トゥーランドット「お聞き下さい、王子様」3
トゥーランドット「お聞き下さい、王子様」3








アメリカ人に別れを告げ、預けていた手荷物もないので真っ直ぐに出口に向かう。
あれ以降Lから連絡がないが……。

と思った瞬間、携帯が鳴った。


『そのまま正面の駅からエアトレインのブルーラインに乗って下さい』


短いメール。
どこかから本人が見ているのか。
それとも迎えの者か。
考えても仕方が無いので、顎を上げて真っ直ぐに進む。

エアトレインで空港から出た頃、


『レンタカーセンター駅で降り、赤いBMWカブリオレを探して下さい』


とまたメールがあった。
無免許で運転しろとでも言うのか?


駅で降りて、さて、と見渡す。


『ライト、居たぜあいつ』


リュークに言われるまでもない、既に駅前の車寄せに
目立つオープンカーが止められていた。
そして助手席……いや、左ハンドルだから運転席だ、そこには……


Lが乗っていた。


たった、一週間。
一週間会わなかっただけだ。

なのに、酷く懐かしく感じた。

空港で、飛行機の中で、エアトレインの中で沢山の人間に会った。
人酔いするほどだった。

なのに、Lは全く違う。

長い間一緒に暮らしていたから……あるいは肉体関係を持っていたからか。
いや、そんな物ではない。

この酔いは。


とは言え、弱みを見せるわけにも行かないので、荷物を抱え直して
平静な顔で歩いて近付く。

Lはハンドルに手を乗せ、その上から目だけを出して僕を凝視していた。
恐らく僕がターミナルから出た瞬間から見ていたのだろう。
その絡みつく視線に……服を脱がされるような気がした。


「お久しぶり」


今日はまだ月曜日。
務めて何気なく女の口調で言いながら、


「後ろに荷物を置かせて下さいね」


後部座席にキャリーバッグを置いて何気なく助手席に乗り込んだが
Lはハンドルに突っ伏したまま無言だった。


「リューザキ?」


もう一度声を掛けても動かないので、


「……どうかしたのですか?」


「朝日月」の声と顔のままで微笑みながら言うと、Lはじわじわと
こちらに顔を向け、初めて口を開いた。


「……すみませんが、ライトくんモードでお願いします」

「何故?」

「こんな所で、我慢できなくなりそうなので」


目を下に向けると、Lのジーンズの股間が……盛り上がっている。
僕は思わず苦笑した。
Lは、憮然としてエンジンを掛けた。


「安心して下さいライトくん。今回はそういう事はしません。
 仕事で来て貰っていますし……」

「ああ」

「リュークさんもよろしくお願いします。
 今回はあなたの手を借りる事になるかも知れません」

『ええー……オレは基本、人間の手助けなんかしないぜ』

「そう言わず」


好んで女みたいな立ち居振る舞いをする程、酔狂でもない。
言われた通り、ライトとして返事をし、ライトらしく足を組んだ。

それにしても、そうか……今回はベッドの上の肉体労働は、無しか。

当然、すぐさまヤられると思っていたので拍子抜けした。
……いや。
こんな事を言って油断させて、ホテルに着いたらすぐに押し倒して来るというのも
ありそうな事だ。


「あなたには過酷な仕事をお願いする事になる可能性があります」

「過酷な仕事?」

「過酷な上に危険です。まあ、そうならない事を祈っていますが」

「?」


それからLは車を走らせ、郊外に向かった。






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