男前Lお題---薬 1 「竜崎」 「何でしょうか?」 「今晩は、僕の部屋で寝たいんだけど」 捜査がひと段落して、部屋に引き上げる途中。 駄目で元々と言ってみたが、Lはあっさりと頷いた。 「分かりました」 流石のLも、もう僕と寝るのは嫌になったのか。 それとも僕がキラである可能性は低いと見たか。 「着替えを取りたいので、一旦私の部屋に寄って下さい」 「おまえも来るのかよ……」 「当たり前です。命が掛かっていると言ったでしょう?」 背を丸めて両手をポケットに突っ込み、上目遣いで僕を見るL。 昨夜僕を演じている時は、一瞬素顔が垣間見えた気がしたが それすら演技だったのかと思える程、何の感情も見受けられない顔だった。 Lの部屋に行ってから階下に用意された部屋に行くと、 実家から送られて来たダンボールが置いてあった。 フェイクの住所を経由して、冬服が送られて来たらしい。 初めてこのビルに来たのは夏。 冷房が強い事も考えて一応合い服は持って来ていたが 冬服を着るまで居る事になるとは。 「服。整理してもいいか?」 「私に聞かなくてもご自由に」 「おまえが監視したがるから聞いたんだろ」 「ですから、私は勝手に見ていますから、自由に振舞って下さい」 自由にって、トイレの個室にまで入って来るくせに。 手錠生活で慣らされて、そんな異常事態にも動じない自分も問題だ。 「分かったよ」 勝手にベッドに座ったLの、視線を感じながらばりばりとガムテープを剥ぐ。 ダンボールの一番上に乗っていたのはもう着なくなった古いコートだった。 母さん……適当チョイスだな。 それとも僕が自分で買ったコートは気に食わないのか。 サイズ的に着られるものかどうかと広げてみると、 ポケットでカサ、と微かな音がした。 服をクローゼットに仕舞って振り向くと、Lはベッドの上で既に Tシャツを脱いでいた。 「何してんの」 「どうせ今晩もヤるんですよね?」 「ああ、そうだね。おまえがこの部屋で寝るならね」 「当然です。眠るかどうかは分かりませんが、あなたの傍には居ます」 色気もクソもない、お化け屋敷に行けばそのまま働けそうな 顔色の悪い男に言われても気持ちが萎えるだけだが。 「今晩もゲームをしますか?服を取替えっこしましょうか? 私を縛りますか?それともあなたを縛ってあげましょうか?」 「いや……今日は、ちょっと趣向を変えよう」 「?」 ベッドサイドのテーブルに、かさかさと二つの小さな物を置く。 「何ですかこれ」 「見ての通り、タブレットだよ」 「ですね。ずっと監視していたのに、いつの間に……」 赤と青の未開封の錠剤に、触れずにテーブルに顔をくっつけそうになりながら まじまじと見つめる。 どちらにも、文字一字、マーク一つ印刷されていない。 「届いていた中学生時代のコートに、偶々入ってたんだ」 「へえ……何の薬ですか?」 「それは言えないが、風邪薬や酔い止めの類じゃないよ」 Lは、ない眉を寄せて一気に警戒モードに入る。 「……これを、今日のゲームに使おうというんですね?」 「ああ」 「伺いましょう。但し、無条件で飲めというのはナシです」 「分かってるよ。 おまえには、これが何かも含めて推理して、どちらかを選んで欲しい。 いつかおまえが僕の推理力を試したけど、今度は逆だよ」 「……で?どうやって勝ち負けを決めるんですか?」 「そうだな……それもおまえに決めて貰うか」 最初はデータは一切与えない。 僕の推理力を試した時と同じだろ? Lは、実は私推理は得意分野なんですよ、と面白くもない事を呟くと 錠剤を摘み上げた。
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