荒城の月 9
荒城の月 9








「何」

「……焦らさないで下さい」

「へえ。ニアもなかなか情熱的なんだね」

「結論を、言って下さい」

「そう?いきなりだと痛いから、遠慮したんだけどね」

「?」

「ローション、ある?」


その科白でどこまでセックスを理解しているのか推し量ろうとしたが
白い能面のような顔は全く何の情報も与えてくれなかった。


「ボディローションかベビーローションなら」

「そう。出来ればジェルタイプの粘度が高いのを用意して欲しいんだけど」

「リドナーかジェバンニに言って下さい。何に使うんですか?」

「言っていいの?おまえの尻とペニスに塗るのに使うんだけど」

「……」


ニアは、ない眉の眉根を寄せた後、


「ならワセリンかグリセリンで良いですよね」


平然とした声で答えた。
……なんだ知っていたのか。詰まらない。


「ああ。Lを抱いた時もワセリンを使ったしね。
 なら、遠慮せず、ワセリンをたっぷりと人差し指と親指につける」

「……」


ニアが、覚悟を決めたように歯を食いしばったらしく、
小さな鎖骨の上で筋肉の筋が張った。


「おまえの足を開いて……いや、うつ伏せとどちらが良い?」

「……うつ伏せで」

「そう。じゃあおまえの体を裏向けて犬みたいに這わせる」

「……」

「腰を持ち上げさせ、尻の穴に一本ずつ、指を入れて」

「一本づつって、複数ですか?」

「ああ。まず中指。それから人差し指、薬指……」

「無理です!」

「無理じゃないさ。三本くらい入れておいた方が、後で楽だろ?」

「後って……」

「僕のペニスを入れる時」

「え?!」


ニアは、バネ仕掛けのように起き上がり、ベッドから降りた。
……知っているようで、知らなかったのか?


「な、そんな、無理でしょう?」

「無理じゃないよ。Lにだって入れた」

「……!」


さっきまでの小面顔が嘘のように、般若になっている。


「……とてつもなく下品な嫌がらせです」

「嘘じゃない」


言いながら鎖を思い切り引くと、バランスを崩してベッドの上に倒れこんでくる。
うつ伏せになった所を上にのって押さえ、尻を撫でると
バタバタと足で暴れた。


「女と同じだよ。入れて、動いて、出す。
 それでお互いに気持ち良くなる」

「……そんな、入る訳ありません」

「入るよ。僕のもバカでかい訳じゃないし、実際、Lに入れたら
 Lも悦がってたし」

「やめろ!」


バカの一つ覚えのように、枕に向かってくぐもった声で
もう一度「やめろ」と繰り返す。

その幼い反応に……僕の心の中で、嗜虐心と同時に
少し哀れに思う気持ちも頭をもたげてきた。

ニア。

二代目Lがキラだと、確信していながら平然と交流を続け、
いやらしくキラを追い詰めたニア。

Lの名を継いだ僕と、Lの意志を継いだ者として、対立しつづけたニア。

けれど、生身のコイツはどう見ても十代の子どもだ……。


「……本当だよ。試してみようか?」

「……何を」

「入るかどうか。ゆっくりすれば、きっとおまえも気持ち良いよ」


ニアが思い切り体を捻り、上を向いて僕の脇腹の傷に向かって
手刀を振り上げた時、


ゴゴーン……


遠くで爆発音がして、軽く床面が揺れた。





--了--





※了っていうか続いてますよね。
 言葉だけでする月ニア、というのも変態くさくて良いかと思ったのですが
 意外と普通でして、私の変態くささが露呈しただけでした。





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