Violence 3 二人の男は不承不承頷いた。 「ではQ.1。この銃はあと何発撃てますか?」 「12だ」 銃を持っていた、肩抜け男がすかさず答える。 「なるほど。K5は標準13発装弾出来ますから、私がさっき撃った一発を引いて12、と」 「その通りだ」 「しかしこの弾倉、S&Wですよね? 確か流用出来ますからこの銃に限っては最大15発なのでは?」 「……」 パンッ! 私は即、答えた男の左耳の上半分を撃ち抜いた。 男は一瞬何が起こったのか分からないようだったが、すぐに座ったまま蹲る。 「ああああっ!」 「静かに」 「〜〜〜!!!」 ヨンイと名乗っていた方の男が、顔を顰めた。 「単純な勘違いかも知れないのに」 「その可能性も考えたので私も単純に間違いを指摘しただけなんですけどね。 それを聞いた時の表情を見て、嘘を吐いたのだと判断しました」 「……」 「こう見えて私、嘘を見抜くプロなんで。 次はもう少し顔の近くを撃ちます」 夜神が車の中から薄汚れたタオルを見つけ出して男に放ってやる。 肩抜け男は片手で耳にタオルを押しつけ、震えだした。 「では、Q.2。誰に永夏を殺すよう頼まれました?」 「金寅」 パンッ! ヨンイの眼鏡が砕けて飛ぶ。 真正面を向いていなかったので、眼鏡だけ飛ばすことが出来た。 「これで本当に残り12発。出来るだけ撃たせないで下さい。 このまま嘘を吐き続けた場合、12発無くなった時点でどちらか一人でも生きていると思わないで下さい」 「……そう言われても、我々もプロだ。 死んでも依頼人の名を教えることは出来ない。今殺して貰って構わない」 「そうですか。ではさようなら」 私が再び銃口を上げた時。 横から夜神が銃身を掴んだ。 「何をするんです?」 「無駄な殺生をするな」 「無駄ではありません。 情報も取らずに生かして逃がしたら、彼等は今度は私も殺しに来ますよ?」 夜神は「いいから」と言うように強い目で私を睨み、銃口を下げさせる。 それから、ヨンイと蹲ったままの肩抜け男の方に近付いて行った。 「なあ。こいつはこんな事言ってるけど、どちらかと言うと警察組織に近い人間なんだ」 「永夏」 「心を入れ替えれば、必ず助けてくれる。 実際、死刑になってもおかしくない犯罪者でも、こいつの配下に付いている者もいる」 まあ、おまえがその張本人なのだが。 「あなたたちに個人的恨みがある訳じゃ無い。 正直に全てを話せば、未来には今より少しはマシな暮らしが待ってる。 いつまでも続けられる仕事じゃないだろう?」 「……」 ヨンイは、血塗れでぐしゃぐしゃになって、熱を持ってグローブのように腫れた、 それでも恐らく氷のように冷たいであろう自分の右手をじっと見つめた。 「……あんたの言う通りだ。いずれにせよ、オレはもう長くないだろう」 「殺し屋としてはね。でも、生きる事は出来る」 「まあ聞けよ。 確かにあんたたちはオレ達に個人的な恨みはないだろう。 でも、高永夏。オレ達だって、あんたに恨みなんかこれっぽっちもない。 囲碁だって施設で少し覚えたくらいだしな」 「施設」 「……オレは、小さい頃両親に捨てられてね……。 親戚にも引き取って貰えなくて、入った養護施設は酷かった」 ヨンイが、力の無い声で自嘲気味に話し始めると。 私の耳に、微かにエンジンの音が響いた。 「永夏」 「何。今この人と、」 「誰か来ます」 その頃には、倉庫の外で二、三のブレーキ音が響いていた。 「車?」 「誰でしょう?」 その時、ヨンイが片脚づつ立ち上がった。 「っあー!思ったより遅かったな。 いつまで身の上話で時間稼ぎしなきゃいけないのかと思った」 「!」 私たちは取り敢えず車の後ろに飛び降り、隠れて銃を構える。 すると、先程夜神が閉めた扉がまた軋んだ音を上げて開き始めた。
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