トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」6
トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」6








「参ったなぁ。俺ってそんなに印象薄い?」

「……ごめんなさい」

「本当に全然覚えてないのか?それとも忘れたふりしてるのか?」


しまった……キャラフとこの男は、思った以上に親しかったらしい。
それでも僕と別人だと気付いていない様子なのは幸いだが。


「ちょっと……気分が。ごめんなさい、後片付けお願いして良いかしら」

「部屋まで送るよ」

「大丈夫」

「そんな事言うなって」


いつの間にかテーブルを回って僕の隣に来ていた男が、
僕の肩を抱いたと思うと膝裏に手を回し、体全体を持ち上げた。


「やめ、」

「背の割りに軽いね」


胸に触れられないよう必死で体を丸める。
これはいわゆる、「お姫様だっこ」とか言うやつか……?
人生でこんな事をされたのは、初めてだ。


男は軽々と僕を持ち上げたまま階段を上り(かなり怖い)
部屋まで運んでくれる。
ドアの前で一旦下ろしてくれたので安心してポケットから鍵を取り出し
中に入ると、後から着いてきてドアを閉めた。


「ありがとうございます……もう、ここで」

「殺生な事言うなよ」


えっ……?


当たり前と言えば当たり前の展開だ……。
男は僕をあっさりとベッドに押し倒した。
のし掛かられて、抵抗しようにもびくともしない。
ウエイト差がありすぎる。


「やめて下さい」

「いいじゃないか」

「良くありません。大声を出します」

「他に人は居ないぜ」


くそっ!こうなったら急所を蹴り上げてやるか。
同じ男として、出来ればしたくない事だが。


「クールビューティーのあんたが、ここまで油断するなんてな」

「……ビールに、何か」

「何。風邪薬さ」


バカな……。
油断と言えば油断だが、今日出会った男がいきなり薬を盛って来るなんて
思わないじゃないか。
というか、本当にスカートの中に手を……!


「やめて」

「良いだろ。あんたの為にあんな事までしたんだ」


何を、したって……?
聞き出さなければ、と思うが、状況に混乱して思考が鈍り
何も言葉が出て来ない。

それどころか、口を熱い唇で塞がれた。


「あんた、セクシーな匂いがする」


Lの甘い香りの移り香か。
それとも、僕自身の情事の残り香か。

男からは、ビールの匂いと混ざった、獣のような匂い。
ざりざりと当たる髭。


嫌だ……!


必死で膝を閉じても、太股をじりじりと撫で上げスカートをめくり上げる手。
ブリーフの中に指を入れ、尻を撫でても男だと気付いかない様子なのは
助かるが……。

いっそもう、胸を隠すのを止めて、男だと言ってしまおうか。
しかし、それをすれば逆上される可能性もある。

そんな事を言っている場合じゃないか……。
このまま続けられたらいずれ分かるんだし、それまで我慢するのも無駄だ。

いや、万が一バイセクシュアルだったどうするんだ?

……万事休す!



その時、男の肩越しに死神がニヤリと笑った。


『助けて欲しいか?ライト』


リューク!
頼む、助けてくれ……!

何度も頷いたが、リュークは嫌な顔でもう一度笑った。


『やーなこった。自分で何とかしろよ』






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