一盗二婢 6 それから度々、ワイミーズハウスに夜神の様子を窺う連絡をしたが、 大人しくしているらしい。 そして意外な事に、アイバーもあれ以来時折顔を見せているとの事だった。 何とかした方が良いのかと思いつつ、日々忙殺され ロジャーに夜神を任せっぱなしにして五年が過ぎた。 とは言え、夜神本人とは事務的なメールは頻繁にしている。 正直、時折事件に関して彼の意見を聞く事が、楽しみになってもいた。 夜神に依存してはならない、と自分に言い聞かせる程度には。 弥と夜神のメール交換は、弥がハリウッドに進出してからは 少しづつ減っていた。 死神界からこちらを見ていると言っていたレムも、満足だろう。 ウエディからワタリを通じて久しぶりに連絡があったのは、そんな頃だった。 『トータが、ワイミーズハウスに行くわよ。 もしライトがまだ居るのなら、移動させた方が良いかもね』 「トータって、松田ですか?」 『そう。仕事で日本に行ったら、偶然出会って捕まってしまって』 「金で夜神と私を売ったのですね……」 『彼のご実家、有名なメーカーなのよ。 それにあなたの信頼を失いたくないからこうして連絡しているの。 まだ間に合うでしょう?』 「はぁ……まあ。でも面倒です」 『依頼してくれたら、トータより先にライトを盗んで上げるわよ?』 「いえ、結構です。ご連絡感謝します」 そんな訳で、私は久しぶりに、ワイミーズハウスに足を向けた。 ウインチェスターに到着したのは夜中だった。 ロジャーを呼ぶかどうか迷ったが、会っても挨拶くらいしかする事はない。 結局黙って勝手知ったる門を入り、明かりの消えた談話室を抜け、 同じく暗く、月明かりだけが差し込む図書室に入った。 それから奥の本棚から数冊本を抜き、奥のレバーを引く。 重い本棚がゆっくりとスライドし、その向こうに、私が長い間過ごした 秘密のモニタルームが現れた。 ここにはシェルター並の防護壁と、警備室と全く同じ映像が見られる 設備がある。 まさかまだ松田は到着していないだろうが……。 何気なくモニタのスイッチを入れ、夜神が滞在している部屋を選択した。 映像が整う前に、盗聴マイクで拾った妙に鮮明な音声が流れる。 『……ケイ』 途端、聞こえるはずのない声が聞こえて、私は既視感に囚われる。 いや、既視感ではない……以前本当に同じ事が。 『ゴムが残り少ないです。ロジャーに言っておいて下さい』 『おまえね……頼む僕の身にもなってみろよ』 『いいじゃないですか。どうせ妾のような生活なんです』 その時、古いモニタがやっと起動して部屋が映し出された。 カメラの正面のベッドの上に……二つの、白い身体。 生まれたままの姿で、ベッドの上に座り込んでいる夜神。 そして、パジャマを着たまま枕に尻を乗せて大きく足を開いているのは。 ……随分大きくなった。 だがまだまだ子どもだ。 ニア。 確かワイミーズの中でも飛び抜けて成績が良く、社会性に欠くと聞く。 だが今はとてもそうとは思えない、 少年らしい残忍な笑顔を浮かべながら、パジャマのパンツをずらして 性器を露出させていた。 『あれ。して下さいよ』 『やめろよ。それこそ商売女みたいで嫌だ』 『……Lに、知られたくないでしょう?』 『だからあれはLじゃない』 『なら間男ですか』 分からぬ会話をして、ニアは夜神に、恐らくコンドームのパッケージを投げる。 夜神は嫌そうだったが、しかし封を切って中身を取り出し、口に咥えた。 『そうそう。どうせ逆らえないんですから、いい加減素直に 最初から言う事を聞いたらどうですか?』 『……』 『今はあの人がLでも、その内メロか私がLになるんです。 長生きしたいのなら、せいぜい大人しく飼われた方が身の為ですよ』 『……』 夜神はコンドームを咥えたまま、ニアの股間に顔を埋めた。 どうやら口で……装着しているらしい。 小柄な少年に、若いとは言え手足のすっきりと伸びた夜神が伏して 奉仕している様は、まるで猛獣使いと虎のようだった。 『ああ……やはり上手いですね……っあ、』 ニアは仰向いて陶酔したように目を閉じ、手探りでもう一つの コンドームのパッケージを開ける。 『そろそろ後ろを、慣らして下さい』 そう言いながら自らコンドームを咥えた。 すると夜神が右手をニアの前にすっと差し出し、 受胎告知でもするかのように人差し指と中指を揃えて立てる。 ニアはその手を掴んで、今自分がされたように二本の指に口でゴムを嵌めてから、 舌をひらめかせて丹念に舐めた。 ある程度濡れた所で、夜神がその指を自らの後ろに回し、 ぐちゅ、ぐちゅ、と音を立てる。 恐らく自らの尻の穴に、自分の指を入れて開いているのだろう。 二人のその慣れた一連の仕草からは、随分回数を重ねている事が推測されて。 松田から夜神を守るべくここまで来たのが何だか馬鹿馬鹿しくなった。 『入れますよ』 やがてニアが低く言い、夜神が四つ這いになる。 中型犬の牡にサカられた、大型犬の牝。 『……っん、』 ぐちゃぐちゃと粘ついた音と、小さな呻き声。 それでもあの時のように、声一つ立てる事も出来ず、呼吸すら 忘れていたのに比べれば、上達したな、などと場違いな感慨を覚えた。
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