女か虎か 8
女か虎か 8








数日後、警察庁はキラ事件から手を引くという判断をした。
父も、事件を捜査するのならプライベートで、Lと関わりなく、と言われたらしい。

そんな、このままキラを見逃すような事が許される筈が無い。
と思うのは、僕がまだ子どもだからだろうか。

やっと、ヨツバが会社ぐるみで糸を引いている事が分かったというのに。

それでも父と松田さんは、警察庁を辞めてまでキラを追う選択をしてくれた。
彼等は僕にとっても誇りだ。




「ああ……相沢さん1人居なくなっただけで、随分寂しくなったな」

「そうですか?」


夜になり、寝室に下がって思わずベッドに身を投げ出すと、
竜崎もよじ登って隣に横たわった。


「ヨツバのハッキングの方はどうですか?」

「中々上手く行かないね。今、電算課の前の課長のプロフィールを調べて
 パスワードを類推してる所」

「なるほど。引き続きよろしくお願いします」

「ああ……」

「……」


ずっとPC画面を見つめ続けていたせいか、眼球が痺れたように重い。
閉じた瞼を指で揉んでいると、電灯の光りが遮られた気配がした。


「夜神くん」

「……何」

「私は男ですか?女ですか?」

「……男」


何を言い出すんだ。
また何か企んでいるのだろうか。

目を開けると、電気の光を背に、僕を見下ろす竜崎と目が合った。


「では、私に欲情しますか?」

「……は?」


今更何を、言うんだ……。
だって、そんな。


「あなたは以前、私が女性だと思い込んでいたと、
 言わないのは卑怯だと思ったと言いました」

「ああ」

「ではあなたにもう少しモラルが欠如していたら、
 言わずにそのまましてしまう、という選択肢もあったのではないかと」

「……」


確かに、入れる方なら何とか……とは思ってしまったけれど。


「無理だ……僕は、ゲイじゃない」

「では私を女性だと思い込めば?」

「……」


一体、何なんだ!本当に。


「女性じゃない」

「本当に?」


……竜崎はそう言って、部屋の明かりを消した。
仄暗い間接照明だけが、物の在処を漸く示す。

本当にって。
おまえ、男だったじゃないか。

……あれ以来見てないけど。

だって相変わらずおまえは1人でシャワーを浴びるし、
着替えている所も見せてくれないし。

数日前の事なのに、随分昔に思える。


「本当に私、男でした?」


そんな……。
記憶を辿るが、竜崎が男だと確信したのは勃起した一物を見せられた時だけだ。
いや、それで十分だろ?

……まさか、作り物?

そんな事をしてまで僕を騙すか?
……キラだと思っている男から身を守る為なら、その位はする、か。


「……本当は女なのか?」

「試してみます?」

「……!」


竜崎は、僕が拒否する間もなくジーンズを広げて下着を下ろし、
僕の性器を露出させた。
それから顔を近づけ、舌をちろちろと動かして僕の先を刺激する。

その、微かに光る睫。
囁くような声。

あれ程恋い焦がれた声を。
発する器官が、僕の性器を刺激する。

僕はすぐに勃起してしまい、息を上げた。


「竜、崎……君は、本当に、女性なのか」

「だから、試してみて下さい」


服を脱ぐような衣擦れの音がした後、細い体が僕の腰に跨がる。


「そんな、いきなり、」

「濡れてるので、大丈夫です」


濡れてる、って、
問い返す前に、狭い肉の中に飲み込まれる。


竜崎……!


「彼女」の中は、狭くて熱くて。

ぬるぬるしていて、脈打っていて。

この、入り口の締め付け……。

僕は目を閉じて天を仰ぎ、ただ眉を寄せてそっと息を吐きながら
官能に耐えた。

少し動いたら、イッてしまいそうだ……。


正直、彼女の様子を気に掛ける余裕はなかったが、
彼女の方は僕を気遣ってくれていたらしい。


「大丈夫、ですか?夜神くん」


だが、そう言う彼女の声の方が、苦しそうだ。


「竜、崎……」

「は、はい」

「僕は、その……初めてなんだ。こういう事」

「そうですか……」


どこか上の空な声。
それから少し息を詰めた後、もう少し腰を落とした。


「っ!」


ずぶ、とまた少し飲み込まれて、興奮で鼻柱が熱くなる。


「……私もです」

「……え?」

「私も、初めてです。男性と、セックスしたの」


女性の口から「セックス」なんて言葉が飛び出すのが、
下品を通り越してこんなに蠱惑的だなんて知らなかった。


「な、なら、痛く、ない?」

「正直、痛いです」

「抜こうか?」


そんな事を言いながら、本当に抜けと言われたら僕は
簡単に諦めて抜けるだろうか。


「いえ。何とか、大丈夫そうです」

「そうか……お互い初めてだなんて、何だか照れるね」

「そうですね」


恐らく世界有数の頭脳が。
お互い処女と童貞を散らし合った。

本当に、奇跡のように思える。
もしかして、本当に運命の相手なんじゃないか……?


「りゅ、崎!」

「な、何ですか?」

「その、動いて、良い?」

「……」

「もう、限界」


竜崎のシルエットは少し息を吐いた後、軽く膝立ちになって体制を整えた。


「良いですよ。私も、努力します」


僕は竜崎の尖った腰骨を掴み、目を固く瞑った。
それから……本能のままに、腰を突き上げ続けた。






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