長夜の憂 2
長夜の憂 2








夜になり、ニアがまた僕に手錠を掛けた。
もう片方の端を自分の手首の所に持ってきた所で、一旦動きを止める。


「別々に寝ますか?」

「いや!いや、頼む。ここにいてくれ」


自分でも声が上ずってしまい、ニアに笑われるかと思ったが、
彼は真面目くさった顔のまま自分の手首に手錠をはめた。

それから一緒にバスルームに向かったが……。


一体、どうした事だ。


……昨日あれ程出したのに、体が疼く。


何なんだ……。

怖い。
認めたくない。
でも。

体の、奥の方が……。
じんわりと熱い。
昨夜のように滅茶苦茶に掻き回されたい、などと思ってしまう。
あんなに苦しかったのに。

この僕が、セックスに飢える日が来るなんて。

……そう言えば、まさか。

Lが持ってきた昼食。
わざわざ奴が持ってきたという事は、何か盛られていたのか?
何も考えずに食べてしまった。
迂闊な……!


「どうしました?」

「……何も」


シャワーのコックを捻りながら、ニアが振り向く。
ついその股間に視線を送ると、タオルで隠された。

いや、何をやっているんだ僕は!

不味い。
我を忘れる程の衝動では全くないが、自分の中に少しでも
そんな欲望が芽生えたのが不快で恐ろしかった。


「夜神」

「……何」

「私の性器に興味があるのなら見せますが条件が」

「いや、いらないから!」

「そうですか?」


気付かれていたのか。

というか、駄目だ……ニアの冗談(恐らく)にまで過剰反応してしまう。
気持ち悪い衝動なんか、押し込めてしまわなければ。





ベッドルームに戻ると、ニアはまた枕を抱えて転がった。
鎖を引かれて、僕もベッドに乗って座り込む。


「Lを呼ばなくて良いのなら、寝ましょう」

「ああ」


毛布を手繰る、白くて柔らかい手……。
細い、首。

駄目……だ。

人肌に飢えている時に、こんなもの見せられたら。
ニアだからまだ良いが、リドナーだったら襲いかかっているな。

……でも。

ニアでも、キス……だけならしても良いだろうか。
昨日はLを呼ばれたが、その隙を与えなければ大丈夫だ。

シェルターで、否応なしにキスをして以来、
こいつは普通に男のキスを受け入れる。

つまり、性的に意外と「緩い」んだ……。

と、言うことは。
無理矢理にでも一度してしまえば、セックスでも受け入れるんじゃないか?

横たわったニアに覆いかぶさり、口を付けると、
案の定拒否をしなかった。


「……今日は何ですか?」

「おやすみのキスだよ」

「あなたと私はそういう仲ではないと思いますが」

「毎日のように一緒に寝ているのに?」


ない眉を顰めて室内フォンに手を伸ばそうとするのを抑える。
肩を押さえて首筋に口を付けると、ぴく、と震えた。


「おまえは、僕の事が嫌いか?」

「嫌いですね。キラが嫌いです。
 自分が獲得した能力ではないのに、偶々拾ったデスノートで
 神を気取って人殺しなんて言語道断です」

「でも、今の僕はデスノートを持っていない。ただの夜神月だ」

「……」


パジャマのパンツの上から、ゆるりとそこを触る。
布越しの他人の性器は柔らかく、自分に付いているのと同じ物だとは
とても思えなかった。

ニアが無言だったので、首を舐め続けながら揉んで行く。
服を脱がせる所が我に返るスイッチだったようなので、
今回はただ布地の上から愛撫を続けてみる事にした。

代わりに、自分の寝間着の襟を抜いて、気づかれない程度に
少しづつ脱いでいく。


「やが、」


片足を、少し立てると手の中の熱が芯を持ってきた。
形が浮いて来たので、先の方を、重点的に指で弄ってみる。

亀頭が、はっきりと感じられた。


「ああ、意外とUSA生まれなんだ?」


耳元で息を吸った気配がした。


「……無駄に推察力があるんですね」


ニアは包茎ではなかった。

性的に未熟のようだから、オナニーで皮が剥けたという事はないだろう。
そういう手術をする性格でもなさそうだから、本人の意思を無視して割礼されたという
可能性が高いが、現代、キリスト教圏で幼児に割礼をする習慣があるのは
主にアメリカだけだ。

実際には、そういう体質だとか、子どもの頃はオナニーが好きだったとか、
親が赤ん坊時代に剥いたとか、色々可能性はあるので当てずっぽうだったが
ニアの反応を見ると当たっていたのだろう。


「勃ってきたね。卑猥な形だ」

「夜神……やめろ」


丁寧語が使えなくなって来るのは、理性を失いかけている証拠だ。
留めに、


「僕の命は、あと一週間……いや六日間らしいんだ」


耳に吹き込むと、


「は?」


くるりと顔を回して、僕の顔を見つめた。


「Lから聞いてない?昨夜、一週間後に刑を執行すると言われた」

「刑を執行、ですか」

「だから……いいだろ?」


何が「いいだろ」だ、と自分でも思うが、考え込んでいるニアは答えない。
同時に自分でも、こんなに性欲が高まっているのは
死が近い事を自覚しているからかも知れない、とも思った。


「気持ちイイ事、してやるよ」

「いりません!」


口だけで、体は拒絶しないくせに。
そう思いながらシャツのボタンに指を掛けると……


空気が、動いた。


ドアが……、いつの間にか開いた?






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