Interview with East Asia 5 「ふぅ……疲れたな」 ホテルの部屋に戻って、夜神は珍しく着衣のままベッドに仰向けに倒れ込んだ。 「お疲れ様でした」 「北京語がネイティブの韓国語通訳って今まで演じた中で一番ハードな役かも」 「大量殺人鬼よりも男娼よりもですか?」 「比べものにならないね」 嫌がらせを言ってみたが、反応する気力もないようだ。 やがて、薄目を開けて顔だけをこちらに向けた。 「そうだ、明日は絶対にスーツ着ろよ」 「嫌です」 「嫌ですじゃないだろ……今日永夏にしか突っ込まれなかったのは奇跡だぞ」 「皆さん大人という事ですね」 懇親会で窮屈な格好をする必要もないので、Tシャツとジーンズで臨んだだけだが。 実際、スーツの夜神と私が並んでいると、十人中九人が夜神が台湾人棋士だと間違えた。 「やはり、あなたが棋士を演じるべきでした」 「それを言っても仕方ないだろ。 とにかく明日は正式なイベントなんだ、悪目立ちするな」 眉間に皺を寄せながら、ネクタイを緩める。 誘っているのか……? 私が近付くと、起き上がろうとしたので肩を押さえ込んでそれを阻止した。 「……なんだよ、急に」 その首に軽く指を当てると、夜神の身体が固くなる。 「“急に催しました”とでも言うのか?」 「私達がセックスするのに、今更理由が必要ですか?」 「……」 我々は既に、お互いの身体が相手に快楽を与えられる事を知っている。 またそれを二人とも認めてもいる。 自分から求めるのは忌々しいが、私には飼い主としてその権利があるだろう。 「お弁当をいつ食べようが私の自由でしょう?」 「ちょっ、待てって!」 ネクタイをしたままワイシャツのボタンを外すと、夜神が私の手首を掴む。 「サカるなよ。スーツが皺になる」 「それが狙いだと言ったら?」 「は?」 「スーツとネクタイで武装したあなたは、正直扇情的です。 滅茶苦茶にさせて下さい」 「気持ち悪い事言うな、ホモくさい」 笑い混じりの振りをしながらも、本気で私の下から抜け出そうとする。 私が掴んだジャケットを脱ぎ捨てようとした所で、俯せにして押さえつけた。 「……チッ」 自分がミスをした事に気付いたのだろう、小さな舌打ちの音がする。 私は思わず笑いながら、夜神の手首にジャケットを巻き付けて裾を縛った。 「やめろ!本当に着られなくなる。 自分で脱ぐって言ってるだろ!」 「もう遅いんじゃないですか?」 前に手を回して、ベルトを外す。 脚を閉じて急所を守るか、脚を開いてパンツを下ろせなくするか。 夜神が決める前に、下着と一緒にパンツをずらして尻を剥き出した。 「……マジで、無理矢理しないでくれ。 本当に困るんだ」 「本当に困るあなたが見てみたいです。 強姦プレイも乙な物ですよ」 それでも、指で中を弄ってやると簡単に勃起して。 ぎゅうぎゅうと締め付けられるのが、夜神自身の意志ではないというのが堪らない。 腕を後ろ手に拘束しているジャケットの裏の、派手目のサテン地が悩ましい皺を作る。 そこだけ剥き出された夜神の筋肉質な白い尻が、切なげにびくびくと動いた。 私自身も、気付かない間に息が上がっている。 「もう、入れますね」 「駄目っ……だ……」 「あなたも限界でしょう?」 「だから、だ!服を、汚してしまう……」 構わずに先を入れると、夜神は一瞬背を反らした後、自分から腰を近づけて来た。 ……本当に、堪らない。 私を喜ばせる演技なのだとしても、自分の意地よりもそれを優先したという事だ。 「あっ!ん、嫌、だ……」 夜神が快感から逃れるように身体を捻り、どこかで「ビッ、」と薄い生地が裂ける音がする。 その音で夜神は開き直ったのか、溜め息を一つ吐くとその後は蕩けるように快感を貪った。 シルクの混じったイタリア産の生地は、大量のタンパク質で汚されてただのゴミになった。
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