一盗二婢 13 「まったく。あなたがもっと早く報告してくれていたら、 こんな面倒は起きなかったんです」 「あのアイバーとか言う詐欺師が、あんたの振りをして通って来てる事か? それともニアが彼の部屋に行っていた事か?」 「両方です」 なにやら書類を書きながら聞いていたロジャーは、 顔を顰めてペンを置いた。 「あのな。私は探偵業に関しては素人だ。あんたも素性を隠していた。 ライトを連れてきたあの男が、Lだと思わせようとしたら分からんよ」 ……それは正論だが。 「ニアに関しては、正直知らなかった。この件は謝る」 「気づかなかったのですか?」 「私の生活サイクルを完全に把握されていたのと、 彼に関しては暗黙の不可侵条約のような物があって、 監視も観察も一切していなかった」 まあ……ある意味問題児なのだろうな。 何処でもそれなりにやっていけるメロよりも頭脳は優秀だが 社会性に欠け、怒らせると手が付けられないのだろう。 「了解です。まあ、夜神は連れて行くのでもう問題は起きないと思いますが」 「そう願いたいね」 ロジャーはそこで口を切り、眼鏡を外した。 少し躊躇うように口を引き結んだ後、 「……ライトは、良い子だよ」 「……」 唐突に何を言うのかと、思わず眉を寄せてしまう。 「食事を運んだ時、偶に少し話す程度だったが」 「そうですか」 「ここに居た、そして現在も居る変わり者の子ども達よりも、 彼の方が遙かに優れているように私は思った」 「まあ、それは好みの問題ですね」 彼は、少なくとも表面上は常識的に振る舞える人間が好きなのだろう。 例えその正体が常識外れの大量殺人犯であったとしても。 それから、眼鏡を拭いてまた掛け直すまで無言だった。 「あなたも彼の魅力の虜になりましたか?」 「バカを言うな」 ロジャーは心底腹を立てたように吐き捨てたが、 「彼に『元気で』と伝えてくれ」 「はい」 苦虫を噛み潰したような顔のまま、書類の山に戻る。 拗ねた老人というのも可愛いものだと思った。 「……時々ここに『里帰り』させますよ」 「……」 いらん、と言うかと思ったが彼は無言で、またしっしっ、と手を振って 私を追い払った。 「では、行きましょうか、月くん」 手ぶらで良いと言ったのだが、夜神は「買って貰った服だから」と 律儀にトランクに詰めて両手に持っていた。 「……持つ」 玄関を出た所で、メロが現れて夜神の鞄を一つ奪う。 「いいのに」 「見送る」 「……ありがとう」 メロが前を向いたまま親指で背後を指差すので振り返ると、 ハウスの二階の窓に、白い影が見えた。 ニアが、無表情で見下ろしている。 夜神が軽く手を振ると、ニアもゆっくりと手を上げ、ゆっくりと 左右にスライドさせた。 「今回はヘリじゃないんですね?」 今度は何なんだ。 前方から聞こえた声に、やや足を速めて門を出ると、 アイバーが高級車のドアに凭れて腕を組んでいた。 「ハイヤーを呼んだつもりなんですが」 「ハイヤーですよ?今日就職しました。よろしく」 「はぁ……」 胸のハイヤー会社の名札を示す。 偽物かも知れないが、彼なら本当に上手く潜り込んでいても不思議はない。 「あなたの物に、もう手を出したりはしませんよ」 「そうお願いします」 「だからライトの……いやお二人の?新居が分かっても大丈夫です」 私は思わず額に手を当てた。 「……次の監禁場所は、裏を掻いてこの近所にしたのですが、 無駄だったようですね?」 言うとメロが、ニヤリと笑う。 「なら、またニアを連れて遊びに行くよ」 「仲良しなんですね」 「そんなんじゃねぇ!自分だけ有利に運ぶのが嫌なだけだ」 「何に対して有利なんです?」 「!」 メロがあからさまにしまった、という顔をするので頭が痛くなった。 「まあ、そういう事なら近々ハウスに戻って来ましょうか。 ……月くん」 「僕はどこまでもLに着いて行くよ」 さすが、打てば響くとはこの事だ。 べたべたしようと打ち合わせた訳ではないが、夜神はにっこりと笑って 私に寄り添った。 「新婚生活を楽しんだら、すぐに帰ってきて下さいね? さすがに『世界の切り札』の元に押しかけるのは気が引けるので」 「そういう事ならもう月くんに会えないのでは? これからは離さないつもりなので」 「嬉しい事を言ってくれるね」 微笑みながら言う夜神と、私が後部座席に乗り込む。 アイバーが運転席に、トランクに夜神の荷物を入れ終わったメロが 助手席に座った。 広いリアシートでも、夜神は私に寄り添っていた。 その耳の口を寄せ、 「……まあ、彼らの目がある間は我々はラブラブという事で」 そう囁きかけると夜神は、「ラブラブ……」と一言呟いて咳き込んだ。 その音に振り向いたメロに機嫌良く微笑み掛けながら 今度は私の顔に唇を寄せて囁く。 「……次の場所、バスルームはどこ?」 「市内のフラットなんですが、玄関から入ってすぐ左手だったと思います」 「そうか」 「どうしました?」 「多分即吐く」 よく見ればその顔色は悪い。 吐き気がする程嫌なのに甘ったるい笑顔を浮かべ、 私に甘える演技をする夜神に思わず本気で噴き出してしまった。 --了-- ※32000踏んで下さいましたいくさんに捧げます。 リクエスト内容は、 題してモテキならぬモテ月。 お相手は、とりあえずLは基本だから外せないとして(ははは…)、あとは不問です。 要は月が複数からちょっかい出されていればオッケー。 モテる理由も、月個人への思い入れに限定せず、キラへの好奇心から、 一盗二碑的なLへの対抗意識、ワイミーズ同志のライバル心、 なんでもアリで結構です。 設定は、弥の寿命が半減しているのを知って、月では弥を幸せにできないと考えた レムが、弥と月は助ける条件でLと取引した結果、Lは死なず、 月はキラの記憶はあるものの、生殺与奪はLの思うがまま、といった感じで。 行き掛り上キラを生かしておくことにしたLが、トラブルメイカー体質の 月が起すゴタゴタに憮然とする姿がみれたら本望です♪ …ちなみに一人か二人は治外法権にいる人物がいたほうが良さそうですが、 その役はワタリかロジャーあたりで。 ここでリクエスト頂いたのですが、不甲斐ない事に月のキャラをイメージ出来ず もうちょっと細かい指定をお願いしました。 敢えてキスケさんの書かれたストーリーの中の月になぞらえて言わせていただくと、 私、横文字と都々逸の月が頭ひとつ抜けて好きですw アダルトなほうが総受けもできて面白そうなので、これは数年後でお願いします。 で、数年後ということであれば、月のお初はすでにどさくさ紛れにLかアイバーあたりが強奪済みのほうがそれっぽいかしら、と。 上でも書きましたが、書いていただけるのであれば、総受け激しく希望(笑) そんな感じで、原作風(?)負けず嫌いながら、総受け月になりました。 コンセプトはリク文で頂いた、「一盗二婢三妾四妓五妻」を全て 月くんに引き受けて頂こう、と。 あまりにもリク内容に頼りすぎているんですが一応、 「月は五年間ずっとLが忘れられずにいた」風はリク主さんのご嗜好ではないと推測して そう見えないように気をつけました。 ……でもそんな感じに見えたらもうそんな感じで。 あと、今回初めてニア月をがっつり書いて新しい扉が開けました。 いくさん、大変お待たせして申し訳ありませんでした。 こんなんで良かったでしょうか? ご申告、ナイスリクありがとうございました!
|