if 6 何度か無理矢理勃起させられ、射精させられると僕は気を失うように眠ってしまった。 目が覚めた瞬間、床に仰向けに寝かされている事に気付いて血の気が引く。 しまった、ヤられてしまったかと焦ったが、今度は手首が椅子の足に縛りつけられていた。 Lはすぐ横で、服も乱さずニヤニヤしている。 そうだな、こいつは僕を精神的に痛める事を目的としているようだった。 僕が眠っている間に意味も無く酷い事はしないだろう。 尿意や便意は何故かなかった。 多分、本当に垂れ流させるだろうから有り難いと言えば有り難いが。 だが腹は減る。 意趣返しに何も食べずに衰弱死してやりたいくらいだが、キラとしてそれは出来ない。 などと考えていると、 「やあ。おはよう」 「……」 「残念ながら、おまえの尻に入りそうな形をした物はもうないんだ」 「……あんたの、股の間にぶら下がってる物以外、な」 Lが少し仰け反る。 鬱陶しい前髪の間から、見開かれた目が少しだけ覗いた。 「入れて欲しいのか?」 思わず身体を震わせて笑ってしまうと、Lも僕の戯れ言に気付いて笑い出す。 「本当に、惚れ惚れする程気が強いな」 「なら諦めろよ……僕は暴力には屈しない」 「キラの精神力が生半可ではない事は最初から分かってる」 「精神力とかじゃなくて……僕は、キラじゃないから」 何度も言った事に、Lは一切取り合わず傍にあった電動工具を持ち上げた。 最初に僕の奥歯を砕いた電動ドリルではない。 もっと繊細な……。 「……歯医者さんごっこの続きは、もっと後じゃないのか」 「怖いか?」 「怖くないとは言わないが、一度耐えられた痛みには、僕は屈しないぞ」 Lは聞こえていないかのように、僕の足を跨いで見下ろす。 下から見上げると、前髪に隠れて暗い所で切れ長の目が光っていた。 「キラ。おまえの身体に傷を付けられないと言ったから、油断しているのか?」 「……実際、僕を逮捕出来たとしても、傷は拷問された証拠になる。 それで自白を覆されたら困るだろう?」 Lは、ひやりとするような目で僕を睨め回した。 「だとしても、無理矢理付けられたように見えない傷なら、問題ないな?」 「……?」 「自分で付けたように見える傷なら」 なん……だって? 「これ。何に見える?」 この小型の、工具。 今まで見た事がある中で、一番近い物と言えば。 「……エアブラシ」 「よくそんな物知ってたな。 当たらずとも遠からずだ」 傷……エアブラシ……まさか。 僕が息を呑むと、Lは僕の膝上辺りに腰を下ろして体重を掛けた。 「そう。これはタトゥマシンだ。 おまえに彫ってやるよ」 「!」 「もう図柄も決まっている」 ぺらりと、床から拾い上げた紙には、大きく、見覚えのある飾り文字の反転した図が。 「そのきれいな腹に消えない文字を入れてやる。“KIRA”とね」 「やめろ!」 冗談じゃない! この僕が、そんな反社会的な物、 と腰を捻って逃れようとしても、全く動けない。 ……タトゥでは、拷問で入れられたと言っても通りにくいだろう。 それに、信じて貰えたとしても入れられてしまったらもうお終いだ。 レーザー除去するにも、人に見られる事になる……。 「KIRA」の名を。 「やめてくれ……」 「“KIRA”が嫌なら、首の後ろに“L”はどうだ? Lがおまえを所有した印として」 「もっと嫌だ!」 「ふふっ、良い声だな。 だがおまえが自白しなければ、どちらも入れるし以降も私が飽きるまで増え続ける事になる」 「……」 「ピアスもつけてやろうか?卑猥な場所に」 冗談だろう? そうに決まっている。 髪を切るのとは訳が違うんだ、取り返しがつかないんだぞ……! だが。 ついさっき、「まさか」と思った事を実行されているじゃないか。 こいつは、やると言ったらやる奴だ。 Lは僕の臍横から脇腹に掛けて紙を斜めに置き、サージカルテープで簡単に貼り付ける。 それから濡らした布巾で紙を濡らすと、KIRAの文字が浮かび上がった。 テープを剥がし、紙をめくると肌に図柄が転写されている。 「何だよ、これ……」 キラの、刻印。 自分がキラであるのは確かだが、これではまるで、江戸時代に前科者に入れた刺青のようだ。 こんな大きな刻印を見た者は、どう思うだろう? 無理矢理入れられたのだと否定し続けなければならない。 いや、それ以前に生理的に。 絶対に、嫌だ……! 僕の心を読んだように、Lが機械のスイッチを入れる。 電動ドリルの高いモーター音ではなく、ブーン、という低い振動音が聞こえるのが妙にリアルに恐怖心を煽った。 思わず目を強く閉じる。 針が振動する音が、どんどん近付いて来て……。 「やめっ、」 やめてくれ! 「止めろ!分かった!」 「何が?」 「僕が、」 チッ、と、針先が皮膚に触れたような気がしたのは気のせいだろうか? 「僕が……キラだ!だから、」 言った瞬間。 モーター音がぴたりと止んで、水を打ったように辺りが静まりかえった。 L……? 恐る恐る目を開けると、Lは僕に跨がったまま、マシンガンを構えるようにタトゥマシンを上に向けている。 そして。 「……っく……っくっくっく」 耐えるような笑い声は、やがて部屋中に響き渡る哄笑に変わった。
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