一盗二婢 9 いきなり掛けられた声に、メロがびくりと震えて咄嗟に夜神から離れる。 その股間ではまだ勃起している物がちらりと見えた。 『……』 『メロ。あなたが泥棒猫のような真似をするとは思いませんでした』 『……どっちがだ。 元はと言えばおまえがLに詰まらない対抗意識を持って Kにちょっかい掛けたんだろ』 『おや。妙な事を言いますね。 KはLの物ではありませんし、私はKを愛しています』 『嘘吐け!おまえが誰かを愛する筈がない!』 『だとしても、あなたにそれを証明する術はありません』 裸で、逸物を勃起させたままベッドの上に立って見下ろすメロと、 パジャマのまま冷静に見上げるニア。 間抜けな図だ……見た目だけでなく、その言い争いの中身も。 あまりにも馬鹿馬鹿しい。 しばらく二人は黙ったまま睨み合っていたが、やがて 夜神がもぞりと上半身を起こした。 『……二人とも、出て行け』 心底不快げに低い声を出す。 一般的な感覚を持った人間なら聞いただけで逃げ出すだろうが ワイミーズの二人は違った。 『嫌です。やる気で来たので、このままでは帰れません。 慣らさなくて良さそうなので丁度良いですよね?』 『てめえ!まだ途中だ!邪魔者は出て行って貰おうか』 『Kの身体、良かったでしょう? ここまで開発したのは私です。敬意を払って下さい』 『このっ……』 あわや二人が殴り合いになりそうな張り詰めた空気になった所で、 ニアがすっと動いた。 『……まあ、メロが生で突っ込んだ所に入れる気にもなりませんし。 今日は口だけで良いですよ。 あ、メロは続きをどうぞ』 言いながら、平然とした顔で枕元に向かい、マットレスによじ登る。 片手でパジャマをずらし、片手で夜神の前髪を掴むと夜神は狂ったように暴れたが すぐに大人しくなった。 メロが、その腰をしっかりと掴んだからだ。 『メロ……』 夜神は一瞬呆然としたが、メロが憤怒の表情で再度突き入れると、 今度は堪えられないように喘ぐ。 ニアは満足げに笑い、その口に自分の物を押しつけた。 悪趣味なAVのようだ。 夜神は二人の少年に犯され、快楽と苦しみに顔を歪めている。 ニアはそんな夜神と目の前のメロの顔を交互に眺め、 舌なめずりをして笑っている。 メロは苦行僧のように、ずっと眉を寄せて強く目を閉じていた。 まずメロが達し、それを見たニアも夜神の髪を掴んだまま自ら腰を動かして 射精したようだった。 メロは乱暴にシーツで股間を拭ってズボンを持ってすぐに出て行く。 ニアの方はメロが出て行った後は夜神に対する興味を失ったように のろのろとパジャマを身に着け、これも無言で退出した。 夜神は裸で横たわったままだったが、ニアの姿が見えなくなると同時に 億劫そうにパジャマを拾い上げ、バスルームに消えていった。 全く……馬鹿馬鹿しい。 松田が来ても、この様を見れば幻滅して帰って行くのではないだろうか。 あるいは、一度寝れば満足してもう執着しないような気もする。 敢えて夜神を隠すよりも、その方が効率的だろう。 松田が来たら、夜神に会うよりも先に私が話さなければ。 その時にはニアもメロも居た方が良いだろう。 そうだ、アイバーも呼ぼう。 私はワタリに、急ぎメールを送った。 ワタリの調べで、松田は昨夜ナリタから発った事が分かった。 アイバーも、丁度フランスにいたとの事で翌日昼には ワイミーズハウスに到着する。 「おや!L。お久しぶりですね」 「はい。あなたもよく夜神を可愛がってくれたようで」 「酷い事はしてないですよ? というかまるで、ライトの身内みたいな物言いですね」 「まあ一応、彼の身柄を預かっている事になっているので」 上手く話を逸らされ、心の中で舌打ちをした。 アイバーに推理以外で対抗するのは、正直難しい。 「本当に、ライトの嫌がる事はなに一つしていないんですよ。 優しく彼を愛しただけで」 「身体ごと?」 「はい」 アイバーは悪びれもせずにこりと微笑んだ。 「あんな細く長い首で、儚げな風情に見せてその実キラなんですから 堪りません」 「儚げかどうかは分かりませんが」 「その彼に、『僕にはあなただけだ』なんて言われて、 ぐらっと来ない人間がいたらお目に掛かりたいですよ」 「そんな陳腐なセリフに騙されて、詐欺師らしくありませんね」 「勿論私は彼に依存しないし、されません。 いつでも切れる距離感を保ってお互いに楽しんでいるつもりですよ」 余裕綽々の笑みで片目を瞑る。 そのせいで、夜神は私の跡継ぎである少年達まで受け入れるように なってしまったのだ、と詰りたかったが。 その夜神を最初に抱いたのが私だと、彼に知られている可能性を考えると 結局それ以上何も言えなかった。
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