獅子の翼 10 「よく、出来ました」 額に手を置かれ、久しぶりに目を開けるとすぐ目の前にLの顔があった。 中々イけなくて、自分の精神や肉体を手探りして。 まるで初めて自慰をした時のような妙な達成感がある。 「……抜いてくれ」 それを隠して素っ気なく言うと、竜崎は苦笑して離れて行った。 熱が、出て行く。 閉じない肛門の内側に、ひんやりとした外気を感じる。 意識せずともじわりと閉じると、中から生暖かい粘液が垂れるのが感じられた。 Lが中で出したのか、僕が僅かに漏らしてしまったのか分からなかったが、どうでも良かった。 ティッシュで無言で腹の上を拭かれ、尻の間を拭かれ、まるで赤ん坊のようだと思う。 抵抗する気にもなれない。 というか、手首の拘束を解いて貰っても動けない。 「シャワー浴びます?」 「無理。しばらく動けそうにない」 「良すぎて、腰が抜けました?」 じろりと睨んでは見るが、そう言われても仕方のない失態だった。 こんな感じ……初めてだ。 「それより、約束守れよ」 「分かりました。ちょっと待って下さい」 それからLは、湯を絞ったタオルを持って来て、全身を拭いてくれた。 さっぱりした所で、裸のまま僕に密着するように横たわる。 「……何でくっつくんだ……」 「一応、ピロートークという体で」 それから少し目を見開いて僕の顔を覗き込んだ。 「私の事は、分かってますよね?」 「探偵L」 「それは分かってたんですね。違和感があるような気がしましたが」 「……おまえがLだと思うのは、推理したからだ。 正直最初は誰だか分からなかった」 Lはなるほど、と小さく頷いて続ける。 「東大に入学する前ですね。 FBIの捜査官を殺した事は?」 「覚えてない」 「刑務所内の犯罪者を一時間置きに殺した事は?」 「何だそれ。デスノートの使い方を実験してたのかな?」 「多分そうですね……TV中継でリンド=L=テイラーを殺した事は?」 「ネットのキラ事件概要で知った」 Lは、ますます目を見張って少し仰け反った。 「そんな……という事は、」 少しだけ考えて呆れたような口調で続ける。 「デスノートを使い始めて、僅か数日しか覚えていないと?」 「自分の感覚では、五日目に目覚めたらこの部屋だったんだ」 「私、高校生を抱いてしまったんですか……」 「精神的にはね」 Lは僕の身体を抱きしめ、肩口の辺りで小さく 「それは……申し訳ありませんでした……」 と呟いた。
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