男前Lお題---薬 2 「中学生時代と言いましたね?」 「ああ」 「いわゆる『中二病』と言う奴でしょうか」 「どうかな」 「夜神くんの思春期は本気度が高そうですから、少し怖いですね」 「おまえね……」 「もっとも、シャーペンの芯や紙切れを扉に取り付けたり、真面目な本の中に エロ本を紛らわせたり、そういうセンス、嫌いじゃないですけど」 「……」 あれはデスノートがあったから! おまえに監視されていると知っていたから! ……とか、つい言うかと思ったか。 バカらしい。 「普通に考えれば、青い方が安全な薬で、警戒色である赤が危ない薬、ですが」 「なるほど」 「中二を考えれば、赤い方は血行が良くなる媚薬の類、青は顔色が青くなる、 毒薬かも知れません」 Lはいちいち僕の表情を観察しながら、ヒントが読み取れないかと適当な事を 並べていく。 それが分かったので、僕は微笑を貼り付けたまま、筋一つ動かさなかった。 「僕はヒントを出さないよ」 「そうですか。ならまず、勝ち負けの決め方から決めましょう」 「え?」 そこから? 普通見当がついてからそれに添って決めるものじゃないか? 「私は、私の推理に沿って片方を選びます。 それを飲みますので、夜神くんももう一つを飲んでください」 「……」 思わず絶句すると、Lがニヤリと笑う。 「顔色が変わりましたね? という事は、あなたには飲めない物が含まれているんですか?」 「……いや。僕は、何も言わない」 「そうですか。でも勝負のつけ方を決めろと言ったのは夜神くんですから 従っていただきます」 畜生。僕とした事が、つい顔に出してしまった……。 飲めと言われたら、困るのは確かだ。 「推理を続けます。 同じパッケージですが、違うのは色だけじゃないですよね?」 「ああ。同じ物じゃないね」 「ここまで同じだと、ジョークグッズという可能性もありますね……」 「例えば?」 「こういう時用、です」 「どういう時だよ」 「何某かのゲームをする時……もしかしたら、箱の中に入れておいて 手触りだけで引く籤のようなものか」 じろっと僕の顔を見ながら、抓んだパッケージを ゆっくりと自分の鼻の前に持って来る。 「匂いは……微かな羊毛の匂い、あと、ゴム……?」 「ウールのコートのポケットに入ってたから。ゴムは、消しゴムの滓でも一緒に入ってたかな」 「薬自体の香りは全くないという事ですね」 良い鼻をしている。 時折菓子やデスノートに異常に顔を近づけていたのは伊達じゃないのか。 「……」 Lは両手にそれぞれ赤と青の錠剤のパッケージを抓みあげ、 長い間しかつめらしい顔をして見比べていた。 「どう?」 痺れを切らして尋ねても、答えない。 だが一分程沈黙が続いた後、突然、 「まっっったく分かりません」 そう言うと、詰まらなそうにぽん、と机の上に放り出した。 「じゃあおまえの負けだな」 「いいえ。情報が少なすぎます。アンフェア過ぎます」 「推理は得意なんだろ?」 「……分かりました。でもこのままでは手詰まりですので 夜神くん、嘘でも良いのでこれが何か説明して下さい」 「嘘で良いのか?意味なくない?」 「いいえ。嘘も情報ですよ。それに私、匂いで判るんです。 相手が本当の事を言っているのかそれとも……嘘を吐いているのか」 Lはあの、全てを見通そうとするような、射抜こうとするような真っ黒い目で じっと僕の目を見つめた。 なるほど。 僕がキラだという事は分かっている、証拠がないだけだ、 そう言いたいんだな? そして、僕からどんな小さな情報でも良いから引き出せそうとしている……。 良いだろう。 僕はおまえの、その鼻っ柱を折ってやるよ。
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