トゥーランドット「心に秘めた大きな愛です」6
トゥーランドット「心に秘めた大きな愛です」6








しかし、何故……。
夜神には理由があった筈なのだ。
私を裏切ってまで、デスノートを使う理由。

まず、あの女が、「死神の目」を、持っている可能性があると
夜神は考えていた。
という事は、デスノートを持っている可能性も。

しかし死神の話によれば、女は少なくともすぐには夜神を
殺すつもりはなかったらしい。

彼を送って行った時、門を開けてくれたひっつめ髪の女を思い出す。
あれは変装した姿だった訳だが……。

あの女が……。


……!


……私は、車のガラス越しとは言え、彼女と顔を合わせた。


あの女には、私の本名も見えていた……。


と、夜神は考えた?


「ライトくん」

「……」

「彼女を殺した理由は、まさかとは思いますが……私を、」


殺させない為に、と言う前に、夜神は勢いよく振り向いた。


「……」


戻って来てから初めて見せた大きな動揺だ。
まさか、本当に?

しかし、という事は犯人の最終目標は、私を殺す事……?
いや、だが。
デスノートは、持っていなかった……。


「なぜあなたは、あの女がデスノートを持っているかも知れないと
 思ったんですか?」


話の展開は唐突だが、夜神なら着いて来られるだろう。
その回転の速さ、前置きや確認の必要のない会話を、私は愛した。

夜神は顔を戻し、しばらく迷うように黙り込んでいたが
こちらも黙ったまま待って居ると、観念したように静かに口を開いた。


「……サイコパスの、特徴を知っているか?」

「はい?……ええ、当然」


  良心の異常な欠如
  慢性的に平然と嘘をつく
  行動に対する責任が全く取れない
  過大な自尊心で自己中心的


「あの女は、嘘を吐きすぎて何が本当で嘘か
 自分でも分からなくなっていた」


何の、話だ?
今度は私が、彼に着いて行けないのか?


「彼女は本気で、自分がキラだと信じていたんだ」

「……」


ここで、キラの名が出てくるとは。
あの女は……そうだったのか……。


「自分が信じているからその嘘には信憑性があり、
 何人もの少女が騙された。
 そしてこの僕でさえ、騙されかけた……」

「なるほど……」


それで夜神は、彼女がデスノートを持っているという疑いを捨てきれなかった。

そういう事も、あるだろう。
妄想の世界で生きていた、もう一人のキラ。

そして、キラだから、Lを殺そうとした。


「だからあなたは、私を守る為にデスノートを」

「違う。彼女には僕の名前が見えていると思ったし
 殺されたくなかったら、その前に殺すしかないと思った」

「でも、仲間になれば殺さないって言われてたんですよね?」

「……」


夜神は口惜しそうな顔を一瞬見せた後、海に背を向けて
まっすぐにこちらの目を見つめた。


「もし見えていなくとも、罪に問われない大犯罪者である彼女を、
 僕は、そのままにしておけなかった。……キラとして」

「……」


それは、私に対する挑戦か。
自分はまだ、キラであると。

死ぬその瞬間まで、キラだ、と。


「罪に問われない大犯罪者、ね」


まるでキラだ。
皮肉を込めて言ったが、夜神はどこか上の空で
眉一つ動かさなかった。
そして、何故か少し苦しげな顔をして。


「おまえも……」

「はい?」


何故、そんな顔をするんだ?
夜神は殆ど無表情だと言うのに、不思議と今にも
泣き出しそうな表情にも見えた。


「おまえも、サイコパスなんだろ?」






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