Second contact 2 『メッセの為に負けてくれた?』 『いえ。彼の実力です』 少し間が開いた後、短い文字列が浮かび上がる。 今度は私が先程のPCの前に座り、夜神は隣のPCの椅子に座って私の画面を見つめていた。 『あんたLか』 『そう呼んで貰って差し支えありません』 『良かった!一緒にいたんだ』 松田達は私が偽Lだと言っていたが、推理力を見せたのでその辺りは気にならないらしい。 『私が一般人と話をする機会は一度きりと思って下さい。 手短に用件を』 『ちょっと待って。文章作っておいたのコピペするから』 それから、予め作って置いたにしては要領の悪い文章が投下される。 韓国のプロ棋士の高永夏というやつがいます。 高永夏は王位と棋聖を持っいて、性格はわるいいですが韓国で人気のプロ棋士です。 十七歳の時、日本の会社が主催した北斗杯という十八歳以下の人が出られる国際棋戦に出て勝ちました。 次の年も出て来て勝ちました。次の年は十九歳になっていたので、高永夏は出て来なくて塔矢もオレも勝ちました。 高永夏の師匠の朴ボムギが先月末に殺されました、ソウルの裏通りで、碁会所の帰りに通り魔に合ったみたいで、見た人はいなくて犯人はつかまっていません。 その一週間前に高永夏のお姉さんのイファさんがひき逃げにあいそうになりましたが、お姉さんは棋士ではありません。 見た人が多かったですが、犯人は捕まっていません、お姉さんはこけて手をねんざして、一日だけ入院したらしい。 先週、高永夏の碁の友人安アリョンがその人の家で殺されました。 この人は三段で、犯人は強盗みたいですが、お金を少しだけ盗んで逃げたそうです。指紋がないそうです。 それで三日前、高永夏が韓国棋院から変える途中殺さ 「……ってこれで終わりですか?」 「字数制限みたいだね。 元々、コミュニケーションは重要視していないサイトを選んでるから……」 どうやら、以前この進藤ヒカルと知り合った事件、塔矢行洋を巡る碁界連続殺人と似たような事が韓国で起こっているらしいが……。 この出来の悪い小学生の作文のような文章からは断片的な情報しか拾えなかった。 「もう、無視していいんじゃないですか?」 「でも気になるじゃないか。外国とは言え、人気棋士が殺されたなんて」 「そんなニュースありましたかね……」 隣のPCで検索する。 韓国のデジタル新聞には、朴範基というプロ棋士が通り魔に殺された記事、安児怜という人物が強盗殺人にあった記事が、それぞれ小さく掲載されていただけだった。 「高永夏が殺されたという情報はありませんが?」 「おかしいな」 私は溜め息を吐いて、夜神に向かって小さく頷く。 夜神はすぐに自分の前のPCでフリーのメールアドレスを取得した。 『進藤さん。せっかくですが貼ってもらった内容が切れています。 続きはこのメールアドレスに送って下さい』 すぐにメールが来る。 『まじで!レスないなーと思ってたんだよ。 どこから切れてるからもっかい貼るね』 「彼、タイトルホルダーですよね?」 「うーん……碁の勉強以外して来なかったのかな」 「成人していてこんなに日本語が不自由な日本人に会ったのは初めてです」 まあ、とにかく待つしか無い。 やがて、先程の三倍ほどの長文が送られてきた。 内容を要約して新聞記事と照らし合わせてみると……。 ・二十日前に高永夏の姉がひき逃げ未遂に会った。 ・十三日前に、師匠が通り魔に会い死亡。 ・七日前に友人が強盗殺人に会い死亡。 ・三日前に本人が棋院から帰る途中で通り魔に会ったが未遂で逃げ切った。 進藤がこの内容を聞いたのは日本語が堪能な韓国棋士、洪秀英からで、彼は高永夏と親しいらしい。 そして、高永夏が狙われているような気がするから助けてくれないか、と。 私は、我が侭な探偵だと言われているが、事件を規模で選んだりはしない。 面白いと思えば小さな失せ物探しでも引き受ける。 その点、今回は連続死で事件性があるとすれば、Lの事件として遜色はないだろう。 だが……「面白い」気がしない。 興味が湧かない。 『この間の事件と似てるだろ?助けてやってくれない?』 ……軽々しく言ってくれるな。 『対価は?』 『?』 『Lは探偵です。 依頼があれば動きますが、それは見返りの金額次第です』 『いくらくらい?』 こちらに値段を付けさせるのか……。 私は夜神に顔を向けた。 「いくら位でしょうね?」
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