりと滑らせた。
そして尻を出来るだけ優しく撫でる。


「月くん。痛いんですか?」

「待っ……ごめん!」


それは突然だった。
夜神がこれまでの大人しさが嘘のように全身をくねらせて、抵抗し始めた。
このままでは折られそうな気がして思わず腰を掴んでいた手を放す。

四つ這いで私から逃れた夜神は、そのままトイレに向かい、
便器に縋ってげえげえと夕食を吐き始めた。





「悪い……続ける?」

「さすがに萎えますよ……。吐く程嫌なら、そう言って下さい」

「いや、気持ち悪いと言うよりは、初めてだったから緊張して」

「もういいです。
 所詮あなたは、男に抱かれる事なんて出来ない人なんです」

「そんな事ない。もう吐く物もないし大丈夫」


そう言われても、失礼ワード満載で、したくないのが見え見えだ。
自分から止めてくれと言いたくないからだろうが、
私だってとても出来る状態ではないのだから白々しい。


「あなたが昨夜みたいに勃ててくれれば、続けられなくもないですが。
 まだ吐き気が残っているでしょう?それで私のを銜えられますか?
 喉の奥にまで入れて、大きくする事が出来ますか?」

「……」


夜神は手で口を押さえた。
わざと吐き気を催すような事を言ったのは、ちょっとした仕返しだ。


「もう、寝ませんか」

「……ああ。そうだな」


夜神は、やはりホッとした顔をする。
無理なら無理だと、最初から言えば良いのに。


その晩私たちは、ダブルベッドの端と端で窮屈な思いをしながら寝た。





--了--






※何でも出来る月くんですが、同性愛行為はさすがに苦手そう。
 その苦手さに何だか萌える!たぎる!変態ですみません。

※タイトルは意味もなく「L/ change/ the WorLd」の一部です。
 今回の「L」はライトの「L」でした。
 
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