一盗二婢 12
一盗二婢 12








「ちょっと、」

「ムード作って下さいよ」

「断る!」


それでも、パッケージを破ってその目の前にゴムのリングを突き出すと、
不承不承受け取った。


「ははっ。触ってないのに勃ったんだ?」

「イマジネーションで頑張りました」


あの日のニアのように、枕元に座って足を開くと、
夜神は顔を顰めてゴムを咥え、私の足の間に顔を寄せた。


「……何故、震えているのですか?」


彼は、夜目にも分かる程震えていた。
まるで、あの日のように。


「分からない」

「怖いんですか?」

「怖くない」

「やめますか?」


夜神はぐっと自分の手首を掴み、首を振った。


「やめない」


そして口にゴムを咥え、私の性器を含んだ。
ニアが言う程上手いとも思わなかったが、何度も舐められていると
自然、もっと刺激が欲しくなる。


「月くん」


肩に手を置いて呼びかけると、顔を上げて私の目を見ないまま
後ろを向いて四つ這いになった。


「良いですか?」

「……ああ。早く済ませてくれ」

「五年前と同じセリフです」

「……」


そのまま尻に当て、ゆっくりとねじ込んでいくと、
また足が震えた。
中は熱い。

……何故か、キラ事件当時の事が走馬燈のように思い出された。


初めて出会った、超常現象を操った犯罪。

圧倒的に不利な状況から、キラが日本の関東に居る事を突き止めた瞬間の、
射精してしまいそうな快感。

夜神月の資料を初めて見た時に走った電撃。
(こいつがキラだ……!)

写真で見たらまだ子どものような顔立ちだったのに、
受験会場で見たら私とほぼ同じくらいの背丈だった軽い驚き。

入学式で、Lだと名乗った時の、見事なポーカーフェイス。
(あまりにも動じなさすぎて、逆に不信感が高まったが)

監視カメラの前で、今思えばしらじらしくグラビア雑誌を眺め、
気持ちの悪い独り言を言っていた。

それから夜神を監禁して……突然自分はキラじゃないと言い出して
(自ら記憶を捨てるその度胸)


本当に、こんなに手こずらされた事件は初めてだった。
こんなに全てを鮮明に覚えている事件も。


「ねぇ月くん。何故泣いているのですか?」


横を向いた夜神の、目元が赤らんで湿っていた。
鼻柱の辺りも紅潮していて、既に生理現象では通らない。


「……」

「どうして私だけ、こんなに拒むのですか?」

「……」

「他の男は節操なく受け入れたのに」

「……おまえだけは」


夜神は少し鼻声で、呻くように言葉を絞り出した。


「おまえだけは……嫌なんだ。
 知らない男ならまだ、自分はそういう人形だとでも思えばやり過ごせる」

「……」

「おまえは僕の人生や信念に深く関わりすぎた」

「そうでしょうか?一緒に居たのはたった半年ですよ?」

「半年でも……父よりも母よりも、妹よりも濃い」

「……」

「おまえだけが本当の僕を知っている。
 だから……まるで、自分に抱かれているようだ。
 家族にレイプされるより辛い」


そう言って夜神は、小さく鼻を啜った。


「そうですか。私には家族自体がありませんから、分かりませんが」


そう言って大きく腰を動かすと、夜神が「ひっ」と小さな喘ぎ声を上げた。
どうやら良い所に当たったようだ。


「堪能して下さい。自分とのセックス」


そう言って腰の動きを早めると、背筋にそってまたぶつぶつと鳥肌が立った、
ぞわりと身体全体を震わせるのを感じながら、自分の快感を追う。


「ちょっと、止まって、くれ!だ……め……」


夜神は赤くなったりがくがくと震えたり、忙しく反応を変えながらも
やがて射精した。
自己嫌悪に項垂れて、脱力している夜神を眺めながら
私もその中に出した。











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