背水の陣 5
背水の陣 5








ベッドの上に仰向けに寝かせ、タオルで手をベッドヘットに縛り付ける。
僕が思ったより回復していた事に、いや、それを推察出来なかった事に、
Lは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「残念です夜神くん。あなたはもっと聡明な人かと思っていました」

「そうだね。
 でも大概の人間は死に際して馬鹿になるのかも知れないよ?」

「どんな状況でも馬鹿になる人は元々馬鹿なんです」


Lの悔し紛れの口説に耳を貸さず、その足を広げる。
指を顔に近づけると、Lは口を引き結んだ。


「舐めて。おまえが良いと思うだけ」

「……ワゴンの引き出しに、ワセリンが入っています。
 それを使って下さい」

「学習したんだ。いいよ、同じ事をさせてやれなくて残念だけど」


一旦ベッドを降り、ワセリンを取り出して左の掌に塗りながら
またLの足の間に座り込んだ。


「……夜神くん!」

「何?」

「何を……しているんですか。やめて下さい」


僕の左手は、Lの性器を触っていた。

僕が昨夜ただ一点安堵した事、それは僕自身が全く快感を得なかった事だ。
だから、Lに僕が味わった以上の屈辱を味わわせるには……。


「一つ訂正があった」

「……何ですかもう」

「僕は、やられた事はそれ以上にして返す人間だった」


目を細めたLの、顔を見ながら扱く。

昔、両手利きの方が何かの時に生き残れる可能性が高いと聞いて
左手を動かす練習をした事がある。
実際役に立ったのは火口の名前を書いた時くらいだったが、
こんな事にも使えるのか、と思うと笑えた。

ワセリンのお陰でぬめって、Lは抵抗も出来ずに勃起していく。
やがて目は閉じられ、横を向いた。

十分硬くなったので、ワセリンを足して足の間に手を伸ばす。
尻の穴に指を這わせると、今度は腹筋が震えた。


「括約筋は硬いんだね。
 寝たきりだったら全身の筋肉がゆるゆるになるのかと思ってた」

「……寝ていても自律神経系は生きていますから。
 括約筋まで含む内臓機能も正常でしたし、自力呼吸もしていたそうですよ」

「そう。じゃあ、良かった」


言いながら人差し指と中指を中に潜り込ませる。
Lは何も言わなかった。

何度か出し入れしていると、自分が……触っていないのに勃起して来て
軽く落ち込む。
穴なら何でも良いのか。
というか、突っ込めるなら何でも良いのか。

まあ、溜まっているのは確かだし、と誰に向けてか分からない言い訳をして
指を抜き、今度は自分にワセリンを塗りたくる。
両手が使えたら、片手で女の相手をしながら片手で自分の準備が出来るのに……。
いや、女じゃないか。


「あれ……竜崎、先走りが出てるね」

「……」

「もしかして、尻の中で感じた?」


弄るつもりはなく、本当に驚いたから言ったのだが
Lはこれ以上ない程冷たい目で、突き刺すように睨んできた。

キラだと疑われていた時も、こんな目で正面切って見られた事はない。
これがコイツの本性か……そう思うと、ゾクゾクした。


「姦るなら、どうぞ。姦らないのなら寝て下さい」

「寝ないよ」


言いながら腰の下に丸めた毛布を入れる。
もう一度尻に指を入れると、Lは今度こそあからさまに喘いだ。
ははは。女と同じだな。


「やめて、下さい」


気を良くして、そのまま右手の肘をLの脇に突いて体を支え、
左手を自分に添えて中に押し込む。

ああ……気持ち、良い。
昨日の経験からすれば今Lは激痛に耐えている筈で、
目の前の茎がどんどん枯れていく。
それでも呻き声の一つも出さないのはさすがだと思った。


「確かに中、熱いね……熱、ないよな?」

「……」


時間を掛けて奥まで入り込み、Lの胸に凭れ掛かって一休みする。
これから、しばらくしていない動きをするのだから
少し体力を回復したい。
Lの胸は、笑える程の速さでどくどくと脈動していた。


「なんか……これ以上ない位の一体感だね」

「……」


僕が話し掛ける。
Lは睨むばかりで答えない。

その事が、僕の圧倒的優位を象徴しているようで、快感だった。
誰かを言い負かす事は珍しくはないが、こいつは相手にとって不足ない。

十分時間を取って慣れるのを待ち、体を起こすと
Lは気配だけで身構えた。


「安心しろ。僕はおまえと違って上手いから。
 声、出して良いよ」

「……誰が!」


やっと答えが返ってきたな、などと思いながらそのまま抜き、
浅く突くとLの背が反った。


「ここ、気持ち良い?」

「……」


何だ、女より簡単じゃないか。
何度か抜き差ししていると、腹の下にあったLの物が
どんどん大きくなって来た。

それなのにLの視線は氷のように冷たいままで。
それでも、手で扱くと、その視線に戸惑いが混じり始めて。

僕が、快感のままに腰の動きを早めると
Lも遂に目を瞑り、横を向いて顔を隠そうとするかのように
その肩に口元を押し付けた。






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