Twins 2 秀英の親戚の店だという美容院は、裏道の知る人ぞ知ると言った佇まいだった。 席数は二つしかなく、夕方からは閉店してくれている。 「永夏の髪型をこのお兄さんと同じ所まで切るんだね? で、お兄さんの髪を永夏と同じ色にする、と」 二人を古めかしいデザインのスタイリングチェアに座らせると、厳めしい見た目の店主は意外にも優しい声を出した。 「うん、お願いします。 あと、絶対他の人に言わないでね。アッパにもオモニにも」 秀英からどう聞いているのか、店主は心得たように頷く。 「永夏は少しでいいな」 ケープを着けると、無造作にカットしはじめた。 長髪に近い髪だが、夜神も髪が伸びているので今でもさほど変わらない。 そして夜神の後ろに来ると、少し首を傾げた。 「おや、お兄さんは黒く染めてるんだね…… これを取ってからとなるとかなり髪痛むけどいいかい?」 「構いません」 私が答えると、店主はぎょっとしたように鏡の中からこちらを覗き込む。 だが、すぐに目を逸らして無言で何か薬剤を選び始めた。 手早い作業のお陰で、日暮れには二人の髪型はそっくりになっていた。 「こうして見ると……」 店主に言われるまでもなく、二人の見た目の印象は前以上に近似している。 だがお互い顔を見合わせると、 「言う程似てないな」 「はい」 二人とも敢えて無表情を保っているのが笑える。 楽平と和谷ほどではないが、二人を直接知らない人物なら間違える程には似ていた。 美容院を出る時には永夏は若者らしいラフな格好にニット帽を深く被り、夜神は永夏の服を借りて眼鏡を掛けた。 永夏は面白くなさそうにふて腐れている。 「で?これからどうするんだ」 「暫く、イベントの後は服を入れ替えて建物から出て貰います」 「面倒くさい」 私と永夏が並んで歩き、夜神は数歩離れて着いてきている。 そのすぐ後ろに秀英。 この並びなら遠目には夜神が永夏に見えるだろう。 「しかし、犯人は恐らく殺し屋を雇っています」 「殺し屋って」 「フィクションではありません。相手は銃器を持っているんです」 「……」 永夏は少し後ろを気にしたが、顔色も変えずに前に向きなおる。 「今までのパターンからしてイベントであなたの所在を確認し、帰りに襲撃される可能性が高い。 前回は服装で間違えたので、次回からは服を確認する筈です」 「ああ、それでイベント前は服を替えなくていいのか」 「はい」 「しかし、棋士の中に犯人がいたら?」 「その可能性は考えなくて良いと思います」 「え?」 「いずれにせよ至近距離から襲撃される事はなさそうなので。 あなたは何も考える必要ありません」 「……」 眉を顰めて口を開きかけたが、結局何も言わなかった。 「で。あなたこそ、誰かに恨まれる覚えでもあるんですか?」 「そりゃ色々あるだろう」 「意外ですね」 「何が」 「天然かと思っていましたが、敢えてヒールやってるんですね」 「……」
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