トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」4
トゥーランドット「誰も寝てはならぬ」4








「え……」

「正解、してしまったみたいだな」

「……」

「勘だよ、勿論」


一瞬僕を疑わしそうに見たLに、慌てて首を振る。


「でもこれで、トゥーランドットは新たな動きをせざるを得なくなったな。
 近いうちに第三の謎かけをして、僕の正体を探ろうとするだろう」

「正体がバレたらどうするんですか?」

「バレる訳ない。おまえが寄越したPCだって、特定出来ないよう
 細工くらいしてあるだろ」

「そうですが」

「それに、トゥーランドットが今回の事件に繋がるとも限らないし。
 今後書き込まなければ万が一死神に見られたって
 僕が書き込み主だって分かりようがないだろ?」

「……」


Lは眉を寄せて、僕の顔を凝視した。


「……やはりあなたも、デスノートだと思いますか」

「だからこそ、書き込んだんだ。おまえだってそれは分かってただろう?」

「ええ、まあ」

「これだけバラバラの殺され方をしたらどうしても連想するよ。
 だが、可能性がある、という程度に過ぎない」

「それはそうですが。
 もし死神が全面的にトゥーランドットに協力をしているのなら
 あなたの名前が偽名だと分かった時点で危ない」

「リューク。アメリカに来てから、人間界で死神を見たか?」


見上げて言うと、キャデラックの天井からぬっと死神の面が現れた。


『死神づかいが荒いな。でも、ライトが喋った範囲の人間には
 憑いてなかったぜ』

「という事だ」


実際、どういう手段で殺しているのかは分からない。
だからと言って、デスノートで殺していると仮定してしまうと、思考停止してしまう。
僕が言うのも何だが、それはさすがに危険だ。


「範囲を学校全体に広げて調べて貰えませんか?」

『面倒くさいからやだ』


Lは溜め息を吐いて、漸く下着を上げた。


「私は、この掲示板には重きを置いていません。
 中国の姫、謎解き、不謹慎な憶測、あまりにも芝居がかっていて稚拙です。
 恐らく事件を利用して狂騒状態を作り出して楽しんでいる子がいるのでしょう」

「まあ、恐らくそうだろうな。でも今は他に手掛かりもないし」

「あなたの方から報告はありますか?ライトくん」


僕は主観を交えず、リューとの会話、その後のアマンダとの会話を伝える。


「こちらも、書き込みをした機種から販売履歴を調べ、何名かは
 特定出来ました。
 トゥーランドットの謎かけには答えていませんが、トゥーランドットを騙った中に
 薬物中毒で死んだ者が居ます」

「全員の写真、手に入るか?」

「勿論」


“abyss”の書き込みでトゥーランドットに関係している者の写真を並べて表示し
死んでいる者と、生き残っている者を分ける。
Lは、生き残っている者の群の写真の一枚を指差した。


「この人、まん丸ですね」

「メアリー・ゴッツィ、か」


これは……。
ブルネットのルーシー・パンの言葉を思い出す。


『まあ、一言で言えば“美人”ですね』


「どう思う?この写真群と、こちらの写真群」

「さすがに私にも分かります。
 こちらは左右対称の顔で、化粧が上手い人が多い」

「いや、一般的にはもっとシンプルに、美人って言うんだよ」

「なるほど」


殺された中で一番地味な子と、殺されなかった中で一番整った子は
差はないが、アベレージを取れば殺された方が圧倒的に美人が多い。

まさか本当に、パンの言う事が当たっているのか……。


「正体が掴めなかった書き込み主の中に、殺された女の子達が居たら
 ちょっと調べる価値が出て来ますね」

「至急、彼女たちが持っていたPCや携帯の機種を調べる」

「よろしくお願いします。でも……」


そう言ってLは、僕の首を掴んだ。


「?」


突然なんだ?と戸惑っていると、顔が近付いて来て、唇に触れられる。
また貪るようなキスを予想したが、唇は軽く触れただけで離れて行った。


「気をつけて下さい」

「……ああ」






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