ラプラスの悪魔 7 「考えずに、従う事。初めての経験でしたが、なかなか楽しかったです」 「……それって」 僕がニヤリと笑うと、竜崎は軽く目を見開いた。 「誘ってる?竜崎」 「はい……」 「そうだな……なら僕もおまえの予言に、従ってみようか」 「はい……」 予言の内容は、確認しなくてもきっちり覚えているだろう。 『あなたと私、セックスする羽目になると思います』 言ったのはLだ。 いつまでそのとぼけた顔が、続くか。 「僕は男との経験はないけど、竜崎はあるんだ?」 「はい……」 膝でベッドに乗り、にじり寄ったが、今度は引かない。 横たわって自分の精液を腹に乗せたまま、挑発するように僕を見ていた。 「なら、僕がしていいね?」 「はい……分かりました……」 クソッ……強情な。 今日は絶対に「はい分かりました」を崩す気はないようだ。 開いた足の間に入ると、男の生臭い匂いが立ち上ってきた。 「でも、まず僕が勃たないとね。竜崎、何とかしてくれよ」 「はい。分かりました」 Lは予想も覚悟もしていたのか躊躇う事なく動き、 自分の腹の上の精液をすくった。 そして反対の手で僕のバスローブの裾を素早く開き、いきなり、 僕のペニスにそれを塗りたくった。 「きっ……」 気持ち悪い……。 ひんやりと、生温く冷えた他人の精液。 吐き気を覚えたが、何とか嘔吐かずに済む。 僕が「やめろ」と言えば、Lは嬉々として「はい分かりました」と言うだろう。 ぬるぬると、さっき自分の陰茎を扱いていた手が。 僕の物を。 絶対に勃たないと思っていたが、摩擦でぬるつきが熱くなってくると、 だんだんと……血が、集まってきた。 こんな、男に性器を触られたのは初めてだが、 まさか自分が勃起してしまうとは思わなかった。 だが男に触られているというよりは、よく分からない相手だけに、 機械に触られているようだ。 その証拠に、高校や大学の友人に触られている所を想像すると 少し萎える事が出来る。 いや、機械……というよりは、まるで自分……。 機械的に僕を追い上げていくが、全く違和感のない、 その体温や微妙な動きは絶対に人間、というより自分の手のようだ。 って! そうか……。 思い至った途端、耳の辺りがカッと熱くなる。 高校生時代の僕の私室を、沢山のカメラで監視していたというL。 きっと自慰も……じっと、観察していたんだ……。 それをつぶさに覚え、今再現している。 僕が勉強の合間に自分を慰めている時。 局所をアップにして、大画面で観察しているLを想像すると、また吐き気がした。 「竜崎、もういいよ。離して」 「はい、分かりました」 言われた通りに手を離した竜崎の足の間に、のしかかる。 女性とするようにその胴の脇に手を突くと、 軟らかい竜崎の物が、腹に触れた。 そこまでするつもりはなかったが。 負けるのは、絶対に嫌だった。 Lが「はい」以外の答え方をすれば、直ちに終わるゲーム。 僕を挑発した事を、後悔させてやる。 「ちょっと腰、持ち上げて」 「はい」 腰の下に枕を入れながら、ふと気づいて目の前に曝された肛門を見る。 入りそうにないな……さっきシャワーを浴びたから、汚くはないか。 自分の指を舐めて触れると、よほど予想外だったのか 竜崎はびくんと、大きく震えた。 「入れるね」 「はい……」 指先をめり込ませ、少しづつ動かしながら入れていく。 中は入り口より軟らかく案外入りそうだし、それにこの刺激だったら…… イけそうな気がしてきた。 人差し指を半分くらい入れ、動かしていると、すぐ上の睾丸が ぐるりと動いた。 そして陰茎が、徐々に持ち上がる。 「中で、感じるんだ?」 「……はい」 「慣れてるんだね」 「はい」 「竜崎って……意外と、淫乱な方?」 「はい」 こんな問答に意味はないし、Lもそれは分かっているだろうから 特に屈辱は感じないだろうが。 この状況を楽しまない手はない。 「なら、指じゃ細くて物足りないだろうね」 「はい」 「……入れるね。ペニス」 「はい。分かりました」 言うのに、指を抜いて先端をあてがう。 腰に力を込めると、ぬるりと先が入り込んだ。 ……穴に入れるというだけで、興奮出来るのだから 男の性というのは因果なものだ。 自分でも情けない思いだったが、僕は全く萎えなかった。 Lは目を見開いて、半開きの口から震える白い歯が見えていた。 「大丈夫?」 「は……い……」 全然大丈夫そうではないが、じわりと腰を進める。 気づけば、Lは完全に萎えて縮こまっていた。 「ああ……全部、入ったよ」 「はい……」 「気持ちいい?」 「はい」 苦しげな顔で、機械的に「はい」と答える。 こちらは、だんだん楽しくなってきた。 「そう、良かった。動くね」 「は……い」 まだ痛そうだが、少しづつ動かし始める。 Lの中は熱く、軟らかく絡みつき、 その部分、その目的だけで言えば、物理的には、最高だった。 だんだん。 頭の中は、射精に向かって動く事だけで占められていく。 もう、どうでも良い。 ここまで来ればセックスしてしまったも同然なのだから、 「勝利」と言えば、ただ気持ちよく射精する事だけだろう。 僕はLの胴を抱きしめ、小刻みに揺らした。 驚くべき事に、あんなに縮み上がっていたLが、 腹の間で捏ねられたせいか少し勃ち上がってきている。 「また勃ったね」 「はい」 「やっぱり気持ちいいんだ?尻の中」 「はい」 「もっとして欲しい?」 「はい」 「中に出して、良い?」 Lは目を閉じたまま、眉を寄せて。 一瞬間を置いて、「はい」と答えた。 僕はすぐにLの肩に額を付けて、ラストスパートに入る。 しばらくピストンを続けて足を抱え直した所で、 ピピピッ どこかで、小さな音がした。
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