記憶鮮明 5 後ろ手に腕を捻られたまま、高く上げた尻を犯される。 顔を枕に押し付けた屈辱的な格好だが、弱音を吐くつもりはなかった。 「捜査本部のノートは、あのままで良いですが、もう一冊ありますよね?」 「ノートは、渡せない」 「いい加減、負けを認めて下さい」 「そ、そっちこそ!従わなければ殺す、と言ってるんだ、言う事を聞くしかないだろ?」 「あなたに私は殺せません」 「殺せる、手段がある」 「それでも、殺せません」 言いながら、握った手の指の先で、僕の亀頭を挫く。 腰の動きを早めて、中から僕を刺激する。 痛みと快感と、射精出来ない苦しさで、頭の中に霞が掛かってきた。 それでも、負ける訳には行かない。 「僕がおまえを、好きだと、言ったからか、」 「それも一つです」 馬鹿な。 この僕が、情に流されて大局を見失うとでも? ならば逆手に取ってやるだけだ。 「今でも、好きだよ、竜崎」 「……」 「だから、おまえを殺して、僕の物にしたい誘惑に、駆られる」 「変質者の心理も分かるんですね? ついでに私の肉を食べちゃいますか?」 「ふざけっ……ああっ」 おどけた口調で言いながら、激しく責めて来た。 前立腺を集中的に刺激されて、脂汗が滲む。 竜崎に噛まれた傷に滲みる。 ずき、と痛む度に、何故か射精感に苛まれるのには参った。 「相手を、懐柔しようとするのは、一つの敗北です」 「ううっ、違っ、、おまっ、が、先に、」 「はい、あなたを、懐柔しようと、しました」 竜崎が、漸く腕を離してくれる。 僕は、片手を頭の横に突いてシーツを掴み、片手は……何を考える間もなく 股間に伸びていた。 だが、僕を握り締めた竜崎の手に阻まれて、虚しくその手の甲を 引っ掻いてしまう。 「竜崎!」 我ながら情けない声が出た。 もう、楽になりたかった。 「ねぇ、お互い、負けを認めませんか?」 「い、やだ!僕は、ノートを、手放さない。キラで、あり続ける」 「ならば、」 「りゅ、ひ、いいいい、」 片手で僕を扱きながら、大きくストロークして入り口付近から奥の奥まで 中の粘液をこそげ取る勢いで突く。 僕の中も、痙攣しながら竜崎を締め付けているのを感じる。 何故かこめかみの辺りの血の気が引いて、ひんやりとした。 今すぐにでも射精してしまう。 竜崎のもう片方の手が、僕の根元をきつく絞めていなければ。 「ああ……とても、いい、です」 「くっ、ぅああっ、」 「……出そう、です。一言負けたと。私に服従すると 言ってくれれば、二人で気持ちよくなれます……」 僕は竜崎の命を握っているんだ。 勝ちか負けかと言えば、圧倒的に僕が勝ちだろう。 「んな事、言える筈が、……あうっ、」 「私も、Lである事を、やめるつもりはありません」 「竜崎、竜崎、」 膝が、腕が、震える。 脂汗が流れる。 もう限界だった。 勝負をつけなければ、今すぐ射精できなければ、 気が狂いそうだった。 何もかも譲り渡して、泣きながら達かせてくれと、言ってしまいそうだった。 「こう、しよう、おまえも……一度、ノートに書いてみるといい、」 「……」 あの、全能感を味わってみると良い。 絶対に気が変わるはずだ。 おまえのような奴は。 「確かに……興味ありますね」 「だから、なあ、もう、」 「何ですか?」 「……許して、くれ。手を、離して、……かせてくれ……!」 「分かりました」 言うと、竜崎は手を離した。 それだけでは達けない、一瞬涙が出そうな程もどかしくなったが すぐに強い力で尻を掴まれ、激しく突かれる。 「あああっ!」 急速に持っていかれて、悲鳴が溢れるのを止められなかった。 背中から、竜崎の苦しげな呻き声も聞こえる。 これ程、溜まっていたのかと。 我ながら驚く程長く射精感が続く。 目を閉じても瞼の裏が焼け付くように白く、 脊髄を駆け上がった震えが脳天を突き抜けた一時、 僕は、意識もプライドも、何もかも手放した。
|