ジャンク・ノート 5
ジャンク・ノート 5








「あの、月くん。ティッシュを」


竜崎の上から降りて横たわり、脱力していると遠慮がちな声がした。


「ああ……ちょっとそのままで待ってて。タオル取って来る」


竜崎のへこんだ腹には二人分……にしても多すぎる程の精液が溜まっていた。
ゴミ箱に溜まったゴミを処理するのは自分ではないので、出来ればあまり
痕跡は残したくない。

湯で絞ったタオルで、丁寧に腹や手や性器を拭いてやると竜崎は
顔を横に向けて目を逸らした。


「……すみません」

「いやいいよ。その状態じゃ動けないだろうし」

「動いて動けない訳はなさそうですが、腰が抜けたかのようにだるいです」

「気持ちよかった?」

「ええとても。こんな事、初めてでした」

「そうなんだ……女性とも、なし?」

「その辺は微妙でして。あまり説明したくないです」

「そう?なら聞かないけど」


多分見栄を張っているのだろうと思う。
プライベートを明かせないLの生活。
僕を初めての友だちだと言った孤独。

嘘かも知れないが、何となく嘘ではないような気がする。
だとしたら、女性と知り合ったり付き合ったりする機会なんてまず作れないだろう。


「月くん。思ったんですが」

「何?」

「今、私たちがした事はセックスっぽいというより、セックスでは?」

「……そうかもね」

「『かもね』とはまた、月くんらしくない曖昧な表現ですね」

「竜崎。日本人は欧米人より遙かに『かも』『だと思う』を使う頻度が高くてね、
 それは何故かというと……」

「月くんにとってセックスの定義とは、何ですか?」

「……あー確かに、今のはセックスと言えなくもないね!というかセックスだね!」

「では、人前で月くんに抱かれたと言っても誤解は生じませんね?」

「生じないけど言うな!人ってこの場合捜査員の人達だろうが!
 父の前であなたの息子とセックスしたと言うつもりか!」


というかさっきも、「月くんに抱かれた」と言ったらどういう誤解を招くか
分かってて言ったってわけだな?


「確かに……夜神さんがあなたを大切に思っているのは明らかですし
 その息子を寝取ったというのは気まずい。今後の捜査に支障を来すかも」

「寝取……られてないから!日本語を勝手に歪めるな!」

「そう興奮しないで下さい。キラらしくないです」


何て事だ……。

女の子でも、聡明で後腐れのない、寝ても僕を独占しようとしない、
勿論容姿もそれなりの子を注意深く選んで来たのに。

何故この期に及んで、こんな、こんな友人としてもどうかというような男と
事に及んでしまったんだろう。

……溜まってたからな。

それに、寝る前に抱き合った時の感じからして、ちょっと試してみたら
すぐ気が済むタイプみたいだったし。

……まさか、そこまで竜崎の計略じゃないだろうな……?

とにかく、これからも手錠で繋がれ、トイレもベッドも一緒……
そんな相手とこんな事になったのは不味いよな……。


「月くん?」

「……何」

「やっぱり月くんも、これからは何も着けずに寝た方が良いですよね」

「……」

「きっと色々と便利ですし。ね」



何が「ね」だ!
何でこれからもやる気満々なんだ!

薄々感じていたけど、さっきの
「人前で月くんに抱かれたと言っても誤解は生じませんね?」
は、やはり遠回しな脅迫、だよな?

今晩から……どうしよう……。
やる、しかないのか?





--了--





※頭が悪そうな二人ですみません。






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