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何度か無理矢理勃起させられ、射精させられると僕は気を失うように眠ってしまった。


目が覚めた瞬間、床に仰向けに寝かされている事に気付いて血の気が引く。
しまった、ヤられてしまったかと焦ったが、今度は手首が椅子の足に縛りつけられていた。
Lはすぐ横で、服も乱さずニヤニヤしている。

そうだな、こいつは僕を精神的に痛める事を目的としているようだった。
僕が眠っている間に意味も無く酷い事はしないだろう。

尿意や便意は何故かなかった。
多分、本当に垂れ流させるだろうから有り難いと言えば有り難いが。

だが腹は減る。
意趣返しに何も食べずに衰弱死してやりたいくらいだが、キラとしてそれは出来ない。
などと考えていると、


「やあ。おはよう」

「……」

「残念ながら、おまえの尻に入りそうな形をした物はもうないんだ」

「……あんたの、股の間にぶら下がってる物以外、な」


Lが少し仰け反る。
鬱陶しい前髪の間から、見開かれた目が少しだけ覗いた。


「入れて欲しいのか?」


思わず身体を震わせて笑ってしまうと、Lも僕の戯れ言に気付いて笑い出す。


「本当に、惚れ惚れする程気が強いな」

「なら諦めろよ……僕は暴力には屈しない」

「キラの精神力が生半可ではない事は最初から分かってる」

「精神力とかじゃなくて……僕は、キラじゃないから」


何度も言った事に、Lは一切取り合わず傍にあった電動工具を持ち上げた。
最初に僕の奥歯を砕いた電動ドリルではない。
もっと繊細な……。


「……歯医者さんごっこの続きは、もっと後じゃないのか」

「怖いか?」

「怖くないとは言わないが、一度耐えられた痛みには、僕は屈しないぞ」


Lは聞こえていないかのように、僕の足を跨いで見下ろす。
下から見上げると、前髪に隠れて暗い所で切れ長の目が光っていた。


「キラ。おまえの身体に傷を付けられないと言ったから、油断しているのか?」

「……実際、僕を逮捕出来たとしても、傷は拷問された証拠になる。
 それで自白を覆されたら困るだろう?」


Lは、ひやりとするような目で僕を睨め回した。


「だとしても、無理矢理付けられたように見えない傷なら、問題ないな?」

「……?」

「自分で付けたように見える傷なら」


なん……だって?


「これ。何に見える?」


この小型の、工具。
今まで見た事がある中で、一番近い物と言えば。


「……エアブラシ」

「よくそんな物知ってたな。
 当たらずとも遠からずだ」


傷……エアブラシ……まさか。
僕が息を呑むと、Lは僕の膝上辺りに腰を下ろして体重を掛けた。


「そう。これはタトゥマシンだ。
 おまえに彫ってやるよ」

「!」

「もう図柄も決まっている」


ぺらりと、床から拾い上げた紙には、大きく、見覚えのある飾り文字の反転した図が。


「そのきれいな腹に消えない文字を入れてやる。“KIRA”とね」

「やめろ!」


冗談じゃない!
この僕が、そんな反社会的な物、
と腰を捻って逃れようとしても、全く動けない。

……タトゥでは、拷問で入れられたと言っても通りにくいだろう。
それに、信じて貰えたとしても入れられてしまったらもうお終いだ。
レーザー除去するにも、人に見られる事になる……。

「KIRA」の名を。


「やめてくれ……」

「“KIRA”が嫌なら、首の後ろに“L”はどうだ?
 Lがおまえを所有した印として」

「もっと嫌だ!」

「ふふっ、良い声だな。
 だがおまえが自白しなければ、どちらも入れるし以降も私が飽きるまで増え続ける事になる」

「……」

「ピアスもつけてやろうか?卑猥な場所に」


冗談だろう?
そうに決まっている。
髪を切るのとは訳が違うんだ、取り返しがつかないんだぞ……!

だが。

ついさっき、「まさか」と思った事を実行されているじゃないか。
こいつは、やると言ったらやる奴だ。

Lは僕の臍横から脇腹に掛けて紙を斜めに置き、サージカルテープで簡単に貼り付ける。
それから濡らした布巾で紙を濡らすと、KIRAの文字が浮かび上がった。
テープを剥がし、紙をめくると肌に図柄が転写されている。


「何だよ、これ……」


キラの、刻印。
自分がキラであるのは確かだが、これではまるで、江戸時代に前科者に入れた刺青のようだ。

こんな大きな刻印を見た者は、どう思うだろう?
無理矢理入れられたのだと否定し続けなければならない。
いや、それ以前に生理的に。

絶対に、嫌だ……!

僕の心を読んだように、Lが機械のスイッチを入れる。
電動ドリルの高いモーター音ではなく、ブーン、という低い振動音が聞こえるのが妙にリアルに恐怖心を煽った。
思わず目を強く閉じる。

針が振動する音が、どんどん近付いて来て……。


「やめっ、」


やめてくれ!


「止めろ!分かった!」

「何が?」

「僕が、」


チッ、と、針先が皮膚に触れたような気がしたのは気のせいだろうか?



「僕が……キラだ!だから、」



言った瞬間。
モーター音がぴたりと止んで、水を打ったように辺りが静まりかえった。


L……?


恐る恐る目を開けると、Lは僕に跨がったまま、マシンガンを構えるようにタトゥマシンを上に向けている。
そして。


「……っく……っくっくっく」


耐えるような笑い声は、やがて部屋中に響き渡る哄笑に変わった。






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