Second contact 5 今度は私が思わず噴き出してしまった。 夜神がここまで巫山戯るのは珍しい。 「いいですよ。ベッドの上のミサさんを、上手に再現出来たら」 「リューザキさんってやっぱり変態だよね」 夜神は引き攣った笑顔のまま私の手を取り、小走りでベッドに引きずって行く。 思わず立ち上がって着いて行くと、ベッドに乱暴に投げ出された。 「ちょ、」 文句を言う間もなく、夜神が私の上に跨がって素早く上着を脱ぐ。 「月くん、何を、」 言おうとしたのを、覆い被さって来た夜神の唇に塞がれた。 だが、タイでしたような戦闘的なキスではない。 キラのキスとは違う。 少し唇を舐めては顔を離し、目を合わせてまた口を付ける……性的というよりは、まるで不慣れな少女的なキスだった。 「……ある意味興奮しますね。ミサさんのキスですね?」 本気で、ベッドの上の弥を演じきるつもりなのか。 「好きになってもいいよ」 「お断りします」 夜神はニッと笑って私の胸を枕にするように倒れ込んできた。 そのまま、無言でじっとしている。 「……えーと。何してるんですか?」 「さあ?」 「はい?」 「強いて言えば、再現してる」 弥の行動を? まるで私の心音を確かめるように、ただただ私の胸に耳を付けている。 「この下りは分かったので、次のチャプターに進んで下さい」 「分かった」 夜神は私のシャツを脱がせ、犬のように乳首を、腹を、脇を、舐めた。 普段なら絶対にしない事だ。 やはりこいつの中にはスイッチがあって、優等生の官僚も、大量殺人鬼も、男娼にもミサも、TVのチャンネルのように自由自在に切り替えられるのだろう。 それから首を舐め、何度も口付けてきた。 「長いですね……この下りももういいです」 「前に言ってただろ?」 「何をです?」 「愛のあるセックスの真似事をしてみたいと」 「言いましたっけ?」 「多分これがその、『愛のあるセックス』の真似事だよ」 口を付ければ、時間を掛ければ良いと言うものでもないと思うのだが。 それから夜神は、自ら私の上に乗ってゆっくりと腰を落とした。 演技の嬌声を上げながら、態と不器用に腰を振る。 「ああ、竜崎、好き。好き」 「気持ちいい、幸せ。幸せ過ぎて、涙が出ちゃう……」 夜神は恐らく敢えて棒読みでミサ(が言ったらしい)の台詞を吐く。 私は揺すられながら白けて、そんな要求をした事を激しく後悔する。 だが、夜神が突然ニッと笑って、 「どうだ?竜崎。僕とミサのセックスを追体験する気分は」 低い声で囁いた途端に。 湯を掛けられて目が覚めたかのように。 私の中の何かが外れた。 「え?」 今まで屍体のように為すがままだったが、夜神の足首を掴んで身体を返す。 そのままその身体を押し潰すように貫くと、 「痛い!足が、竜崎!」 夜神は髪を乱して喚いた。 「女性には、優しいんじゃなかったのか!」 「理性が言う事を聞いてくれないのも、男というものですよ、ミサさん」 片脚を肩に掛けて腰を動かし続けると、本気で苦しそうにシーツを鷲掴みにする。 「すみません、私、やっぱりミサさんは好きにはなれません」 「おい!今、そんな事、関係、」 「ああ、でも嫌いでもないんですよ。抱いてくれと言われたらセックス出来るレベルで」 「竜っ、崎!」 「月くんは、どうですか?私の女性の抱き方は」 「下手、くそ……」 「心外ですね」 少しスピードを緩め、ない胸を、胸筋のあたりを撫で回す。 それから何度も何度も「少女のキス」をして、少しづつ舌を深く差し入れていくとやがて夜神の息が上がってきた。 「あなたを、愛しています」 「……!」 「そう誤解して貰えると、質の良いセックスを提供してくれるんですよね?女性は」 「……はは。らしいね」 「誤解して下さい、月くん」 「何だよそのナンセンスな台詞」 言いながらも、悩ましげに眉を顰めて顔を横に向ける。 「もう、このおふざけには、飽きた。 普通に、もうイッてくれ」 そんな事を言う時は。 きっと快感に耐えかねている。 それが分かる程にはおまえの身体の事を知っている。 「私は飽きていませんので。 たっぷりと、時間を掛けて可愛がってあげますよ」 薄目を開けた夜神の、瞳が絶望に潤んでいるのを確認して私はゆっくりと腰を動かし続けた。
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