「さらば愛の巣」2
「さらば愛の巣」2








じりじりと待った三日目、月から電話があり、部屋に飛んで行こうとしたら
既に私の部屋の前に居ると言う。
久しぶりに本物の彼女を見て、部屋に入れるなり抱きしめてしまった。


「ちょっと、」

「会いたかった」

「……はい。私もです」


俯きながら、頬を染める姿に心が溶けるような思いだ。


「もう、我慢できません」

「はい?」

「月さん。本名じゃありませんよね?」


……どうやら私は、耐えられそうになない。
再び、彼女を永遠に失ったかも知れない、などと思う事に。


「ええ……、それは、まあ」

「どうか本名を呼ばせて下さい。あなたの全てが欲しい」


彼女は目を見開いて、私を見つめた。
少し視線を揺らがせた後、低い声で答える。


「……あなたが、本当の名を教えてくれるのなら」


……ああ。
そう、答えるだろうな。
キラなら。


「マイクロフト・リューザキが偽名だと?」

「……」

「そう思うのは、キラの能力で私を殺そうとして、殺せなかったから?」

「そんな事してません!」


少女は真っ直ぐに顔を上げて怒りを滲ませた。
真に迫っている……。
本当に私を殺そうとはしていない、という事か。


「でも、私の本名を知ったら、殺しますよね?」

「……」

「あなたはキラなのだから」


キラは唇を噛んだ後、また私を睨んだ。


「なら、あなたは何故、私の名を知りたいのですか」

「……」


今度は私が黙る番だ。


「私をキラとして逮捕したいからですか?
 ならばそう言えばいいじゃないですか。
 私が欲しいなんて、そんな嘘を吐かず」

「嘘じゃありません」


声が少し、大きくなる。
彼女と争うつもりなんかないのに。


「ならば名前は要りません。月さんで十分です。
 その代わり、あなたの全てを見せて下さい。服を脱いで下さい」

「……」


少女は怯えたように、自分の襟元を掴んで身を竦めた。


「私があなたを愛したように、あなたも私を愛してくれたと思ったのは、
 私の勘違いですか?」

「いえ……いいえ」

「ならば、見せてくれますね?
 全てを愛させてくれますよね?」

「でも私は日本人で」

「でも私はアメリカ人です。散々東洋式のセックスに付き合ってきました。
 偶には、西洋式も受け容れてくれても良いと思いませんか?」


キラは目を伏せた後、黙ってゆっくりとベッドに向かう。
そして静かに横たわった。

その上に覆い被さり、キスをすると震えている。


「すみません……脅すつもりはありませんでした」

「……」


足首に触れ、靴下越しにふくらはぎを撫でる。
細いが、引き締まった足だ。
そのままスカートの中に手を入れ、撫で上げていくと
膝の上で靴下は途切れ、ひんやりと滑らかな太股に触れた。

感に堪えず、思わず溜め息が漏れる。

少し深呼吸をして落ち着き、顔をスカートの中に入れ、唇で内股に触れると、
彼女はぴくりと震えた。


「あなたは、キラです」

「……」

「間違いありません。この命を賭けても良い」

「……」

「それでも私は、あなたを愛しています」


そこに触れるのが惜しくて、内股を舐めて遊んでいると
キラは身を捩って身体を丸めた。


「逃げないで下さい。月さん」

「だって」

「どうか私と一緒に、私の国に来て下さい」

「……え?」


彼女は私を振り向いて、鳶色の目を見開いた。

こんな事は、探偵としてのモラルに反する。
こんな事をすれば、私は今後、Lとして動く事を自分に許せるかどうか分からない。
それでも。


「駆け落ちをしましょう。と言っています」

「……」

「あなたはキラですが、私はあなたを愛している。
 これ以上あなたに罪を重ねさせる訳には行きません」

「……」

「どうか身一つで私と一緒に来て下さい。
 これまでの罪の償い方は、これから二人で一緒に考えて行きましょう」

「……」


返事がないので再びスカートに手を入れ、太股の裏、尻、と撫でて行く。
月はまた小さく震えているようだった。


「……分かり、ました」


キラは。
身体を起こしてスカートの裾を直し、私を見つめる。


「分かりました……。あなたがそこまで仰るのなら、行きます」

「……ありがとうございます」


無意識に、安堵の溜め息が出た。

彼女は自分がキラだと認めてはいない。
だがこれで良い。
人生の一大事を、こんなに簡単に決断出来るという事は、キラもそれなりに
追い詰められていたという事だ。

これで私は、彼女の良心に賭ける事が出来る。






  • 「さらば愛の巣」3

  • 戻る
  • SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送