「可愛がってくださいね」 4 「いっ!」 「だ、大丈夫ですか?」 「はい……あの、少し、待って下さい……」 痛い……。 身体が、固くなる。 こんな物、入るのか? いや、入れなければ……。 だが、二十秒ほど待つと、穴が広がったのか痛みが少しマシになる。 更に少し腰を落とすと、つぷ、と先が入り込んだ感触があった。 「あの」 Lが、少し凄味のある声を掛けてくる。 膣でない事が、バレたか……? 「きつい、です。あなたの中」 「……痛い、ですか?」 「いえ。気持ちよすぎて。でもあなたは、痛いんですよね?」 「はい……」 「止めますか?」 バレてない、か。 それは出来る事なら止めたいが、ここまで来た以上 中途半端な事をして身体を調べられたりしては不味い。 「大丈夫です」 そう言って一気に腰を沈めると、我知らず「ああっ!」と悲鳴が漏れた。 「月さん」 だが、最初ほどの痛みはない。 入り口だけで、奥の方は痛覚がないようだ。 僕はまたしばらく待った後、ゆっくりと腰を動かした。 しばらく動いていたが、Lが射精する様子はなかった。 「月さん」 「はい」 「痛みはマシですか?」 「はい」 Lの静かな声に、こちらも頭が冷える。 ここは一旦、中断した方が良いか、と思い始めた時 もう一度名前を呼ばれた。 「月さん」 「はい?」 「すみません」 どうしてそんな、突然切羽詰まった声を。 と思う前に、尻を力一杯掴まれていた。 「え?」 どくんと、身体の下から衝撃が広がる。 僕の腰は固定されたまま、熱い肉が奥までせり上がって来ては 去って行った。 男が、下から激しく突き上げて来る。 イくつもりだ……。 僕は、自分の睾丸がLの腹に当たらないように必死だった。 どんどん早くなる往復運動を、一、二分ほど続けてLの動きは止まった。 終わった、らしい。 僕が息を吐くと、Lもはぁはぁと、荒い息を吐いた。 「すみません……我慢できませんでした」 「はい……」 柔らかくなって行くLを抜き、枕元のティッシュを取って自分の尻の ローションを拭く。 そのままごろりと寝てしまいたくなったが、その前にLのコンドームを取り、 ティッシュで拭ってやった。 Lが自分でゴムを取り、まさかとは思うが、匂いを嗅いだりしたら 自分がどこに挿入したか気付いてしまうだろうから。 「……月さん、初めてなんですよね?」 「はい」 「確かに処女っぽいきつさと慣れていなさでしたが…… その割に商売女のような……」 「……」 ああ、確かに我ながらこれは不味いな、と思ったよ。 でも仕方ないだろう? 「……お恥ずかしい話ですが。母が、その、 こう言った事を教えてくれました。 可愛がって貰うには、殿方のお手を煩わせてはいけない、と」 「ああ……お母さんが……」 母さんごめん。 Lはきっと、僕の母が売春婦だと誤解しただろうな。 僕はスカートを直し、Lのジーンズを上げてやって それからベッドに横たわった。 「月さん」 「はい」 「その……怪我とかは、大丈夫ですか?」 「はい……ゆっくりしたので、血は出なかったようです」 「そうですか……良かった」 二人で眺める天井に、街の明かりがゆらゆらと揺れていた。 「月さん」 「はい」 Lは寝返りを打って、僕を抱きしめた。 「申し訳ありませんでした……初めてがこんな男で」 「何を……私が、あなたに捧げたかったんです」 僕を抱きしめる腕に、力が籠もる。 骨が折れそうだ。 「月さん」 「はい」 「あなたが、好きです」 「……」 「大切な物をくれたあなたを、私もとても大切に思います」 ……L。 ちょっと油断させるだけのつもりだったが、思った以上の効果があったようだ。 こんなに簡単なんだな。 男って。 「……リューザキは、すぐに国に帰ってしまうんでしょう。 そんな事を言われると、余計に辛いです」 「蝶々さんのような事を言うんですね。 でも私はピンカートンとは違って、月さんが望むなら、この国に永住出来ます」 「そんな簡単な物なのですか?」 「簡単です。何せ私は、世界の警察を動かせる名探偵Lなのですから」 子どもっぽい物言いに思わずくすくすと笑うと、 Lは僕の髪を撫でた。 それから、手を繋いだまま眠った。 油断をしてはいけないと思ったのに、熟睡してしまった。
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