神社再詣 4 「で。これからどうするんだ?僕を逮捕するか?」 「出来ませんね。自分で証拠を燃やしてしまいましたし」 「だからまさかそんな事をするとは思わなかったよ」 「あなたがすんなりノートを渡してくれる筈もありませんから。 まだ起きていない犯罪を防ぐのが今出来るベストです。 いつか必ず使うつもりだったんでしょう?」 まあ、そうだ。 というか本来は今日にでもミサに掘らせて、キラの裁きを再開させる つもりだったんだけどね。 「おまえも、すんなりデスノートに書いてくれるとは思わなかったけど」 「何故そんなに私に名前を書かせたがったんです?」 「名前を書けば、気が変わるだろうと思ったから」 「知っての通り違法行為には慣れている私です。 自分が一度くらいデスノートを使ったからと言って、 あなたを見逃したりしませんよ?」 「そういう事じゃない」 あの万能感を。 どんなに正義感に燃えた者にも出来ない事が、自分には可能だという感覚を、 口で説明するのは難しい。 「もしおまえがこの先、正規の手続きを経て捜査本部のノートを 使ったとしても、僕が感じたあの感覚には程遠いと思うよ」 「……」 「誰にも知られず、自分の一存で書ける、という所が重要なんだ。 もうおまえはそのチャンスを失ったけどね」 我ながら子どものような物言いだと思ったが、瞬間、竜崎が微かながら確かに 悔しそうな表情を浮かべた。 気のせいかと思ってしまう程、一瞬だったが。 だが、未経験の者が経験者に反論するのも難しいと考えたのだろう。 すぐに話を変えた。 「私にノートを持たせたがったのは?」 「別に……意味はない」 まだ……チャンスはないではない。 改めて計画を立てなければならないが。 僕が、記憶を失わないままに捜査本部にあるノートの所有権を手放し、 竜崎を所有者にさせて、更に捨てさせる、そんな方法がきっとある筈だ。 「私、夜神くんが嘘を吐いているのは分かるようになりましたが まだどんな種類の嘘かまでは見抜けません」 そう言えば、どうして竜崎は本当に僕の名前を書かなかったのだろう。 犯罪を未然に防ぐために証拠を燃やしてしまうならば、 僕を消すのが一番確実だ。 やはり、証拠よりも全ての辻褄が合う説明の方を優先するのか……。 隣を見たが、竜崎は相変わらず飄々とした表情のまま、 背中を丸めて歩いている。 ふと、顔を上げて目が合った。 「あなたは?これからどうするんですか?」 「僕か。おまえは、どう思う?」 「キラを続けるつもりなら、まず捜査本部のノートを奪うかすり換えるか するでしょうね」 正解だ。 「その為には私が邪魔でしょうから、まず私を消そうと考えるでしょう」 ……半分、正解。 「でも、私を殺人ノートで殺すのはもう不可能になりましたね」 「そうだね」 本当はレムのデスノートがあるが、それは言わない。 この先、レムに竜崎を殺させなければならない展開もあり得るだろうから。 「と、余裕かましてる所見るとまだ他にあるんですか?」 「これ以上質問には答えない」 不意に竜崎が立ち止まった。 灯篭の灯に、妖怪が浮かび上がる。 親指を齧りながら、奇妙な上目遣いで僕を観察している。 「夜神くん」 「何」 「私も夜神くんが好きです」 「……」 「Lを辞めはしませんが、キラと二足の草鞋を履く事も一考します」 「……」 「と、一応言っておきます。私も命が惜しいですから」 「……」 拳を握りしめて、その辺の木の幹を殴りたい衝動に耐える。 こんなに舐められたのは生まれて初めてだ。 「……なら、その証拠を見せろ。 そうすれば命は助けてやる」 おまえなら、捜査本部のノートを偽物とすり替える事も可能だろう? 容易い話だ。 それが出来れば、僕はおまえを信用してやる。 「分かりました」 竜崎は、突然肘で僕の胸を押し、側の大木に押し付けた。 「?!」 不意を打たれてつい足元がふらつく。 倒れないようにバランスを取るやいなや、顔に熱い息が掛かった。 「りゅ……」 ぶつけるように唇が合わせられ、声がぬめった舌に絡め取られる。 僕の舌を包むように、僕の唾液を全て奪おうとするように、 柔らかく器用な舌がひらひらと僕を翻弄する。 太腿には、硬いモノが押し付けられていた。 長いキスの後、やっと顔を離してくれて思わず呆然とその顔を見てしまったが 「……私……こんなに夜神くんが好きです」 いやいや、見せて欲しいのは僕を好きだという証拠じゃないから。 それに勃起しているのを好きな証拠とか言われても困るから。 「竜崎……今ボケるなよ……」 いつもコイツの唇と舌に流される自分に苛々する。 このキスに対抗できるようにならなければ、僕に勝ち目はないような気がしてきた。 ---続く-- ※「デスノートに関する記憶を全て失う」ってこういう事ではないでしょうが 月は、「捜査していた内容とかも全部忘れちゃう」と考えています。 月が実はバカだったという設定ではなく、私が本当にボケていました。ごめん月。 あらすじには関係ないのでそのままにさせて下さい。
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