Sleepless night 4
Sleepless night 4








朝、シャワーの音で目が覚めた。
夜神が先に起きて使っているのだろう。
ベッドの中で今日の手筈を考えていたが、どうも水音が長すぎるように思う。

やがて、着替えて肩にタオルを掛けた夜神が出てきたが
私が起きているのに気付くと、ギョッとしたように首に手を当てた。


「……」

「……」


目と目を合わせたまま、双方静止する。

なるほど……キスマークに気付いたか。
私に見られるのを恐れて思わず隠したが、それで余計に
目立たせてしまった事を、抜かったと悔んでいる所らしい。

そして、私の反応で既に私が知っていた事にも気付いた……。


Lも、迂闊な事をしたものだ。
男の首にキスマークを残すなんて。


「……」

「……」


……いや。

Lに、「迂闊」はない。
彼は、無意味な事をする事はあるが、間違えた事はない。
キラ事件で、証拠不十分故に夜神を捕らえなかった事も含めて。

わざと?

敢えて、首に痣を残した?
位置から考えて、本人に見せる為というよりは……。


……って……。


馬鹿じゃないのか?!




「夜神」

「……何」

「こちらのセリフですよ。早く着替えさせて下さい」

「ああ……」


夜神は今目が覚めたかのように背を伸ばし、クローゼットを経由して私の前に来て
パジャマのボタンを外し始めた。
長い指を操りながら、


「……知ってたなら、言ってくれれば良いのに」


ぼそりと言う。


「それは昨日の私のセリフですが。
 しかし無かった事にはしないんですね。少し見直しました」

「信じてもらえなくても仕方ないが……これはキスマークじゃない」

「そうですか」

「こんな物を付けられたらさすがに気付くし、見られないように気をつける。
 これは昨日Lとちょっと喧嘩して……多分その時ついたんだ」

「それはそれは。随分激しい『喧嘩』だったようですね?」


夜神は大きく溜め息を吐くと、肩を竦めて首を振った。


「もう良いよ……」

「私はまた、Lの私に対する牽制かと思っていました。
 あなたとデートし、いかがわしいホテルに行った事に嫉妬して」

「お前ね……Lはそんな奴じゃない。
 っていうかアイツと僕の関係を何か誤解してないか?」

「さあ……どちらにせよ興味ありません」


これは本当だ。
実際、私が同性同士の性交に、偏見か興味があるタイプだったら
このチームは成立していない。


「所で……いつから、その、これがキスマークだと思ってた?」

「昨夜、私はエレクトしましたがその直前です」

「……」

「とでも言えば面白いですか?」


夜神は軽く目を見開いた後、白い歯を見せた。


「ニアも、冗談を言うんだな」


……苦し紛れに半分本当の事を言ったが、どうやら気付かなかったようだ。
私が夜神を騙しおおせたのは初めてかも知れない。


「……いや、それとも」


だが夜神は目を細め、突然手の動作のスピードを落とした。
ボタンを外し終わった私のパジャマのシャツを、いつになくゆっくりと
肌に這わせるようにして滑らせ脱がせる。


「本当に、してみる?」

「……」


私は……不覚にも、言葉を失い固まってしまった。
ただ、手首の辺りから……腕、二の腕、と、順に体毛が
逆立っていくのを感じる。

それを目の当たりにした夜神は、盛大に吹き出した。


「ごめ……おまえ、凄い鳥肌だな!」

「……ええ。こんなにぞっとさせられたのは、初めてあなたと
 寝た時以来です」


屈辱に、思わず眉間に皺が寄るが、これは仕方ないと我ながら思う。
涼しい顔で「ええ良いですよ」とでも返せれば大人らしいのだろうが
それは今の私には到底無理だ。

ざらざらした感触の腕を摩っていると、夜神は笑いながら新しいパジャマを
着せ掛けてくれた。





二人でモニタルームに行くと、Lは既にPCの前に座っていた。


「おはようございます。まだメールの返事はありません」

「おはよう。そうか。まあ逆探知に拘らず、まず金髪から来る質問や要求を
 予想してシミュレートしようか」

「そうですね」


Lと夜神は普通に会話をしているが、私は……つい、黙り込んでしまった。


「どうしました?ニア」

「いえ。何も」


それを聞いた、夜神の手がぴくりと上がり、首筋に触れる。
朝の事を思い出したのかすぐに離したが、Lは目ざとく気付いたようだった。

だが夜神は、キスマークにも触れず、私の勃起の事も今朝の会話も
Lに伝える気はないらしい。
私も……絶対に隠すというつもりはないが、自分から言うつもりも全くなかった。


「二人とも……何かおかしいです」


不審そうなLにまた、「いえ、別に」と答える。
のと同時に、夜神は何を思ったか突然、だがさりげなくLにキスマークが見えるよう
体の向きを変えた。
そしてニッと笑いながら、


「昨夜はニアが男だって事を思い出したよ」


と答える。
何を言い出すんだ……!

いや、間違いではないというか確かにそのような事を言っていた。

でももしあれがLにつけられたキスマークでないというのが本当だったら
というか、どうもその可能性の方が高くなってきたようだが、

……それは、物凄い誤解を生まないか……?

いや、それを狙っているのか。
私が説明を出来ず、Lも詰問できない事を承知の上で。


「……」


私がLに何か尋ねられたら、仕方ない、本当の事を言おうと覚悟したが
彼はしばらく黙った後、真面目くさった顔で「何の事か分かりません」と言った。

今回は勝負なしとする、か。



……が。
それからの打ち合わせ中、Lは普段の三倍程お菓子を食べこぼしていた。

いつもはぶつぶつ言いながらLの食べこぼしを片付ける夜神だったが
今日に限っては黙って機嫌良さそうに掃除をする。
Lはまた、ムキになっているかのように食べこぼす。


「ですから、まず金髪の動きを止める事が最優先です。
 月くんの動画の件には一切触れません。
 先方から話を振ってきたら……」


話をしながらもひっきりなしに甘い物を床に散らし続けている。
にこにこしながらそれを掃除をしていた夜神だったが、一時間経った頃、
突然真顔になって立ち上がり、Lの襟首を掴んだ。
Lもほぼ同時に、夜神のネックレスを掴む。


「……おまえ。いい加減にしろよ」

「何の事か分かりません」


夜神の手が持ち上がり、素早く拳を作ってLの腹に一発入れると同時に
Lの足が夜神の脇腹にめり込む。

二人が同時に吹っ飛ぶのを見ても、止めようとも思わない事に
私は自分の成長と諦観を感じた。






--了--






※18000踏んで下さいました、いくさんに捧げます。
 リクエスト内容は


 横文字で、「ニアと夜神がどういう関係になろうが私は気にならないが」と
 なかなか度量の広さ(笑)を披露してくれたLですが、
 「本当ですか、L?」
 ってことでこの部分の突っ込みをお願いいたしますw

 もちろん、ニアも月もお互いそういう対象には思っていないでしょうが
 毎日添い寝していて、ニアもお年頃には違いないので、
 アクシデントぐらいはありそうw

 との事でした。
 いや〜、とても何となく書いた一文だったので「そこかー!」と驚きました(笑
 細かい所まで読んで下さってありがとうございます♪

 Lだったらどうするかなぁ……と思いながら書いていたのですが決まらず
 最後の最後で「幼稚で負けず嫌い」という事を思い出しました。

 Lが態とキスマークをつけたのか、そうでないのか迷いましたが
 そこまであからさまに嫉妬はしないだろうと思うので、前回の「揉みあい」を
 利用してみました。

 
 リクエストした側としては、とりあえずLがいつもの

 「自覚がないので余計に始末におえない月に対する無限大の嫉妬深さ」
 
 を発揮した反応をみせてくれることを期待しますw
 (Lは嫉妬してナンボ、ですから笑)

 ニア視点なので見え見えですが、L自身としては自覚が無い、
 というテイでお願いします。

 いくさんこんな感じでよかったでしょうか?
 ナイスツッコミリク、ありがとうございました!






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