恋愛勘定 5
恋愛勘定 5








……射精したい。
体を反転させる事さえ出来れば、一擦りでイけそうだ。

と、想像するだけで先から透明な露が零れる。


くらくらする。

体が熱い。


このまま竜崎が戻って来たら……きっと突っ込まれるんだろうな。

その感覚を想像すると。
自分の尻の穴が、ひくひくと勝手に動くのが感じられる。

ああ、また。
だらだらと、茎を伝う粘液に、刺激されて、達きたいのに、達けない。


出来れば。

竜崎に手を出される前に、自分で擦って射精してやったらさぞや痛快だろう。

あるいは、竜崎が戻って来た頃には出し切って、満足した状態だったら。
夢精という物があるのだから、手を使わないでもイける気がするけれど、
あれは無意識に布団で擦ったりしているんだろうか……。

……駄目だ。

さっきから性的な事しか考えてない。

もっと、他の事を。


不自由な手でリモコンを掴み、テレビの電源を入れる。
途端に再放送のメロドラマの濡れ場が現れて、慌てて切った。

それから僕は、授業の課題を考えたり、今更だがキラとして
どこで間違えたのかを分析したり、を試みたが、全て徒労に終わった。

仕方なく、寿限無を百回唱える事を当面の目標としたが、
録画されるのも嫌なので心の中で唱えていると
七十を超えた所で数が分からなくなった。




……あれからどのくらい経っただろう……。


気付けば性的な事に戻ってしまいそうな思考を何度も引き戻し、
色々と気を紛らわせていたが、その間勃起しっぱなしだった。


ああ……痒い。

睾丸まで垂れたカウパー液が乾き、絶望的なむず痒さを引き起こす。

がたがたと、出来る範囲で動いているとベッドも多少揺れたが、股間には
何の刺激にもならなかった。

気が遠くなりそうだ……。

いや、気を失ってしまいたい。



ふと我に返ると、僕は下に向かって一生懸命舌を伸ばしていた。

届くはずないじゃないか……。

と、冷静になったのもつかの間、妄想の中で舌はどんどん長く伸び、
股間に辿り着いて思う存分絡みついて舐める。
ざらざらした味蕾で、亀頭を擦る。

ああっ……イくっ……

そう思うのに、実際は先がぶるりと震えるだけで、射精なんか出来やしない。


「があああああっ!」


何だ今の咆哮。


「竜崎っ!竜崎っ!今すぐここに来い!ぶっ殺してやる!」


僕の声、か?
僕の声だな。
飛んだ唾液が、口や首元にぽつぽつと冷たく当たる。

大声を出すと、射精と同じくらい気持ちよかったが、ふと気付いて汗が引く。

誰かに聞かれなかっただろうか……?

今もし、捜査本部の誰かが来てしまったら。


……そうだな。
恥ずかしいのは恥ずかしいが、戒めを解いて貰って射精出来る。

それから、竜崎の僕に対する暴行が明らかになって。

あいつの立場は無くなるだろうな。
いい気味だ。

ああ……駄目だ。
そんな事をしたら、僕は殺される……あるいはすぐにイギリスに連れて行かれて
監禁されてしまう。


……いや。
今このビルには誰も居ないと言っていたじゃないか……。

だめだ、やっぱり。
思考能力が低下し過ぎている。

溜め息。
と共に、戻ってくる、狂おしい、性感。


はぁ、はぁ。


大きく息を吐く。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、


それがまた、竜崎に犯されている時の自分の息づかいを連想させて、
興奮してしまう。


ああ……開きっぱなしの自分の口から、涎がだらだらと垂れる。
涙が、目尻から零れる。
勿論、性器からも、じわじわと透明な汁が流れ続けている。

目を見開いて、天井の一点を見つめているのは、少し視線を動かすだけで
性感が増幅して苦しくなりそうだからだ。

そんな自分を客観的に見れば、十分狂っているように見えると思う。

……分かっていても、止められない。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、


狂犬のような呼吸音が、部屋に響き渡る……。




かちゃ、と。
久しぶりに自分が立てる以外の音がしたのは、その時だった。






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