Strong smile 4
Strong smile 4








「暴れないで下さい!」


昨日のように中途半端で止まっては辛いからと、一気に貫いてしまったが
裏目に出たようだ。
夜神は一気に萎え、脚を硬直させて腰を浮かせる。
自然締まって、私も涙が出そうな程痛む。


「括約筋の収縮は、すぐに納まります。耐えて下さい」


目を見開いて、はくはくと浅い呼吸を繰り返していた夜神が
徐々に落ち着いて行った。
しばらく待つと体も締め付けも緩んで、動かせる状態になる。


「大丈夫ですか?」

「……ああ。もう、そんなに痛くない」

「動いて良いですか?」

「ああ……」


ゆっくりと抜いて、挿して、抜いて、挿して、しばらく夜神の中の感触と
体温を楽しむ。
夜神は撃たれて死にかけているウサギのように静かな目をして、
ただ「はぁ、はぁ、」と大きく呼吸をしていた。

ある程度弄んだ後、反応が欲しくて注意深く前立腺を押してみる。


「やっ、」


顕著なリアクションが返ってきた事に満足して何度もこすると
夜神は喘ぎながらも咎めるような視線を寄越した。


「気持ちよくないですか?ここ」

「気持ち、良いかも知れないけど、それでイくとか、そういうの、無理、」


……目の潤ませて、切なげに眉を寄せながら。
自分から私を誘っておきながら自分は私の飼い犬だと口先で言いながら

そんなに。

そんなに、私を拒むな。

私に、飼われろ。夜神月。





「月くん。セックスというのは、相手が悦ければこそ、自分も気持ち良いのです」

「なんの、」

「女性が感じている演技をするのは、そうする事によって男性も感じ、
 結果自分も本当に悦くなるからです」

「何の、話だ」

「だから月くんも、演技で良いから感じて下さい。
 感じている振りをして下さい」


私を飼い慣らしたいと言うのならば、まずは自分が尻尾を振って見せろ。
そうすれば私も慣れた振りをしてやる。
……その後、本当に飼い慣らしてやるが。

夜神は、何かを見極めようとするかのように私の目の奥を覗き込んでいた。
何故、自分まで感じた演技をしなければならないのか。
私の言葉に従って良いのかどうか。

性行為の、意味が夜神の頭の中で解体する。
なぜ人は行為をするのか、愛しているからなのか愛されたいからなのか
信頼しているからなのか性行為の悦楽と信頼度は比例するのか

やがて「私たち」のこの行為の意味に立ち返り、夜神の思索は収束した。


「……どうすれば、いいんだ?」


目を合わせるだけで、これ程考えが流れ合う経験は、初めてだった。
夜神の目を見るだけで、その短く抽象的な思考の旅が全て見えた。
そして恐らく、その見えた事は夜神にも伝わっている。

私たちは今初めて、本当に行為に合意した。

即席の信頼関係を築くため、
快楽を追う事に最大限の努力を払う無言の契約を、結んだ。


「それは、考えて貰わないと」


落ち着かせる為に口の両端を上げて見せると、何故か狼狽えた顔をする。
つい眺めてしまうと、面白がっている事が分かったのか、
顔を逸らして目を閉じた。


「決まりましたか?」
 

しばらく黙考していた夜神は、やがて薄くだけ目を開けて私を見る。
先程のように思考を読まれる事を警戒しているのか。
それでも、唇を開いて、赤い舌をわざとちらりと見せて。


「……痛いけど、」


ゆっくりと、私の首に手を回して。


「気持ち、良いよ……とても」

「……」

「もっと奥まで、おまえが……欲しい」


私を抱き寄せ、耳に吹き込むように言われて。
ずきん、と痛みを感じるほどに、そこに血液が流れ込んだ。

ポルノ映画の中の恋人のように、陳腐な科白。
だが近くてもお互いの顔が見えない、この距離は、
私たちに似合っているように思えた。




私も夜神の背を強く抱きしめ、その肌の感触とその下の筋肉の動きを
楽しみながら、思いのままに腰を動かした。

深く、浅く、突いていると、腹に当たっている夜神の先が私の臍に引っかかり、
小さな呻き声が聞こえる。
私の臍は、濡れていた。

いつの間にか夜神がそんなに感じていた事に気分が良くなり、
手を添えて刺激を強める。
中でも前立腺をこするように動かし続けると、
すぐに私の動きに合わせて尻を振るようになった。


「あっ、あ、竜崎……、竜崎、」


何度も、うわ言の様にその名を呼びながら、「演技」らしからぬ
強い力で私の肩を掴み、爪を立てる。

やがて動きが早くなると、夜神は歯を食いしばったまま、
何かから逃れようとするかのように頭を右に左に振り始めた。

構わず追い詰めると喉を反らし、絶望したような瞳に涙を、
……恐らく悔し涙を浮かべ、最後に断末魔のように私を睨んで
その精を放った。


私は夜神を捕らえ、屠った事に満足して、
獲物の中に所有の印を、注ぎ込んだ。






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